【場面緘黙症(選択性緘黙)】のセルフチェックをしましょう【DSM‐5、かんもくネット】
今回は、①お子さんが場面緘黙症かもしれないと思っておられる保護者の方、②自分が話せないことがあって場面緘黙症かもしれないと思っておられる当事者の方に、場面緘黙症の診断基準を見ていただき、その後の支援に繋がるよう、症状や診断基準を知っていただきたく思います。
(※今回は、あくまで自己診断になりますので、チェックリストを見て、より詳しく知りたいとお思いになられた場合、ぜひ適切な医療機関で診察を受けてみてください。)
場面緘黙症(選択性緘黙)の診断基準【DSM-5】
この診断基準は、アメリカ精神医学会が作成したDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders , Fifth Edeition)に記載されている診断基準です。
日本でも主にDSM-5が診断基準として使用されていて、日本語訳版も書籍になって流通しています。このDSM-5では、場面緘黙症を選択性緘黙という名称で扱っています。
この名称により、緘黙症の方が選択的に話す話さないを決めているのではないか、と誤解する方もいるようですが、そうではなく、当事者は「声を出すことができない」状態にあることを理解してください。
DSM‐5では、この場面緘黙症(選択性緘黙)は不安症/不安障害群に分類されています。つまり、不安障害のように、不安や恐怖を予期してしまうことで、話したり動いたりすることが制限されてしまう障害であることがわかります。
場面緘黙症(選択性緘黙)の方の多くは、「話すことができない」の他に『緘動』といって、不安や恐怖により身体がガチッと緊張して動かせなくなる症状を併有しています。
さて、以下にDSM‐5の診断基準を示します。ぜひ、お子さんや当事者の方は、目を通して、当てはまるかどうか確認してみてください。
診断基準(DSM‐5)
A.ほかの状況で話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況(学校など)において、話すことが一貫してできない。
B.その障害が、学業上、職業上の成績、または対人コミュニケーション妨げている。
C.その障害の持続期間は、少なくとも1ヶ月(学校の最初の1ヶ月だけに限定されない)である。
D.話すことができないことは、その社会的状況で要求されている話し言葉の知識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない。
E.その障害は、コミュニケーション症(小児期発症流暢症など)ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。
アメリカ精神医学会(2014,p193)
診断基準の解釈
あくまで、僕個人の解釈です。参考までにお受けとりください。
診断基準A
診断基準のAは、例をあげると「自宅では家族と話すことができるが、学校での友達や先生との言葉のやりとりの場面や発表の場面などで、話すことができない」というものです。
例外的に「幼い時からの親友とは話すことができる。でも、近くに他の人物がいると話すことができなくなる」ということもあります。ですが、基本的には社会的状況において一貫して話せない状況にあります。この「一貫して」というのは、程度のことを指しています。
診断基準B
場面緘黙症(選択性緘黙)の症状により、わからない問題があっても、質問することができなかったり、発表でも話すことができないため、学業上の成績が低くなってしまいます。また、仕事でも影響があります。頭では、どうしようと悩んでも、助けを求めることができません。
対人コミュニケーションにおいても妨げられるので、友達が作れない、恋人が作れない、といった悩みを抱える当事者は多いです。
診断基準C
持続期間は1か月に渡ります。最初の1か月に限らないというのは、「入学したばかりで緊張して話せない」といったものとは別物ですよ、という意味です。
診断基準D
話し言葉の知識がないというのは、例えば、聴覚の障害がある方にあるような、音を聞いたことがないために発声できなかったり、外国からきた方が日本語がわからなくて話すことができなかったり、そういったものとは別物ですよ、という意味です。
診断基準E
例にある「小児期発症流暢症」とは、いわゆる吃音症のことです。言葉が「あ、あ、ありがとう」と連続したり、「………りがとう」と語り始めが無音になったり、「あーりがとう」と言葉が伸びたりする症状があります。しかし、これとは別物です。
自閉スペクトラム症は、発達障害で知的な遅れや一定の物事への執着があることがあり、発語がなかったり、会話ができなかったりすることがあります。しかし、場面緘黙症は、これとは別物です。
また、統合失調症は被害妄想的に誰かに悪口を言われているなどの幻聴があったりして、一人の世界に入って、周りの会話の声に意識が向かなくなり、無言の時間が続いたりもします。この意味で、話せないのですが、これとは別物です。
場面緘黙質問票(SMQ-R)【かんもくネット】
このSMQ-Rは、かんもくネットという場面緘黙症の支援コミュニティが作成した質問紙です。
SMQ‐Rは、主に保護者が回答す形の質問票になっています。子どもの2週間の行動を思い返しながら、回答していくことで、子どもが場面緘黙症(選択性緘黙)に当てはまるかどうかを簡易にチェックすることができます。
ただし、「幼稚園や学校」「家庭や家族」「社会的状況(学校の外)」と分かれていて、回答しづらいことがあります。また、コロナの影響で、同居していない祖父母やいとこと話す機会が減っているため、十分なチェックにならないことがあります。あくまで簡易なチェックです。気になったら、適切な機関に支援を求めるようにしてください。
SMQ‐R を実際に試してみてください。
こちらは、質問票として無料でPDFが配布されていますので、ぜひ試してみてください。以下にリンクを貼っておきます。先程の注意点を考慮した上で、回答してみてください。
最後に
いかがでしたか?COZYでは、診断はできませんが、場面緘黙症のカウンセリングは行っています。認知行動療法というアプローチで、段階的に不安に立ち向かう準備をしたり、少しずつ不安に慣れていけるように支援します。
継続的に行うことで、「今なら話せる」という自信をつけていただき、きっかけを上手に掴めるようになっていきます。不安があると思いますので、メールやSNSからの予約、筆談、YES/NOの質問、などもできます。また、お越しの際は、主訴を手紙にまとめて渡してくださってもいいと思います。しっかり読ませていただきます。
さて、今回はここまでです。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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