小学生の場面緘黙症【周囲の理解が得られづらい…】

2020年12月26日

こんにちは。中津です。

いつも不登校支援を考える中で、場面緘黙症は不登校にも繋がり、子どもの「勉強を頑張りたい」「友達がほしい」という思いが成就されにくい現状を何とかしたいと記事を書き続けています。

僕は、大学院で学校臨床心理学を学び、特別支援学校と工業高校で教員をしていました。今は、不登校支援力を入れるべく、フリースクールを開業しました。

この立場から、場面緘黙症の支援について発信しています。カウンセリングもしています。日本の実証的な研究が少ないため、絶対に効果があるとは言い切れませんが、現行で効果があるとされる療法で支援していきます。

子どもの場面緘黙症

場面緘黙症は、2歳〜5歳くらいでの発症が多いと言われています。また、日本での大規模調査が行われ、小学生では0.15%の発症率があることがわかっています。

場面緘黙症は、ある一定の場面において話したいけど話せないという状態に至る不安障害の一つです。場面緘黙症は、近年では名称が変わり、選択性緘黙とも呼ばれるようになりました。しかしながら、選択性緘黙という名称は、あたかも話す場面を個人が選んでいるかのように誤解されるために、今でも多くの方が場面緘黙症という名称を使用しています。

場面緘黙症の約半数は、緘動という症状が出ます。緘動とは、言葉が出せないのと同様に、不安や恐怖の感情を抱くことで、身体がガチッと硬直してしまうことです。あまり見たことがないと想像しにくいかと思いますが、本当に「ガチッと」という表現が適しているくらいの硬直で、その場から動けなくなったり、頷いたり首を振ったりすることも難しくなります。

この場合、緘動の状態にある本人は、色々と考えを巡らせているようで、不安や恐怖、焦りを感じているようです。支援としては、大人が不安を与えないような的確な指示をしてあげることが有効です。子どもは、抽象的な指示に対しては、不安を感じてしまいます。場面緘黙症の子のように不安を感じやすい子にとっては、かなりの負担になってしまい、緘動が出てしまうようです。的確な指示を与えて、子ども意思決定を代行することで、子どもは不安から解放されて、緘動を解除できるようです。

幼児期の場面緘黙症

場面緘黙症は、幼児期に発症することが多いです。幼い子ども本人は、なぜ話せないのか、自分でも理解できない状況です。また、保護者も幼稚園に入園したばかりで、話せなくなってしまって、場面緘黙症という言葉も知らず、原因もわからずで、途方に暮れてしまいます。

周りの子どもたちも、「話さない不思議な子」という認識をしてしまい、故意ではなくても、少し接しづらさを感じてしまいます。発症率の低さからしても、幼稚園の先生も場面緘黙という言葉すら知らないことがほとんどです。日本に専門家と言われる人は、ほとんどいません。それほどの認知度です。

現在では「話せない 子ども」など検索すれば、場面緘黙症という言葉に辿り着くことができます。SNSでは当事者や保護者の声も聞くことができますし、場面緘黙のコミュニティもあるくらいです。

幼児期では、保護者の支援が本当に大切です。支援機関がない中で、ほとんどが、保護者がコミュニティなどで勉強しながら、子どもを支援するという形になっています。

小学生の場面緘黙症

小学生の発達段階では、自他を比較することが増えてきます。また、心身ともに力がついてくる時期ですので、周りとは異なる人に対して、排他的な行動を取るようになります。これがイジメです。

よくイジメは無くならないと言いますが、生物学的に考えても、発達上、きっかけがあれば、誰でも加害者になり得るということが指摘されているためです。小学生の段階では、教員(大人)が道徳教育を施すことで、排他的な行動は良くないことと学ぶことが重要です。しかしながら、イジメは大人が見ていないところで、行われるため、どうしても後手に回ってしまうのです。

また、場面緘黙症の当事者の方が、小さい時に「あ、って言ってみて」「話してみて」と言われたことが辛かったという話をされます。これは、嫌がらせではない場合もあります。周りの子どもは、本当に悪意がなく、声を聞いてみたい。頑張れば話せるのではないかと期待を持って話しかけるのです。

小学生の場面緘黙症の最も大きな問題はイジメです。可能な限り、手厚い支援を施し、小学生生活を充実させてあげる必要があります。また、場面緘黙症の子どもたちは、話せないために友達を作ることに苦戦します。周りの友達は、放課後にクラブをしたり、遊ぶ約束をして遊んだりしている中で、置いていかれるような感覚に陥ります。心の中では、友達がほしいと思いながらも、上手くいかない現状があり、とても苦しい思いをします。

もともと近所同士で仲が良いなど、その友達の前だけなら話せるという場面緘黙の子もいます。このように一人でも友達がいると、心の負担は減ります。しかし、そう上手くいかないのが、場面緘黙の厄介なところで、多くの当事者は孤立してしまいます。支援者は大人なので、子ども同士の関わりが少ないままになってしまいます。

稀に、周りの優しい子どもが、気を使って支援してくれることがあります。教員としては、非常に嬉しく思う光景です。しかし、当事者の子にとっては、「ありがとう」が言えないことで落ち込んでしまうということも考えなくてはいけません。

治療と支援について

治療という言葉は適さないかもしれませんが、改善するためには、日本では行動療法が主流だと思っています。カウンセラーの得意不得意もあるのですが、僕は、段階的暴露療法やSST(Social Skill Training)が有効だと思っています。

ただし、これらの療法では当事者の理解力が影響するので、年齢的に考えると不向きであるという意見もありそうです。小学生用に、より噛み砕いて説明し、時間をかけていく必要があります。

このように治療には時間がかかります。カウンセリングを受けて、すぐに話せるようになったケースは、今のところ聞いたことがありませんので、少なからず、年単位で時間がかかると思っていただいていいと思います。つまり、治療をするにしても、日常の負担を減らすような支援が必須になるとも言えるのです。

子どもも保護者も孤立してしまうと、共倒れになってしまいます。とにかく、SNSなどで、コミュニティを探してください。また、知識の有無に関わらず、教員の協力を得てください。知識は保護者が身につけて、教員に教えるくらいのつもりで、情報収集に力を入れてください。お辛いと思いますが、必ず子どものためになります。

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