自己評価の低い人へ【セルフ認知療法のススメ】
自己評価は、自分のことを褒めたり、あるいは蔑んだりする評価のことです。生活的な特徴や成功体験、失敗体験などが関連しており、ずっとネガティブな評価を繰り返す人、逆にポジティブな評価を繰り返す人もいます。
自己評価と自尊感情
臨床心理学では『自尊感情』という概念があります。この自尊感情によって自分の尊厳を感情的に表現することができます。
例えば、Aさんは部活動で友達と衝突し、怪我をさせてしまいました。Aさんは部活動に集中できていなかったことが原因だったと反省しました。
このとき、Aさんの自尊感情は低下しました。「あー、自分はダメなヤツだ。」と自分に対して低い自己評価をしたわけです。
自己評価とパーソナリティ
心理学では性格や行動の傾向など自己の特徴のことを『パーソナリティ』と表現することがあります。
自己評価は、このパーソナリティの一側面として考えることもできます。つまり、自己評価は人によって偏りがあったりもするということです。
例えば、Bさんは良くないトラブルがあったときに、全て自分の責任だと捉えてしまい、自己評価は低くなりがちです。
心理学では、原因の所在をどこに置くかということを『原因帰属』といいます。この原因帰属を自分の特性に当てる傾向のある人は、自己評価が低いとされています。
自己評価と精神的健康
自己評価が低い状態が長く続くと、精神的ストレスが過多となり、精神的健康を崩してしまいます。そのため、上述の原因帰属や認知療法を知り、自己評価を下げ過ぎない対策を講じるとよいです。
原因帰属でいえば、今後の成長を考慮するのであれば、自分の努力不足やミスを責めるのは悪いことではありません。しかし、状況的に努力や行動で予防できない事実もあります。そういうときは、運や状況のせいにしても大丈夫です。自分の心を守るという意味では大切な心構えです。
認知療法を簡単に
臨床心理学の領域では、考え方のクセを修正することで精神的健康の保持増進を図る『認知療法』という療法があります。
認知療法においては、白黒思考(0か100かの偏った思考)やネガティブ思考などがあります。これらの思考のクセを『自動思考』といい、この自動思考を修正していきます。
認知療法は、主に完璧主義の緩和や不安傾向の強さ、うつ病の治療などに用いられますが、今回の『自己評価の低さ』においても、有効な手段です。
自己評価の低さと認知療法
低い自己評価における自動思考を考えてみましょう。以下は僕が思いついたものです。他にもあると思う人は、ご自分で書き並べてみてください。
- ①状況を顧みず自分の責任だと考える。
- ②出来ていることがあるにもかかわらず、何もできていないと最低の評価をする。
- ③失敗の経験ばかりが思い出されて、成功の経験がないがしろになっている。
- ④失敗から学ぶという前向きな評価を避けている。
- ⑤マイペースを崩されているなど、失敗の原因を見つけにくい。
とりあえず5つをあげてみました。当てはまるものもあるのではないでしょうか。
さて、この自動思考をまとめた上で、次は自分の失敗話を取り上げて、①〜⑤の当てはまる番号を振り分けてみましょう。
僕の最近の話ですが、職場の上司をコワイと感じてしまい、話しかけづらく、人間関係が上手くいかないダメな自分と自己評価することがありました。自分を励ます意味でもセルフ認知療法を実践してみます。
まず、上司の語り口は基本的に柔らかいので自分の思い過ごしかもしれないですし、コワイと感じたとき上司は忙しくてイライラしていただけかもしれません。
これは①や③が当てはまりそうです。自分が怒らせてしまっているのかもと思うこともありますが、事実はそうじゃない可能性があります。また、緩やかに会話できることもあるので、ずっと関係が良くないこともないです。
このように考えると、心のモヤモヤが全て晴れるわけではないですが、客観的に自分を捉えることができ、少し気持ちが楽になります。また、解決の糸口も見えてきそうです。
認知療法の実践と効果
認知療法は、日記をつけて、カウンセラーとともに日記を見ながら、自動思考を修正していくという手続きを踏みます。今回は、セルフ認知療法ということですので、ぜひ日記をつけて、自分で考えが偏ってしまっていないか振り返ってみてください。
認知療法は、短期的な効果もありますが、自動思考が修正されたあとの長期的な効果もあります。短期的な効果が感じられなかった人は、自動思考がより凝り固まっている可能性がありますので、時間をかけて自動思考を修正されると効果を実感できると思います。
最後に
自己評価が低いと、悩むことが多くなってしまって、行動の足どりが重くなったりもします。漠然としたモヤモヤを取り除く意味でも認知療法を試してみてください。
僕は、大学院時代に大野先生の『こころが晴れるノート(↓リンク)』を読み、勉強しました。実際に試してみると、自分にも自動思考があるんだと実感できます。僕の場合は、完璧主義傾向や不安傾向が強かったので、特に刺さりました。