特別支援学校における自閉症スペクトラム児とのコミュニケーション

今回は、特別支援教育に携わる学校教員の方に向けて、自閉症スペクトラム児とのコミュニケーションの取り方についてお話したいと思います。

特別支援教育

特別支援教育という領域は、大きく分けるのであれば、特別支援学校と特別支援教室による教育に分けられます。

特別支援学校は都道府県によって設置されており、特別支援教育のセンター的な役割も担うとされる学校です。以前は特殊学校と呼称されていましたが、現在では精神障害、知的障害、身体障害のある者が特別な支援を受けながら教育を受けられる機関として特別支援学校と呼ばれています。

特別支援学校の様相は教育基本法や学校教育法、学校教育法施行規則などの法律に基づいて設置されており、そのカリキュラムにおいても教育指導要領で定められています。

しかしながら、特別支援学校の様相は異なる部分があり、知的障害の子どものみを受け入れている学校もあれば、知的障害と精神障害の子どもを受け入れている学校もあります。これは各学校の受け入れ体制や規模などが関係しています。例えば、重度心身障害者が多動な子どもたちと同じ空間にいることは危険ゆえ避けたいです。

受け入れ体制としては、聾や盲においては手話ができたり、言語聴覚療法などが行うことができる教員を配置したり、重度心身障害においては看護師を配置したりもします。精神障害においては臨床心理士や公認心理師が配置されます。とはいえ、教員免許(特別支援)は特別支援における自立活動や教科指導を行うことができるという資格ですので、その障害の専門家とまでは言いづらい現状があります。

一方で、特別支援教室は、一般の小学校や中学校に設置された特別な支援を必要とする子どもが在籍する学級のことです。あくまで一般の小学校と中学校ですので、特別支援学級の教員は小中学校の各教科の教員免許しか持っていない場合もあります。

自閉症スペクトラム

今回は、特別支援教育の中でも多いとされる自閉症スペクトラムについてお話します。自閉症スペクトラムの特性上、他者とのコミュニケーションを取りづらいことがあり、その対応に困ってしまう教員もいます。

例えば、自閉症スペクトラム児は知的能力障害を併有していることも多く、言語理解や言語表出が難しい場合もあります。また、発語がない子もいます。教員が指示を出しても、言語理解ができなかったりして、指示が通らないこともあります。

また、指示が理解できていたとしても、その時の気分で動いてくれなかったり、拒否されてしまうこともあります。

言語理解のポイント

なぜ子どもたちが指示どおりに動いてくれないのか。それは指示が難しいからです。

「清潔に過ごすために教室を掃除しよう」という説明をしたとしても、清潔?過ごす?教室?掃除?どうやって?と分からないことばかりだと嫌になるのは当然のことです。

知的な遅れがある子の言語表出に注目してみましょう。まず五十音が使えるかどうか、次に文章が使えるかどうかです。五十音が使えない場合は、音で理解しているかもしれません。例えば、教員の「ごはん」という音を覚えて、ごはん=給食の時間だなと理解しているわけです。

文章については、流動性のある文章を理解できるかどうかという意味です。おそらく自閉症スペクトラム児や知的障害の子は、発語がないか一語文、二語文しか使えない場合が多いです。その場合、教員がいかに丁寧に説明しても、コミュニケーションが成立しません。

しかしながら、知的な遅れがあっても何度も繰り返すことで、次の活動を覚えて、自ら動けるようになる子もいます。

個人的な考えにはなってしまいますが、発語がないもしくは一語文、二語文しか使えない子に対しては、行動を音で覚えてもらうことを意識してみるといいかもしれません。つまり「手を洗いましょう」ではなく、「て ごしごし」を動作とともに関連づけて学習させると言うことです。

保護者の方からすると、ちゃんとコミュニケーションを取ってほしいという方も多いかと思います。しかし、学習は段階的に確実に進めていくことも大切です。まずは「て」「ごしごし」から「手」と「洗う」を学習させ、「さら」「ごしごし」から「皿」と「洗う(広義に)」というように関連づけていきます。

これを組み重ねていけば、「手をあげる」や「身体を洗う」など、どんどん言語と行動を増やしていくことができます。勿論、「ごしごし=あらう」と音で学習させることもできるはずです。

一方で、「○○したら、△△してください」という指示はどうでしょうか。「する」や「したら」という言葉は確かな名詞や動詞ではないために理解しづらいものです。また、何をすれば成功なのかということも学習していなければ、連続性のある指示は通りません。

つまり、指示は1つずつ行うとよいと言えます。「手 洗う」「終わり」「ハンカチ 手 拭く」のように言ってあげると、順序よく行動することができます。勿論、子どもの言語発達に応じて、助詞を学習させて、文章をつくる練習をしたりすることもできます。かなり時間はかかると思いますが、我々も最初は音で言語を覚えたはずです。音と字と状況を関連させて覚えたはずです。

知的な遅れがある子どもに教えるときは、音と字、音と状況、字と状況などより細分化して丁寧に学習させるとよいでしょう。

コミュニケーションのポイント

言語理解ができないと、何を言っているかわからないけど、執拗に話しかけてくる、鬱陶しいな!とイライラさせてしまいます。ですから、言語理解から時間をかけていく必要があります。

一方で、言語理解はできるけど、他者に興味を示さなかったり、ある事柄にこだわりが大きく、コミュニケーションが取りづらい子に対しては、まずは信頼関係を築きましょう。

個人的に思うのは、何もしなくていいから一緒の空間にいることが大切だと思っています。一緒に遊ぼうとして絡んでいくと、その子の思い通りにならないことが発生してイライラさせてしまうことがあります。

ですから、最初は何となく近くに座って余計なことをせず、見守っていましょう。子どもが次第に慣れていって、家で保護者に対して取る行動をみせるようになったら、信頼関係が築けてきた証拠です。

例えば、耳たぶを触るのが好き、脚の上に座ってくるなど保護者から情報を得ておき、それと同じように接触してきた場合は、おおよそ心をひらいています。

一方で、あくまで教員と児童生徒の関係、年齢相応の扱い方も意識しておきたいものです。例えば、中学生の男の子が女性教員の耳たぶを触るのは、通常は良くないことです。信頼関係の構築が確認できたら、その行動を徐々に消去していきましょう。

ちなみに、こうした行動の消去は学習と同様に時間がかかるものです。保護者はつい可愛くて、これらの行動を許してしまいますが、今後は社会に出ることも考えて、学校だけでなく、ご家庭でも消去を実践していくことが大切です。

さて、信頼関係を築くことができたら、次は子どもの知っている言葉を使ってコミュニケーションを取りましょう。知っている言葉から、まだ知らない言葉を関連づけていけばよいので、機会を見つけては話しかけてみましょう。

信頼関係ができれば、少なくとも以前よりはコミュニケーションが取りやすくなっています。個人的には、ハイタッチは良い手段だと思います。何か達成できたらハイタッチして、一緒に喜びます。良い行動をしたときのみハイタッチをして、ハイタッチ=褒められていると学習させます。

ご褒美にシールをあげたりする方法もありますが、これは報酬による外的動機づけであり、非常に強い動機づけです。しかし、シールがもらえないと行動しないという方向にも学習してしまうことがあります。シールをもらって嬉しい場合は効果がありますが、報酬への期待は徐々に上がっていきます。シールなんて嬉しくないと思い始めたら、行動をしなくなります。

じゃあ、新しい報酬を増やせばいいと思う方もいると思いますが、これを繰り返していくと、いざ社会に出たときには、仕事をして時間が経ってから給料を貰うわけですので、すぐに報酬がもらえないことと、給料という抽象的な報酬では、行動が起こせないようになることもあります。

余談ですが、知的障害のある子が大人になって働く先は、工場で簡単な梱包をしたり、部品の仕分けをしたり、といった単調で簡単な仕事が多いです。できれば、自分のための給料の使い方なども教えてあげてほしいと思います。ほとんどは保護者が管理して、使えっていいお金を渡してあげるなど、お金の使い方とともに教えてあげてください。

話を戻しますが、ハイタッチは意外と分かりやすく喜んでくれる子どもも多いように思います。勿論、子どもによって合う合わないはあると思いますが。

授業の説明

体育の授業をイメージします。簡単なレクリエーションを例にします。ポイントは以下の通りです。

  • 注目させる。
  • 『体育の授業を始めます。』
  • 目当て、主題や概要を話す。(言語説明)
  • ルールの説明をする。(簡潔かつゆっくり)
  • 使用道具を紹介する。
  • 見本をみせる。(モデリング)
  • レクリエーションを実施する。
  • 良かった点を紹介する。(フィードバック)

言語発達に応じて作戦会議などの話し合いの機会を作ることもできます。また、授業の終わりには片付けを一緒にします。教員の手伝いをして、褒めてもらうという日頃の積み重ねが自尊感情を維持することに繋がることもあります。

説明の際には、簡潔かつゆっくりを目指します。中学部の子が対象だったとしても、小1の子が理解できるくらいの言葉づかいとゆっくりさをイメージしています。最悪はモデリングをして、授業に参加できれば十分です。しかし、説明の意味をモデリングで確認して、理解した上で実践できれば、これ以上のことはありません。これも日々の積み重ねだと思います。

同時に3つ説明したなら、そのうちの1つを理解できていたら褒めます。授業の進行上、一度に複数の説明が必要になるので、避けて通れません。

最後に

今回は、少し中途半端に終わってしまいますが、少しでも教員の皆さまのヒントになれば幸いです。僕よりもっと上手くできる方もいることでしょうし、問い合わせのメールフォームからご意見やご要望をいただけると、それも記事にさせていただきます。