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自閉症スペクトラムにおけるSST(Social Skill Training)

2021年9月21日

SST(Social Skills Training)

SST(Social Skills Training)とは、社会的コミュニケーションを高めるための訓練のことで、自閉症スペクトラムやADHDなどにおける社会性の困難を緩和するために用いられます。

また、発達障害の有無に関わらず、ソーシャルスキルは学習を通して獲得できるとされており、日本だけでなく海外でも研究が進められています。また、抑うつを低減、自尊感情の向上、自己肯定感の向上、レジリエンスの向上などにも一定の効果が認められています。

そもそもソーシャルスキルとは、対人コミュニケーションに必要な言語的行動と非言語的行動のことです。非言語的行動とは、表情や身振り手振りのようなものです。もっと深く捉えると、無言で隣にいるだけでもコミュニケーションとして成立することもあります。

自閉症スペクトラムにおけるSSTの効果

自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder)の特徴として、「持続する相互的な社会的コミュニケーションの障害、限定された反復的な行動や興味または活動の様式」があります。

これまでの実証的な研究においては、①SST実施群と統制群の比較検討、②SST実施前と実施後の効果検討、による研究が主となっています。

これらをどのように比較するのかについては、本人や保護者に質問紙を実施、その得点を比較したり、観察によってコミュニケーションスキルが身についたかどうかを検討する場合があります。

効果としては、子どもの年齢や障害の重さによって個人差はあるものの、数週間〜数ヵ月の時間で、有意な効果が見られると報告されています。

標的スキル

SSTを実施する際、「標的スキル」を定めることが一般的です。「標的スキル」とは、高めたいターゲットとなるスキルのことです。例えば、「自己紹介の仕方」や「自分の気持ちの伝え方」などです。

SSTでは、一度に多くのソーシャルスキルを身に着けさせるのではなく、標的スキルを設け、1つずつ学習していきます。

■これは、研究として実施しやすいからという理由もありますが、本質としては、子どもに分かりやすく、そして、支援者も支援方針が焦点化しやすいというメリットがあるからだと思います。

標的スキルの一覧

参考までに研究で実際に設定された標的スキルを以下に挙げておきます。(半田,2020)

  • 自己紹介の仕方
  • 挨拶の仕方
  • 声の大きさ
  • 話の聴き方
  • アイコンタクト
  • 優しい声掛け
  • 意見や考えの伝え方
  • 気持ちのコントロール
  • ルールの順守
  • 仲直りの仕方
  • 対人距離
  • 上手な頼み方
  • 上手な断り方

SSTの手順

SSTでは、コーチング法が用いられます。SSTにおけるコーチング法とは、①言語的教示、②モデリング、③行動リハーサル、④フィードバック、の手順で行われます。

①言語的教示は、困難を感じている場面や感じるであろう場面を想定し、どういったソーシャルスキルがあれば、この困難に対応できるかを言葉で説明することです。

②モデリングは、手本や見本を示し、それを真似することで、学習するソーシャルスキルに対するイメージを理解することです。

③行動リハーサルは、反復して練習することです。少し場面設定を変えてみたり、条件をつけて実施するなど、場面を限定させすぎないことも考慮します。

④フィードバックは、学習したあとにソーシャルスキルが身についたかどうか、どのように活かせそうかなどを再び説明したり、対象である子どもに確認したりします。

■子どもが対象であることが多いため、その場合は動機づけとして、ゲーム形式で実施されることが多いです。SSTの中での交流で実践的に仲良くなったり、子ども自身で工夫する点が増えてくることも大切です。研究であれば、なるべくソーシャルスキルを限定しますが、通常に実施する場合は、こうした派生的な効果に期待するのも良いと思います。

SSTの課題

SSTの課題として挙げられるのは、①効果の持続性が検討されていないこと、②般化の評価に課題があること、との指摘があります。「般化」とは、ソーシャルスキルの学習が、日常生活の中で似ている場面に遭遇したときにも活かされることです。

研究のデザインを考える上で、日常生活を捉えるのは難しいです。今後は、こうした部分においても研究が進んでいくことでしょう。

また、ソーシャルスキルを考える上で重要なことがあります。それは、たとえ色んなソーシャルスキルが使えたとしても、感情のコントロールができなければ、そのソーシャルスキルを上手く使うことができないのではないかということです。

例えば、話し相手に提案を否定されるなど、こちらの自尊感情が低下することを言われたとします。そのときに、自分の中で「落ち着いて」話をすることができるかが大切になってきます。

社会的なトラブルの多くは、このように自尊感情が傷つくことが多いです。そこで、学んだはずのソーシャルスキルが活かせるかどうかは、感情をコントロールできるかどうかにかかってくるのです。

自動ソーシャルスキルトレーナー

田中ら(2017)は、自閉症スペクトラムの支援のためのツールとしてソーシャルスキルトレーニングを自動で行うことができるソフトウェアの開発をしています。

この研究では、ソフトウェアでの学習の前後で有意な効果が認められており、今後はiPadなどで使用できるアプリケーションが開発されるそうです。

参考引用文献

  • 半田健(2020)日本における自閉スペクトラム症児を対象としたソーシャルスキルトレーニングに関する研究動向,LD研究,28 (4) ,494-503.
  • 田中宏季 根來秀樹 岩坂英巳 中村哲(2017)人工知能学会全国大会論文集, 30 (0) ,116

教育心理学

Posted by Cozy