高校入学後の学習性無力感に注意しよう。【学業不振による不登校】
中学時代に勉強を頑張って、何とか自分の目標の高校に入学できた人は、高校入学後の学習性無力感に気をつけてください。
学習性無力感
学習性無力感は、臨床心理学者のセリグマン(Seligman,M)が提唱した概念です。
学習性無力感とは、自分の目的が達成されなかった体験を繰り返すことで、「努力しても上手くいかない」と学習してしまい、強い無力感を抱くことです。
そして、次第に努力行動は減っていき、完全に辞めてしまうこともあります。学習性無力感は、その理想が高いほどに心理的負担が大きくなります。
学習性無力感による悪影響
学習性無力感による不登校は、主に学業不振に繋がっていると考えられます。中学時代に勉強を頑張って、何とか自分の目標の高校に入学した人は、高校に入学したあとに気を抜いてしまったり、塾を辞めてしまったりすることがありますが、実はこれが危険です。
ギリギリで入学できたということは、高校入学後の学年での順位は、下から数えてすぐの位置に居るかもしれないということです。特に大学進学を目的にしている進学校では、3年生は受験勉強に時間を割くために、1年生と2年生は凄いスピードで教科書を進めていきます。そのスピードは中学校までの勉強とは比較にならないほどです。
折角、目標の高校に入学できても、高校1年生で勉強についていけなくなって、定期テストは赤点ばかりという状態になってしまうと、学習性無力感に陥ってしまいます。
例えば、「自分には勉強のセンスがない」「地頭が悪いからダメなんだ」「他の人は簡単に成し遂げているように見える」など、ネガティブな思考に至ってしまい、努力することを諦めてしまいます。
このように学習性無力感の状態に陥ってしまうと、勉強へのモチベーションがなくなり、高校に通う意義を失ってしまいます。そして、ここままでは良い大学に進学できないと、人生そのものを諦めようとする人もいます。
こうなると授業中に他のことをしたり、不登校になったり、逃避の意味で部活動など別のことに注力したりするようになります。最も心配なのは、不登校が長期化する引きこもり、非行、うつ症状による自己破壊行動です。
学習性無力感への支援
学習性無力感を緩和させるためには、自分を深く理解して、自分に適した目標を再構築したり、自分のペースで努力を継続できる方向に動機づけていくような心理的支援を行います。
学習性無力感の支援は、重度化する前、できるだけ早く施すことを推奨します。とはいえ、本人は自分の中で悶々と悩み、気づいた頃には完全にモチベーションを失っているということもあります。
そうした意味では、保護者は気づきにくいです。また、そうした子は周りの評価を気にする傾向や自尊心が高いということも考えられます。その場合、自身が誰かに相談するということは、あまり期待できません。
とにかく、近くにいる友達、兄弟姉妹、教員などが普段の様子との違いに気づき、何とか聞き出す方向で持っていってあげることが重要です。
学習性無力感に陥りやすい子
- 高校にギリギリ入学できた子
- 入学後の試験で下位もしくは苦戦した子
- 目標への意識が高い子
- 諦めや妥協ができない子
少なくともこれら(↑)が当てはまる子はリスクが高いと思っています。また、学業を例にあげていますが、スポーツや音楽、美術といったものでも同じことが言えます。
例えば、バレーボールで全国大会に出場して、いずれはプロになると考え、強豪校に入学したとして、他の子が実力を伸ばしていくなか、自分は試合にも出られない状態が続いた場合に、部活動を辞めてしまったり、塞ぎ込んでバレーを拒否するようになることがあります。(実際に僕が教員をしていたとき、こういう子たちを見てきました。)
高校生は、心の発達段階においても自分のアイデンティティに悩む時期であるため、リスクは高いです。しかしながら、中学生でも学習性無力感が起こることはあります。
例えば、中学受験をして私立の賢い中学校に入学した場合や、小さい頃から音楽や水泳など高い意識で習い事をしていて、その分野の中で挫折をした場合などです。
最後に
上述の条件に当てはまる子の保護者の方や、教員の方など、ぜひ期間的でもいいので、気にとめてあげてください。「無理しなくていいよ」「別の道、別の方法もあるよ」など、心に響かない場合もありますが、貴方の挫折体験と一緒に話をしてあげると、ふと考え方変わるきっかけになるかもしれません。
また、「悩みがあったらカウンセラーに相談してみよ?」と、カウンセラーに繋げてあげてください。カウンセラーの支援を受けるということに抵抗がある方も多いと思いますが、学業や進路の悩みを聴くのもカウンセラーの仕事です。ぜひ、気軽にご利用してみてください。