スクールカウンセラーとは【応募資格、準ずる者、年収、業務】

2021年4月8日

スクールカウンセラーとは

スクールカウンセラーは、文部科学省によって位置づけられた教育現場における「心の専門家」である。平成7年度に154の学校に設置されたのが最初の動きである。平成18年度には約1万校に配置されている。

平成13年度に「スクールカウンセラー活用事業補助」が開始され、各都道府県にスクールカウンセラーを配置するための予算が設定された。平成18年度の予算は約42億円である。

スクールカウンセラーは、各都道府県に所属する形で学校に派遣される。ほとんどは非常勤職員として、週に1回か2回ほど勤務し、学校を何校か掛け持ちで勤務することもある。

後述するが、スクールカウンセラーに求められる業務は、相談業務だけではなく、常勤化が求められる声もある。

スクールカウンセラーになる条件

スクールカウンセラーになる条件は、各都道府県によって設定されている。一方で、大枠としては文部科学省により方針が出されている。

応募資格

スクールカウンセラーは、誰でもなれるわけではなく、応募資格が各都道府県によって設定されている。応募資格は以下のいずれかである。(今回は三重県が規定する応募資格を参考にする。)

  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神科医
  • 児童生徒の臨床心理に関して高い専門性及び経験を有し、学校教育法第1条に規定する大学の学長、副学長、学部長、教授、准教授又は講師(常時勤務をする者に限る)又は助教の職にある者

スクールカウンセラーに準ずる者

三重県では、上記の条件に加えて「スクールカウンセラーに準ずる者」が規定されている。スクールカウンセラーに準ずる者の条件は以下の通りである。

  • 大学院修士課程を修了した者で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務について、1年以上の経験を有する者[※ただし、財団法人日本臨床心理士資格認定協会が指定した「指定大学院」を○年に修了予定の者で、在学中に関係機関(教育、医療、福祉等)において、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務を1年以上経験した者]
  • 大学もしくは短期大学を卒業した者で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務について、5年以上の経験を有する者
  • 医師で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務について、1年以上の経験を有する者

■スクールカウンセラーに準ずる者は、各都道府県への登録が必要となり、所属機関の所属長による実務証明を提出しなければならない。

適性検査と試験

スクールカウンセラーの応募資格を満たしていても、これまでの実績が学校教育の特徴と適応するか判断される必要がある。例えば、児童福祉施設での相談業務を経験した人は、特別支援学級がある学校での勤務でより力を発揮できるかもしれない。

また、心理業務に欠かせない傾聴のスキルや心理支援における知識と技能、心理検査ができるかなどの項目がチェックされることになる。例えば、個人経営で子どもの不登校支援を経験していたとしても、心理学における知識が乏しかったり、心理検査ができない場合は採用されないこともある。

スクールカウンセラーの年収

Googleで検索すると、スクールカウンセラーの年収は300〜400万円と記載されている。

三重県の条件で最高額を計算すると、時給は5000円(準ずる者は3000円)だから、5000円✕1日7時間✕21日(1ヶ月)✕12ヶ月=880000円

これを見ると、高給の職に思えるが、実際は勤務日や勤務時間が少なく、ボーナスもない。また夏休みや冬休みなど学校が休みの日やテスト期間などは、勤務ができないということもあり、年収でみれば300〜400万に落ち着くようである。

スクールカウンセラーの業務

スクールカウンセラーの業務は、以下の通りである。

  • ①児童生徒のカウンセリング
  • ②保護者のカウンセリング
  • ③教職員のカウンセリング
  • ④教職員へのコンサルテーション
  • ⑤カンファレンス
  • ⑥研修や講話
  • ⑦アセスメント
  • ⑧ストレスチェック
  • ⑨ストレスマネジメント
  • ⑩リスクマネジメント

カウンセリング

①②③のカウンセリングは、相談業務である。学校の中に相談室が設けられ、その場でカウンセリングを行う。スクールカウンセラーは、カウンセリングを適切に進めるためにも「枠組み」を守るように注意するべきである。

本来の「枠組み」には、時間の枠組み、場所の枠組み、料金の枠組みなどがある。スクールカウンセラーは雇われて運用されているので、料金の枠組みは考慮されない。場所の枠組みとしては、相談室が設けられていて、話しやすい雰囲気や秘密が漏洩しない環境を確保することができる。

特に注意するべきは、時間の枠組みである。相談者と時間の約束をして、カウンセリングは1回50〜60分であることが望ましい。しかしながら、スクールカウンセラーが週に1回しか勤務しない学校で、かつ相談者が多い場合は、手が回らなくなることがある。

相談者は、基本的に担任や教育相談(教員の分掌:生徒指導や教務、総務などの係仕事のうちの1つ)の教員を通して、カウンセリングの予約をする。相談が多い学校では、この予約がいっぱいになることが多く、カウンセリングを受けられるのが月に1回など、深刻なケースに力が注げなくなる危険性もある。

コンサルテーション

コンサルテーションは、心理学の知見から教職員や学校という組織の運営に助言を行うことである。学校運営に関わる行為でもあるため、教職員の意見を尊重しつつ、慎重に行う必要がある。

発達障害の理解で言えば、学校には、発達障害の児童生徒や発達のグレーゾーンに位置する児童生徒も在籍している。これにより教職員は、理解し難い児童生徒の特徴に悩んでしまうこともある。その場合、発達障害に関する知識を伝え、その関わり方や発達支援施設との連携なども助言することができる。

その他、不登校や非行などの生徒指導上の問題や学級経営についても心理学としての知見が活きてくる。近年で言えば、少年事件が目立ち、児童生徒の自殺が増加していることもあり、障害や精神疾患の疑いがある児童生徒を学校と連携して、適切な医療機関に繋げることも重要となる。

教職員の経験からすれば、被虐待児の対応や事件・事故に巻き込まれた児童生徒の対応は、どうしていいか分からないのが普通である。虐待の場合は、児童相談所への通告とともに、その後の動きも説明する必要がある。事件・事故の場合は、心のケアと学校生活上の配慮が必要になることも多い。

カンファレンス

カンファレンスは協議という意味である。学校によって呼称は違うが、「教育支援会議」などの名で校長、教頭、養護教諭、担任教諭、学年主任など、教職員が事例に関するカンファレンスを行っている。

スクールカウンセラーは、教職員と対等の立場で、このカンファレンスに参加する。臨床心理学の専門的な立場から助言や提案を行う。最終決定は、教職員の中で決定されることが多いが、医療機関と連携が必要な深刻な場合は、その必要性などを説明して、適切に導く姿勢も大切である。

また、教職員の分掌として「特別支援コーディネーター」や「教育支援コーディネーター」などがある。コーディネーターというのは、他の機関と学校を繋ぐ役割を持っていて、多くは都道府県に設置された公的な機関との連携となる。

スクールカウンセラーは、この意味でも他機関との連携を普段から意識しておかなければならない。その症状や障害の専門家がどこにいるか、どの機関でどのような支援が受けられるかなど、可能な限り詳しく知っておいたほうがよい。

研修と講話

研修と講話は、教職員や保護者、地域の方々に向けての情報伝達の手段である。スクールカウンセラーは、学校教育において予防的な働きが求められている。

例えば、教職員や保護者は、子どもに対する接し方や今後に関わるかもしれない障害や疾患については、知識の有無によって対応が異なる。また、思春期や青年期の心理発達上の諸々の問題に対しても、学ぶ機会があったほうがよい。

子どもの自殺や災害があった場合などに心理教育として、心のケアについて話したり、医療機関との連携が必要になるケースやその境界などについても知っておいたほうがよいだろう。また、どの場合にどこに連携すればいいのかなど、通常は知り得ることがない情報を提供するのもスクールカウンセラーの重要な役割である。

アセスメント

アセスメントは、相談者の状態や状況を詳しく知り、その支援の方針を決定するための材料とすることである。相談者との面談や心理検査などで多角的に状態や状況を捉えるよう努める。

教育現場では、事実としての問題が発生してから発達障害や心理支援の必要性が明らかになるケースが多い。この場合は、問題を発生させた児童生徒と保護者の許可を得て、相談や心理検査を促す。

児童生徒は、表面に出ていないだけで、一人ひとりがそれぞれの問題を抱えていると考えてよい。その問題に対して支援が必要なレベルであるのかを見極め、適切な支援を施すことが求められる。

ストレスチェック

ストレスチェックは、学校の教職員に対して行われるストレスの程度や慢性度や相談できる人がいるかなどを測定するチェックリストである。教職員はこれに回答すると、ストレスの程度が判定される。

「高ストレス」に判定された場合は、学校医との面談を受けることになる。中には、診断を受け、病気休業に至るケースもある。ストレスチェックの実施者は、スクールカウンセラーの1つの業務であるが、各都道府県によって多少の違いがあり、外部委託して、ネット上でストレスチェックを行うことも多い。

この場合、スクールカウンセラーのすることは、あまりない。とはいえ、ストレスチェックを受けるように促したり、その先にある流れを説明したりすることも大切な業務である。

ストレスチェックは、管理職によって実施されることも多いが、基本的に管理職はその結果を知ることができないとされている。「高ストレス」の判定を受けた教職員は、管理職に報告し、業務時間中に学校医のもとで面談を受ける。

ストレスマネジメント

学校は、常時として忙しく、役割が分かれているとはいえ、行事や試験の前後はストレスが多大なものとなる。例えば、小学校では運動会や文化祭にかかる準備期には帰宅時間が20時や21時となることもある。

こうした勤務時間を把握しておくだけでも、教職員の不調に気づきやすくなる。忙しいゆえに、スクールカウンセラーに相談する時間もないほどであるが、心理の専門家として、客観的な視点でブレーキをかけてあげることも重要である。

また、教職員の間では、人間関係での問題が生じることもある。教員という仕事は、人同士が複雑に絡み合う感情労働であり、指導方針や性格が合わないということはよくある。問題はこれがストレス過多の原因となり、病気に至ることである。

これを防止するためにも、教職員の相談に応じ、必要があれば、許可を得た上で管理職に配置の変更や業務の緩和を要請したりすることもできる。ただし、スクールカウンセラーには、人事における決定権はないことにも注意しておきたい。あくまで配慮を要請することに終始する。

リスクマネジメント

リスクマネジメントは、危機管理のことである。事件や事故、災害があった場合に、どのような動きをすれば、二次被害を防ぐことができるかなどを検討する必要がある。

例えば、後追い自殺や群発自殺と言われる現象がある。大津市の中学生が自殺した事件があった際、教育委員会や学校がその原因が虐めであるとは認めず、その対応が問題視された。この事件は大きく報じられ、虐めや虐待など苦しい境遇にある子どもたちが各地で自殺をした。これは、自殺心理学の中でも波紋を呼び、大津市の事件が影響していると考察する研究者が多い。

また、関東大震災で福島県では原発事故が問題となった。福島県に住む人たちは、移住を余儀なくされ、それに伴い、子どもたちは各地の学校に転校することとなる。しかし、虐めや差別、家庭の不安定な状況、PTSDなどが問題となった。

多くのスクールカウンセラーや災害対策のカウンセラーが派遣されたが、それでも防ぎきれない二次被害があった。これらの歴史的な問題から学ぶことは、危機管理を徹底することである。

学校には、各自治体によって生徒指導上の問題に対するマニュアルが準備されている場合もあるが、やはり心理支援としての部分においては「スクールカウンセラーと連携して………」などの記載に留まっていることが多い。

こうしたマニュアルの最終的な方針は、学校教員とスクールカウンセラーの協議の上、決定される。しかしながら、どれだけ準備しても予測できない事態が起こりうることもある。

例えば、大阪府の池田小学校で発生した無差別殺傷事件がある。この事件では8人の児童が死亡、15人が負傷している。男が校内に侵入し、刃物で児童や教員を襲ったのである。男は抵抗しない低学年を狙い、死亡した8人の児童は1年生が1人、2年生が7人であった。被害の大きさから考察すると、現場を目撃したり、恐怖で震えた児童もいたことだろう。少なくとも心のケアが必要となる。

この事件のあと、池田小学校では、外部の人が容易に侵入できないように、校門には警備員が設置され、防犯用の刺又がいたる所に準備された。かなり細かいレベルの防犯訓練が実施され、教員の警戒心は鋭くなっている。教育社会学を専門とする大学教授がアポイントメントを取った上で、研究のために出向いたところ、教員の鋭い視線を感じ、いつの間にか囲まれていたと語っている。

三重県では、私立高校の女子生徒が男子生徒に嘱託殺人を依頼し、実行してしまうという痛ましい事件があった。この事件のあと、三重県内の学校では「命の教育」という名目で心理教育が行われた。大学教授が派遣され、講演するなど、心のケアが重視された。