【中学生のうつ】劣等感がうつ病の原因となる?┃

2021年2月9日

今回は、中学生の不登校の原因にもなる『劣等感』という感情についてお話しようと思います。

劣等感の意味

臨床心理学研究で用いられる定義を概観すると、劣等感には2つの意味があると考えられます。

一つ目は「他者と自分を比較し、自分が劣っていると認知したときに抱くネガティブな感情」です。

二つ目は「理想の自分と現在の自分を比較し、現在の自分が劣っていると認知したときに抱くネガティブな感情」です。

他者との比較による劣等感

一つ目は、他者と自分を比較しています。中学生の時期は、自分に意識が向く時期で、比較の対象は主に身近な友達、クラスメート、同じ年齢の他者になることが多いです。

例えば、中学生での悩みで多いのは、容姿や学力、家庭の経済状況などが挙げられます。容姿でいえば、女子は特に比較しやすいことがわかっています。学力や家庭の経済状況については、男女差はほとんどありません。

しかしながら、学力は高校進学に直に関わってくる部分でもあって、定期テストなどで順位が出るので、「勉強ができない馬鹿な自分」という自己否定に繋がりやすい項目ではあります。

経済状況についても、中学生では遊びで買い物に行ったり、小学生までの遊びとは質が異なることもあって、意識化されやすくなります。

中学生は、いわば思春期の真っ只中で、将来への悩みも増えてきます。異性にモテない自分、勉強ができない自分、運動ができない自分、など自分の価値を、他者との比較によって位置づけるのです。

理想との比較による劣等感

二つ目は、理想の自分と現在の自分を比較しています。人によって、理想の内容や高さは異なります。

内容については、難関高校に進学したいという目標的な理想があれば、異性にモテるようになりたいという外見的な理想、優しい人間になりたいという内面的な理想もあります。これは、個人が意識するところで異なります。異性に興味がない人はモテたいとは思わないですよね。

理想の高さについて、完璧主義の人は理想を高く掲げます。テストで80点を取って、周囲の生徒が凄いと言ってくれていても、100点じゃないとダメだと思っていれば、納得はできませんよね。一方で、まあ80点だったら成績は5だろうし、よくやった自分!思う人もいます。その意味で完璧主義の人は、心の負担が大きいですよね。完璧主義はうつ病と関連があるという研究は凄く有名です。

中学生と劣等感(他者との比較)

中学生は、自分を理解するために、ついつい他者と自分を比較してしまいます。例えば、身長170cmの男子生徒に「身長は高いと思う?」と問います。すると男子生徒は「低い方だと思います」と答えました。

中学生で170cmだったら高いか普通くらいには答えそうなものですよね。なぜ彼は低いと答えたのかというと、彼はバスケ部の強豪校に所属していて、周りは180cmもある生徒ばかりだったのです。つまり、「(バスケ部の中では)低い方です」と答えたのです。

この例のように、中学生は周囲と比較することで自分を表現するのです。また、比較対象になるものは、意識が傾いているものです。今回のように質問されると、控えめに答えることもありますが、自分の中で自分を見つめたときには、より素直な比較が行われます。

中学生と劣等感(理想との比較)

先ほどもお話したように、中学生は自己意識が強くなる時期です。些細な冗談で言ったつもりが、相手は凄く思い詰めてしまったりもします。

男子生徒が好意をよせる女子生徒に対して、「デブ」と意地悪を言ったとしましょう。自己意識が強くなっている女子生徒にとって、この言葉は冗談と捉えられません。実際に普通の体型をしていても、「自分は太っているんだ」と気になってしまい、摂食障害に繋がる可能性だってあります。

このケースでは、女子生徒にとって、「デブ」という言葉が理想を作り出すきっかけになったわけです。その理想像が過度に偏って作り出されてしまい、「40キロはデブ」という偏った理想に向かって努力した結果が摂食障害です。

劣等感は自己否定と自己成長に繋がる

劣等感をどちらの意味で扱ったとしても、その先には自己否定があります。一方で、劣等感は上手く扱うことができれば、自己成長に繋がります。

心を病んでしまう子は、自己否定が強くなってしまい、いわば劣等感にとらわれている状況にあります。これは非常に辛い状況です。目にする耳にする情報は、他者や理想への劣等感を生むものでもあります。

早くて、高校生の2年生頃には、「自分は自分」「比較しなくてもいい」と思えるようになります。しかしながら、中学生と高校生のほとんどは、劣等感と闘いながら学校生活を送っています。

大学生の中頃では、アイデンティティの確立があります。「自分とは〇〇だ」と自分の個性がはっきりと意識でき、それをそのまま受容することができるようになっていきます。この際、中学生や高校生で悩み抱えていた劣等感を思い出し、成長の糧になったんだと思い返すことができるようになります。

ここまで心の発達がなされれば幸いですが、劣等感に悩まされたままで、年齢的に大人になっても、自己否定が続き、うつ病など、心が病んでしまう大人もいます。

こうしてアイデンティティが確立されないままの大人は、自分を理解すること、自分を受け入れることができず、長いトンネルから出られずにいます。「自分の価値って何なんだろう」「生きていていいんだろうか」「何で生まれてきたんだろう」と自分を見つめているようで、見つめられていない状況です。

劣等感を解消する方法

他者との比較に関して

まずは、他者と比較しないことです。自分のペースや自分のやり方に大切にして、人は人、自分は自分と割り切っていいと思います。ある程度、学校という団体の中でペース調整されるので、適度に合わせるくらいでいいと思います。容姿に関しては、整形するという手段もありますが、まずは今の自分は本当にダメなのかを時間をかけて考えてみてください。周りに比べてダメだから、というのではなくて、自分自身をしっかり見つめてみることが大切です。どう考えても整形が必要と思うのであれば、それは自分の人生ですから、判断に至ってもいいのではないでしょうか。

理想との比較に関して

次に、理想の内容が社会的におかしくないか、理想の高さが自分の現状から見て適切かどうかを考えてください。「完璧になりたい」という理想は内容的にも高さ的にも適切でしょうか。完璧な人間はいません。人それぞれ得意や不得意があり、あるいは凹凸があり、互いに支え合いながら生きていくのが、人としての在り方なのかもしれません。自分の中で考えても、答えが出ない場合は、信頼できる他者に聞いてみましょう。「素直に答えてほしい。この理想は実現可能かどうか」と。勿論、一つの意見だけでは判断材料として少ないので、色々人に聞いてみましょう。そして、得た判断材料から自分の判断をしてみましょう。最初の考えは、少なからず変化することと思います。

最後に

いかがでしたか?劣等感という感情は非常に扱いづらい感情です。しかし、これにとらわれてしまうと、自分自身を見失いかねません。辛い状況ですが、心の成長を意識して、自分と向き合ってみてくださいね。

今回はここまでです。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。