劣等感の苦しみから解放される3つのヒント
こんにちは。三重県松阪市でカウンセリングルームを運営しています中津と申します。
今回は、「劣等感を感じていて、この苦しみから解放されたい」とお悩みを抱えている方に向けて、この記事を書かせていただきます。
はじめに
本記事は、専門的にかなり詳しく書きます。理解するには、少し苦労されるかもしれませんが、必ず有用性のある記事になると思いますので、何度も読み返して理解していただけると幸いです。
劣等感の意味を理解してください
まず、「劣等感とは何か」をごく簡単に説明します。臨床心理学の劣等感研究を概観しますと、「劣等感」は主に次の2つの意味で使われています。
1つ目は、「他者と自分を比較した際に抱く否定的な感情」です。2つ目は、「理想の自分と現在の自分を比較した際に抱く否定的な感情」です。
この記事を読み進める前に、読者の皆さまは、どちらの劣等感でお困りなのか、少し考えてみてください。これをしっかり理解されると、以降の文章が理解しやすくなりますし、劣等感の解消に繋がっていくと思います。
【ヒント①】認知行動療法
劣等感には2つの意味があるとお話しました。次に重要なのは、その劣等感があることで、「何が辛いのか」を知ることです。
劣等感は、自分が「劣っている」から辛いという簡単なものではなく、その先に「自己否定的な感情」があるから辛いのです。
臨床心理学の認知行動療法という療法の基本原則として、『感情』が湧き上がる前には、『出来事』と『認知(捉え方)』があると言われています。
要するに、劣等感の構図は、『他者(理想自己)を目の当たりにする』→『自分は劣っていると認知する』→『自己否定感を抱く』ということになります。
これは、ABC理論といい、『出来事→認知→感情』という感情生起までの流れがあるということです。
認知の部分にアプローチする
このABC理論でいうと、『認知』の部分を変えることで、感情による苦しみが緩和されます。例えば、皆さまのように『劣っている』と認知した場合は、否定的な感情を抱くことになりますが、『まあ、上には上がいるか』と楽観的に考える方は、皆さまほど否定的な感情を抱かないことでしょう。
とはいえ、この方法で、劣等感が緩和する方とそうではない方がいます。これは、出来事の大きさや認知せざる負えない状況など、避けられづらい要因があるからです。緩和しない方は、次の章にいきましょう。
僕が高校の教員をしていたとき、劣等感を抱える生徒に対して、まずは同じように認知行動療法的なアプローチをしていました。余程、重大な状況でない限りは、心の負担が軽くなるようでしたので、ここでは、僕が使用する言葉をいくつか紹介します。
◇他者との比較
- 人には自分のペースがある。無理に競う必要はないと思うよ。
- 人には好きな分野がある。悔しいということは、負けたくないことなんだね。
- 何でも負けないというのは、難しいね。あの子にとっては、これに人生をかけてるかもしれないんだから。
- 焦ると上手くいかない。負けてもなお、やり続けたいことなら、焦らず続けよう。
- アイツは凄い。ちゃんと負けを認められる人はまだまだ伸びていくよ。
◇理想の自分との比較
- 悔しいは力になる。今は辛いけど、成長になると思えば、ちょっと前向きになれないかな。
- 理想が高すぎる。目標は段階的に設定していくものだよ。まずはここまで、次はここまで、ってね。
- 自分を見失ってる。どれだけ結果が出ても、どれだけ成長できても、自分を楽しめないと意味なくない?
- 考えがカタくなっている。プレッシャー感じてない?肩の力を抜いてから再スタートだね。
- 自分が評価できてない。今の自分も褒めてあげてね。既にできていることもあると思うんだ。
実際の認知行動療法では、もっと様々な方法で、認知にアプローチします。上記の言葉で、少しでも心の負担が軽くなった方は、認知行動療法が合っている方だと思います。ぜひ、カウンセリングを受けてみてください。
【ヒント②】環境を整える
先ほど、認知行動療法で劣等感の辛さが緩和されない方がいるとお話しました。上記の言葉で、何も響かない、そんな言葉で変わるほど軽い状態じゃない、という方は、おそらく本来は認知行動療法でも効果があるのにもかかわらず、それを阻害するものがあるのではないでしょうか。
学業で例えると、学校で順位が発表される、家で親に順位を聞かれる、友達にバカにされる、兄弟姉妹で比較される、などです。
これらは、自分のペースを崩しますし、無理やり頑張らされている状況でもあります。日本は、学歴社会です。今は、就職試験でも特性を重視した採用があったり、少しずつ学歴の重みが軽くなってきてはいますが、大学進学率が50%を超えた今、自分のやりたい仕事に就くには、それなりの学歴を持って、幅を広げる必要があります。
この意味で、意識せざるを得ない学業成績ですが、焦りや比較があると、自分の目標が正しく意識されません。また、最も良くないのは、親に進路を決めれていたり、兄や姉が国立大学に行ったから自分も、と他者基準で目標が決まっていることです。
目標って、そういうふうに決めるんでしたっけ?
警察官がカッコよかったり、看護師にお世話になったり、絵が好きで美術家になりたかったり、人のためになりたくて医師を目指したり、そういうことじゃなかったですか?
必要ない環境から離れる
ここまでお話して、もうお分かりかと思いますが、小言をいう親に従う必要も、兄姉基準で進学する必要もありません。結果的に目標と合致していれば、それでも構いませんが、自分の本来の目標を見失うまで、その環境に属するのは非効率です。
親とは距離をとって学校や塾にいる時間を増やしたり、友達と図書館に行ってもいいと思います。兄姉の努力は認めつつ、自分の本当の目標で見返してやればいいのです。
この章は以上になりますが、環境を離れることができたら、もう一度、前の章の認知行動療法を検討してみてください。少し捉え方が変わっていることと思います。
【ヒント③】専門性を身につける
ここまで、読んでくださった上で、認知行動療法が合わない、自分の考え方を変えずに頑張りたいと思っていらっしゃる方もいると思います。
そこで、本記事で最後に紹介するのは「専門性を身につける」ということです。専門性とは、あるジャンルに特化して、知識を得たり、技術を習得することです。
日本は、学歴社会だとお話しましたが、「伝統文化を大切にする社会」でもあります。例えば、陶芸、鍛冶、大工、などに見られる、いわゆる職人や匠といわれる人たちを想像してみてください。
彼らの中には、若い時から一点のジャンルに特化して、全集中してきた人たちです。現在では、ジャンルの融合もみられ、職人同士が手を組んだり、多彩な能力を持った職人も増えてきました。
『劣等感』に苦しむのは、劣っているから苦しむのです。つまり、自分の本当にやりたいことを特化して、伸ばしていき、劣らない自分をつくることで、劣等感を緩和もしくは解消できるのです。
ただし、専門性というのは、簡単に身につくものではありません。それまでは、多大な苦労があります。途中で挫折することもあるかもしれません。
一方で、これだけは知っておいてください。専門性は自分の好きなこと、やりたいことを選んでください。そうすることで、努力している間は「他の劣等感」に苦しむことは確実に減ります。それだけ一箇所に意識を集中することが劣等感の解消の最大のヒントです。
そして、専門分野で負けて劣等感を抱いても、それは今までの劣等感とは異なり、どこか晴れ晴れした気分で、さらに高みを目指すきっかけになることでしょう。
最後に
いかがでしたか。劣等感という感情は非常に厄介です。中学生や高校生の時期に悩まれる方が多いですが、それが解決できないまま、受け入れられないまま、大人になっても苦しみ続ける方もいます。そうした方たちの力になれれば幸いです。
今回は、ここまでです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また、よろしくお願いします。