「嫌な過去を忘れたい」は心理学的には微妙です。

2020年11月23日

こんにちは。中津です。

今回は、『「嫌な過去を忘れたい」は心理学的には微妙です』というテーマで、お話していきます。

初めに記事を信頼していただくために僕の経歴をお話します。僕は、三重大学大学院で学校臨床心理学を学び、青年期の心の発達を専門に勉強しました。大学院を修了したあと、特別支援学校で1年、高校教員を2年、経験し、個人でフリースクールを開業しました。

今回の記事のテーマは、主に中高校生や大学生の青年期に刺さる記事だと思います。また、成人期の方でも、辛い過去を見つめようとする方に、有益な情報になると思います。

嫌な過去を忘れたいは微妙

結論を言うと、「嫌な過去を忘れたい」は微妙です。その理由は、時間的展望という概念を扱った研究論文が示しています。

時間的展望とは、個人が「過去・現在・未来」をどう捉えているかということです。時間的展望の研究では、最も健康な人は、「過去・現実・未来」が全て統合されていることが分かっています。つまり、「過去を忘れたい」「現在だけ楽しければいい」「未来が上手くいけば幸せ」といった人は、もしかしたら健康かもしれませんが、全てが統合できている人には及びません。

しかしながら、中には過去も現在も未来も全て幸せに生きてきた人もいます。そういった人は、間違いなく全てが統合しやすい状態です。

一方で、過去に苦しい経験をした人は、過去を忘れようと必死で、現在や未来に目を向けられていません。中には、過去から目を背け、現在だけを楽しく生きようとする人がいます。

僕の考え方としては、心を守るために過去を見つめないようにしているわけですから、それは良い判断だと思います。しかし、時間的展望を踏まえて言えば、これは、悩む時間を後に遅らせているだけであって、いずれは過去と向き合い、直接対決をする時が必要になります。

勿論、PTSDのように思い出すことでパニック発作を起こしたり、解離性の記憶障害のように思い出すことすら、防衛的にできない人もいます。この人たちに無理に思い出させることは、非常に危険です。

もし、この記事を読んで、「今なら過去と向き合える」と思われた人がいたら、しっかり体制を整えた上で直接対決してください。例えば、カウンセリングや通院を継続するとか精神科病院に入院するとか、家族や友達についていてもらうとか、です。

過去の精算はいつか必ず

精算というと自分が悪いことをしたような言い方で腑に落ちません。でも、この表現は意外に合っていると思っていて、辛い過去を持つ人は、自分が悪いことをしていないのにもかかわらず、過去と向き合わないといけない状況になってしまうのです。

これは、非常に辛いです。本当に忘れたい気持ちになります。でも、逃げてばかりだと、そこから心の発達は止まってしまい、人生の時間をネガティブなまま、長く過ごすことになります。

実は、僕もそうでした。僕は大学生のとき、色々と重なってうつになり、1ヶ月で8キロ痩せて、死にかけたことがあります。勉強を積み重ねたことが幸いし、何とか大学院に進学できました。落ちていたら、どうなっていただろうと思います。

僕は、元々、子どもの不登校や境界性パーソナリティ障害の勉強がしたくて、心理学の門を叩きました。これらの勉強に加え、自分のことを勉強しました。僕は、完璧主義にとらわれて、うつになったことがわかりました。大学受験が上手くいかず、それを取り返そうと努力した結果、考え方が偏ったのでしょう。

その頃に時間的展望の研究論文に出会います。過去はもういいから現在と未来を充実させようと頑張ってきた僕には、突き刺さる内容でした。

それから、僕は時間をしっかり作り、散歩しながら悶々と自分の過去を見つめ、精算していきました。初めは辛く、涙を流しながら、近所を歩いていたと思います。確実に変な人でした。でも、その頃から、精神的にエネルギーが回復し始め、1年が経つ頃には完全回復を果たしました。

因みにうつの回復には、1年はかかると思います。すぐに良くなる人もいますが、再発したり、見えない部分でうつの症状が出ていたりします。ですから、ある程度の時間はかけるといいと思います。

過去を見つめた結果

過去を見つめると、めちゃくちゃ辛いです。僕は色々と重なっていたのもありますが、中には大きくて辛い出来事がドンと負担になっている人もいます。おそらく大きい出来事であるほど、過去を見つめる辛さも大きくなります。ですから、無理はしないでください。

ただ、過去を見つめるといくつかのメリットを感じます。まず、視界が広くなります。これまで過去を避けながらも、どこか過去に支配されていた心が開放されて、友達との関わりなど、より明るく接することができたり、今までシャットアウトしていたポジティブな情報も入ってくるようになりました。

自分自身、完璧主義が緩和され、ポンコツになった感じます。ですが、周りからは雰囲気が優しくなったと当時はよく言われました。何となく今まで許せなかったことが、そういうこともある、仕方ない、と許せるようになりました。他者に対してもそうです。今まで許せなかった他者の行動なども許せるようになって、心が寛大になった実感があります。

また、最初にお話したとおり、過去と現在と未来が統合されつつあり、健康的に未来を志向できるようになりました。それまでは、未来志向でありながら、過去を塗り変えたいとか無かったことにしたいと、どこか過去に支配されていましたが、そのときの感覚とは明らかに違います。ただ、前向きに頑張ろうと思えます。

ぜひ、無理はしないでください。でも、いけると思った時は挑戦してみてください。まだ変われます。僕が変われたように。

最後に

いかがでしたか?

過去から目を背け続けて、心が押さえつけられている人は、多いと思います。もし、この記事を読んで頑張ろうと思えた人は、ぜひ一歩を踏み出してみてください。応援しています。

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臨床心理学

Posted by Cozy