【不登校の子の保護者の方へ】「子どもの気持ちがわからない……」「親子関係が上手くいかない」という方への提言
三重県松阪市のフリースクールCOZYです。今回は、不登校のお子さんがいる保護者の方へ向けて記事を書かせていただきます。
「子どもの気持ちがわからない」とお困りの保護者の方、もしくは「親子関係が上手くいっていない」という保護者の方に読んでいただきたいです。
保護者にも子どもにも物語がある
昔、保護者の方も、子どもの時代があって、色々な悩みや悲しみを経験されてきたこととご想像します。僕自身も、小中高のとき、非常に苦しい経験をしてきました。僕自身の悩みは、不登校ではありませんでしたが、「高校、辞めようかな」「早く消えてしまいたいな」と思うことがありました。
このように、現在の子どもたちも、各々が『物語』を持っています。保護者の皆様も、『物語』を持っていて、その経験から子どものためになることを助言したり教えたりして、日々の支援を行っていることと思います。
不登校支援を学ぶ上で『物語』を知ることが重要です
僕は、大学院で学校臨床心理学という学問を専攻していました。当時、思い悩んでいる僕に、師匠である大学教授はこう言いました。「自分の物語は、他の人にとっては役に立たないこともある」
人は、自分の経験を否定したくないために、自分の経験をさも社会の重要事項のように取り上げます。それが共感され、多くの方に勇気や感動を与えることもあります。一方で、それに共感していない方もいるのです。保護者が自分の経験から子どものために「してあげている」ことは、子どもにとって疑問でしかないこともあるのです。
僕は、臨床心理学を学ぶ上で、色々な方の悩みを聴き、もしくは事例や研究論文を読み、本当に様々な『物語』を知りました。それで気づいたことがあります。
いくら『物語』を知っても、その『物語』は『その人の物語』であって、そこで有効だったカウンセリングや支援が、他の人に対して、同じように活きることは、ほとんどないのです。
何が言いたいかというと、子どもの支援を考えている保護者の方には、ぜひ『物語』の多様性を知っていただき、『子どもの物語』に寄り添っていただきたいのです。
『物語』を知る方法
僕が大学院生のとき、未熟でしたので、よく似た事例を探して、どうすればいいか、方法を探っていました。途中で『物語の多様性』を知ったわけですが、この事例を読むという勉強方法は、支援者の立ち回り方や他機関との連携を考える上で、非常に役に立ちました。
とはいえ、事例は一般の方では手に入りづらいですし、心理士としての立場で書かれていますから、小難しい内容になっています。『物語』を知る上では、事例や論文まで読まなくても、今では小説やノンフィクション作品でも、知ることが可能です。僕も、院生室にパソコン2台を持ち込み、片方で作業して、もう片方で映画を観たりして、勉強したものです。
具体的に『物語』を知る方法をあげます。
- ブログ
- SNS
- YouTube
- ノンフィクション小説
- ドラマ、映画
勿論、ドラマや映画は、演出があったり、演者のイメージも影響しますから、その点は考慮して、見てください。僕は、SNSで「不登校」「病み垢」と検索して勉強しました。SNSでは、匿名ですので、辛い想いの内がよく表れています。
小説で参考になったのは『雨の降る日は学校にいかない』です。保健室登校の実際をリアルに描写されています。僕の知る事例とも合致している部分が多く、凄くリアルさを感じました。
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また、自身の不登校経験をブログや動画で綴られている方もいますので、そちらも参考になると思います。また、SNSでは、不登校の子どもを持つ保護者の方が情報収集をしていますので、上手に繋がって情報交換したり交流したりできると、『物語』に触れることができると思います。
子どもの物語を支えましょう
さて、これまで様々な子どもの『物語』を知ろうとしてきたわけですが、これはあくまで、「自分の子どもの物語」を支えるための事前学習でした。
自分の子どもの物語については、無理に知る必要はありません。知らなくても、次に説明する条件が整えば、子どもの心は回復していきます。
①信頼関係を再構成する
まず、「親子なんだから信頼関係はできているはずだ」という考えをリセットしてください。1から信頼関係を築くつもりで、普段の接し方を変えてみてください。
✔心配であれこれ言いすぎていませんか?
✔支配的な話し方をしていませんか?
✔過干渉または無干渉ではないですか?
✔子どもの意思決定を妨げていませんか?
✔子どもの本当の夢を知っていますか?
✔親に話せないこともあります。
不登校の子どもは、心が疲弊しています。保護者の方が関わりすぎると、家でも心のエネルギーを使ってしまいます。年齢にもよりますが、親離れをしたいと思っている子どももいます。
悩みによっては、保護者に話せないこともあります。通常、友達や兄弟、いとこのお兄ちゃんお姉ちゃんに相談したいところが、そういった人が周りにいない子もいます。その意味で、話しやすい先生やカウンセラーの存在が重要になることが少なくありません。
僕の知り得る範囲では、親子関係に悩んでいる子どもは、凄く多いです。また、保護者に自覚がないことも多いです。子どもは、大人になって、保護者の優しさを再認識することもありますが、現在の段階で拒否感が強く表れていては、それが心の負担になってしまいます。
②子どもの居場所を準備する
この居場所というのは、部屋をつくるということではありません。「自分らしくいられる空間」をつくるということです。僕の場合は、部活動でした。どんな悩みも忘れて、バレーに集中できる空間は、僕の心を支え、自然に笑顔で居られました。
ある意味、子どもの部屋があるのは、休憩する場所としては有効で、ぜひ可能であれば用意してあげてください。加えて、「ありのままで、無理せずに、自然に笑顔になれる」ような空間を探してみましょう。
適応指導教室やフリースクールは、その空間にもなります。似た境遇の子どもが集まって、自由に過ごすわけで、理解ある支援者がいて、安心してゆったりできる空間です。僕が部活動を例にあげたように、スポーツクラブのような居場所でもいいと思います。同じスポーツ好きな子どもが集まっているので、友達も作りやすいでしょう。
③話せる人を周りにつくってあげる
適応指導教室、フリースクール、習い事、何でもいいです。不登校になって、孤独感を抱えていたり、保護者話せないモヤモヤしたものがあったり、そういったものを吐き出せるように、信頼できる友達や支援者が周りにいる状況をつくってあげてください。
まとめ
子どもを支えるために必要なこと
◆様々な子どもの物語を知る
- 物語とは個々にあるもの
- 物語の多様性を知る
◆支援環境つくる
- 子どもとの信頼関係を再構成する
- 子どもの居場所を整える
- 悩みを話せる人を周りに
最後に
いかがでしたか?子どものことを知ろうとしすぎても、思春期の子どもは拒否しようとします。保護者としては、心配する気持ちを少しばかり堪えていただいて、できる範囲で、友達などに心のモヤモヤを吐き出せるように、環境を整えてあげてください。子どもは、自分の力で、再び立ち上がります。それを期待し、少し離れたところから支援してみましょう。