大人の場面緘黙症(選択性緘黙)を考える。

2021年2月9日

学生時代に、場面緘黙症で悩む子どもたちに出会い、もともと関心があったこともあり、場面緘黙症の支援についても詳しく勉強している次第です。Twitterでは、場面緘黙症でお悩みの方と繋がることができて、多くの実体験を聞かせていただいています。

これまで場面緘黙症の子どもの支援に力を入れていましたが、大人になっても、改善ができず、仕事や社会生活でお困りの方が多数いるとのことでしたので、大人の場面緘黙症についても支援を考えたいと思います。何かしらの参考になれば幸いです。

場面緘黙症のセルフチェック

僕が以前に書いた記事です。DSM−5というアメリカ精神医学会が規定した障害や疾病の診断基準・分類を示すものがあります。これについて、まずはご自分の場面緘黙症の症状が、どのようなものか知っていただきたいと思います。

【内部リンク】場面緘黙症のセルフチェック

場面緘黙症と自閉スペクトラム

先程のセルフチェックの記事でも少し触れていますが、自閉スペクトラム症がある場合、場面緘黙症とは別物と考えますということですが、これについて、もう少し掘り下げます。

自閉スペクトラム症といっても、症状は様々です。自閉スペクトラム症と呼ばれる前は、自閉症と高機能自閉症と分けて考えられていました。

高機能自閉症とは、知的な遅れがないものの、社交性の部分で困難を感じることが多いと言われています。例えば、相手の話を聞かずに自分の話ばかりしてしまったり、相手の話に興味が示せないとき全く記憶ができず、会話にならなかったり、そういったことがしばしば起こります。

何が言いたいかというと、実は「場面緘黙症だと思っていたけど、発達障害が原因にある」ことがよくあるということです。いわゆる発達障害のグレーゾーンです。凹凸があっても、普通に生活できて、その困難に気づかない、気づいてもらえない、ということがあります。

特に、「場面緘黙症のカウンセリングなど、手を尽くしてきたのにもかかわらず、改善の兆候がみられない」という方は、これが当てはまるかもしれません。

では、どうすればいいのでしょうか。

既にかかっている主治医がいれば、発達障害の可能性はないですか?と進言してみてください。今は、心理検査も豊富にありますので、自分の凹凸について知ることができると思います。

場面緘黙症を改善したい

場面緘黙症は、不安障害の一つですが、上述の自閉スペクトラム症や統合失調症などの別の原因がある場合は、支援の仕方が異なります。

自閉スペクトラムや統合失調症については、そちらの専門機関で話を聞いてきてください。今まで行ってきたカウンセリングは無駄ではないと思いますが、脳の機能的な部分で原因があるのであれば、カウンセリングだけでは、あまり改善が期待できません。まずは、自分自身をしっかり知ることが大切です。

場面緘黙症が、大人になっても続いているという方は、「個人差があること」「早期の支援が重要であること」をよく理解してください。

場面緘黙症は、不安が根底にあるものですので、不安の感じやすさ、自信のなさのようなことが影響しています。これは、特性ですので、すぐに変わることではありません。勉強や筋トレのように継続して、少しずつ「できること」を増やしていって、不安を緩和したり、自信をつけたりすることが必要です。

認知行動療法でのアプローチ

場面緘黙症のカウンセリングでは、認知行動療法という方法で改善を図ります。

場面緘黙症は、一定の場面で話せなくなったり、動けなくなったりしますので、この一定の場面に慣れて、話せなくなる場面を減らしていけば、改善に繋がります。

また、しばらく話せていなかった環境で「いきなり話したら変に思われる……」と感じて、長期化するほどに話すことが難しくなってしまいます。認知行動療法では、この捉え方にアプローチして、不安の予期を緩和していきます。

加えて、SST(Social Skill Training)を行い、話すコツや不安を振り払うコツなどの準備をします。発表する時に原稿があれば不安が和らぐように、話す時にある程度の話し方が分かっていれば不安を緩和することができます。

以上の3つのアプローチで、支援します。

場面緘黙症と脳の機能

僕は、医師ではないので、この章においては、疑って読んでください。再度、調べてくださいね。

脳には、部分によって機能が振り分けられています。その脳の中で、扁桃体という部分が不安と関係あります。不安を感じると扁桃体が活性化します。要するに、不安を感じやすい人は、扁桃体が敏感である可能性があるようです。

とはいえ、現時点では場面緘黙症の治療に有効な薬はないようです。社交不安障害のように、抗不安薬が処方されることがあるようですが、場面緘黙症の根本的な解決にはならないだろうとのことです。

また、場面緘黙症が要因となり、うつ病などの精神疾患を患うことがあるため、その治療薬が処方されることがあるようです。

このように、現在で有効な手段は限られています。カウンセリングによって、話せるようになったという方もいれば、もう数年もカウンセリング続けているけど効果がないという方もいます。もしかすると、脳の機能障害が原因の場合は、改善することが難しいのかもしれません。

場面緘黙症と社会生活

場面緘黙症が改善されたとしても、仕事や何らかの手続き、地区の催事などの社会生活に苦労されている方がいらっしゃることと思います。コロナの影響でネットで手続きができたり、催事もなくなったりして、負担は少し減っているかもしれませんが、仕事に関してはリモートワークでも会話は必要です。

慣れている相手とは話せるけど……と就職の幅が狭くなってしまっている方も多いことと思います。SNSでも、予約の電話ができない、仕事で話せなかった、などの落ち込んでおられるような投稿を目にします。

皆さん、努力して工夫して、困難を乗り越えているようですが、心の負担は大きくなっているようです。自信のなさがあってか、バリバリ働きたいという方は稀です。しかしながら、個人的には、会ってきた場面緘黙症の方は、真面目で優しい方ばかりで、能力が高いです。凄く勿体ないとも思います。

こうした方たちが、思う存分、好きな仕事に就き、活躍できる社会になってほしいと願っています。

場面緘黙症の展望

とにかく場面緘黙症の情報は少ないです。SNSだけみると、自分も驚くほど当事者の方と繋がることができて、こんなに沢山、悩まれている方がいるのかと思います。しかしながら、研究論文は少ないですし、専門家といわれる方も少ないです。特に地方では、治療や支援の受けにくさが目立ちます。

場面緘黙症は、幼いうちからの支援が大切だと言われていますが、学校教員も知識を持っている方が少なく、無理やり話をさせようとしたりして余計に話すことが難しくなるケースもあります。

僕は、「かんもくネット」という場面緘黙症の支援団体のサイトを観たり、研究論文を読んだりして、情報を集めています。ここで、支援の大枠は知ることができますが、当事者が自身で改善を図ることは難しいとも感じます。認知行動療法にしても、専門のカウンセラーに会って、カウンセリングを受けなくてはなりません。

僕は、SNSでの皆さんの投稿にヒントがあると思って、改善した方のお話を聞いたり、悩まれている方の困難や支援方法をお聞きしたりしています。とにかく情報収集をしていきます。

最後に

結論的な情報がなくて、期待に添えずで、申し訳ありません。少なからず、自分にできることは、現時点で有効とされている認知行動療法や生活環境についての助言を行いながら、アンテナを高くして新しい情報を集めることだと思っています。また、こうして情報を発信して、幼い時期での早期発見と早期支援のきっかけになればと思います。