場面緘黙症児の「話したい」を考える【場面緘黙症】

僕は場面緘黙症の支援を細々としているわけですが、場面緘黙症児は、おおよそ不安が強く、その不安によって行動を制限・回避したりすることが分かります。

これは、場面緘黙症とともに社交不安障害を併有しているパターンです。この確率は約半数ほどにもなります。こうした社交不安が強い場面緘黙症児は『将来が不安』や『今が楽しくない』と心のうちを話します。

今回は、場面緘黙症児が抱える「話したい」気持ちに着目して、僕の考えを発信したいと思います。

話したい気持ち

場面緘黙症児は『友達と仲良くなりたい』『友達がいなくて寂しい』『意思が伝えられなくて悔しい』などの思いを持っていることが多いです。

一方で、場面緘黙症が長期化してくると、今さら話せるようになっても『話題に上がるのが恥ずかしい』『周りの反応がこわい』など、話せない状態が強化されることもあります。

こうなってくると、場面緘黙症の症状を改善させたいという気持ちが薄れてきます。学習性無力感のような諦めの気持ちも混在しているかもしれません。

とはいえ、僕が関わった上で改善した事例は、どの方も「話したい」気持ちが強かったように思います。というのも、僕のようなボランティアで場面緘黙症の支援を行っている、いわば公的な医療機関や相談機関でもない場所に支援を求める方は、おおよそ改善したい気持ちが強く、僅かな可能性に期待して、僕に辿り着いているようです。

話したい気持ちがあまりない人

「話したい」気持ちがあまりない人もいます。場面緘黙症の改善には、それなりのエネルギーと心の負担が発生します。カウンセリングを受けたり、相談機関に足を運んだりするだけでも、強い不安を感じますし、そう簡単に改善するものでもなく、時間もかかるものです。

こうした負担があり、「話せなくてもいいや」と諦めの気持ちが生起する方もいます。とはいえ、社会人になり、就職することを考えると、やはり改善しておきたいです。

学生でいうと、不登校になり、今はフリースクール、通信制高校、通信教材、通信制大学など、学習で困ることもありません。しかしながら、就職するとなると、学業以外のスキルが求められることも多く、特にコミュニケーション能力を大切にしている企業も多いです。

この意味で、「話したい」気持ちがなくても、ある程度の改善は考えておいたほうがいいというのが僕の意見です。

仕事を考える

場面緘黙症の方の共通点として、実際に口頭で話すことはできないけど、SNSやLINEなどでは会話ができるという特徴があります。

つまり、語彙力、文章構成力、文脈を読む力などの国語的な理解力は通常と変わらないレベルで発達しているということが分かります。

今は、ネットビジネスが流行しています。例えば、ブロガーです。ネット記事を書き、その広告収入で稼ぎます。また、会社が募集している記事を書いて、メールで納品するという単発の仕事もあります。

IT系の仕事は、他にもあります。プログラミングや設計の仕事などです。パソコンで仕事をして、納品する形です。会社によって、打ち合わせや依頼主との面談などもありますが、直接的に関わらなくてもいい場合もあります。

少なくとも飲食業や営業職のような接客業よりかは、負担が少なくなると思います。とはいえ、正規採用されないと安定した収入は得られません。仕事の内容、収入をよく考えて、仕事を選んでください。

話したいの先にあるもの

場面緘黙症の改善を考える上で重要なのは、「話したい」の先を意識することだと思います。臨床心理学の領域でいえば、ロゴセラピーという療法や未来展望といった概念が該当します。

つまり、自分の「こうありたい」と思う自己の未来像を意識することが大切なのです。

「話したい」が目的になってしまうと、話せない自分が嫌になってしまいます。一方で「話したい」の先にある『友達と大学生活を楽しみたい』『女子高生ぽいことがしたい』などの未来像があれば、選択肢が広がります。

例えば、友達をつくる上で、場面緘黙症の症状が出てしまいやすい環境では、友達づくりが難しいです。しかし、意外にも「SNSで知り合った場面緘黙症の友達となら話せる」という方もいます。この方は、自分で「この人となら話せそう」と友達になりたい人を選んで、実際に友達になったわけです。

話せなくても、SNSやLINEで仲良くなり、実際に会ってみると話せたという方がいます。実は、これは僕の助言の一つです。

つまり、「話したい」相手を決めることで、話したい意欲を高め、かつ不安を軽減したわけです。そして、「大学生活を楽しむ」という目的に対する大きな一歩を踏み出せたわけです。

勿論、この裏ではカウンセリングを行い、初めて会ったときの自己紹介の練習や待ち合わせの練習などをして、不安を軽減しています。

このように「話したい」という意識から少し離れた視点で、自分の「こうありたい」未来像を考えてみてください。きっと話したい意欲が高まります。自分一人で行動に移せない場合は、カウンセラーや家族の協力を得て、一歩を踏み出してみてください。

結果的にこの一歩が場面緘黙症の改善に繋がります。悩みを共有できる友達の存在、一歩を踏み出せた経験、勇気を出す感覚など、自分にとっての新しい刺激が徐々に体験として身についてきます。

最後に

話したい意欲が高い人は、ぜひSNSで練習をしてみてください。自分から場面緘黙症に理解のある人と出会い、「友達になってください」など、交流を始めてください。勇気を出す一歩が大切です。

■SNSでの出会いには十分に注意してください。悪質な利用者もいます。僕がカウンセリングをする場合は、まず近場で同性の友達をつくり、直接的に会うときは同行させてもらう、個別でカウンセリングを行うなど、配慮を行っています。特に未成年者は、会う前に保護者にも伝えます。

実際に会わなくてもコミュニケーションの練習にもなりますし、それにより不安の軽減にもなるので、場面緘黙症の改善には効果的なステップだと思います。