場面緘黙症の悩み「友達がほしい」【好意の心理学】

2021年2月9日

場面緘黙症の方は、不安や緊張と闘いながらも、友達がほしいと願う方が多いようです。通常、不安や緊張から逃げたい気持ちが強く、友達づくりどころじゃないと思うところです。

しかし、SNSで場面緘黙症の方と交流をしていると、「友達がほしい」「一緒に買い物をしたり遊びに行きたい」「学校生活を楽しみたい」という理想を語られる方が非常に多いです。

今回は、心理学の視点から、少しでも友達づくりの役に立つ情報を提供できればと記事を書かせていただきます。ぜひ、最後までご覧ください。

場面緘黙症の方の「友達がほしい」に応えたい

場面緘黙症の方が友達づくりをする上で、最も弊害となるのは意思表示が難しいことです。おそらく学校でも優しく接してくれる人はいて、普段から近くでその人の雰囲気を見て、「あの子と仲良くなりたい」と思うことはあるのではないでしょうか。

僕は、場面緘黙症の当事者ではないので、事足りない部分はあると思いますが、心理学の知見から有益な情報を提供したいと思います。

好意を伝えましょう

心理学で友人関係を語る上で、重要な概念があります。それが「好意」です。よく恋愛心理学でも扱われていますが、今回は性別に関係なく、好意を得ることで友達になれる可能性がグンと高まる話をします。

好意とは、相手のことを好む意向のことです。まず相手の意識に自分の存在を浮上させて、好意や信頼がついてくると、友達という関係になれるわけです。

仮に友達を「安心して話ができて、遊びに行けるような関係」と定義します。この友達をつくるためにできることを考えましょう。

場面緘黙症の方は、学校で困ったりしていると、優しいクラスメイトが手を差し伸べてくれたりします。しかし、その親切に対して感謝を言葉にすることができません。そこで「本当は、ありがとうが言いたいのに……」と悲しい気持ちになってしまいます。

僕は、これは凄いチャンスだと思います。相手がきっかけをつくってくれたわけです。まずは、この親切に対して、ちゃんと感謝を伝えましょう。この感謝の伝達は、自分の好意を相手に伝えることにもなります。

このとき、感謝を言葉で伝えられなくても大丈夫です。LINEでもSNSでも構いません。手紙ならなお良いと思います。「いつも助けてくれてありがとう」と伝えてみてください。

相手は話せない貴方を知っているわけなので、この行動を意外だと思うかもしれません。しかし、この行動によって、相手は貴方のことを意識することになります。そして、次の段階です。

きっと優しいその人は、想いを伝えたあとも親切を施してくれることでしょう。それも前以上の頻度になるかもしれません。親切を施されると、人は親切を返さなくては、と複雑な気持ちになることが知られています。

そこで、「いつもありがとう」の手紙とともにお菓子などを包んで、渡してみてみましょう。机の引き出しや下駄箱に入れておいてもいいかもしれません。これらの親切に対する感謝を伝える行動によって、貴方の好意はしっかり相手に伝わります。

単純接触効果

心理学では、単純接触効果が有名です。相手と交流する回数が多いほど、好意が得られやすいという効果です。この単純接触効果を意識してみましょう。

あまりガツガツしてしまうと、逆効果にもなるので、何となく近くにいるくらいでいいと思います。感謝を伝えるLINEやSNSでのやりとりによって、それなりに会話ができる関係にはなっていると思います。

一週間に一回くらいのやりとりがあるのが好ましいと思います。何度かやりとりを繰り返せば、相手の中に貴方の存在がアピールできて、好意を得られやすくなります。

自己開示

人は、他者から話しにくい情報を開示された場合、それと同様の情報を開示しやすくなります。これだけ聞くと、相手を心理学的に操ろうとしているみたいに思えなくもないですよね。でも、本質はそうではありません。

僕は、友達という関係は信頼があってこそ成り立つのだと思うのです。場面緘黙症というのは、ほとんどの人が知りません。何となく「話せない病気かな」と思っている人も多いです。まずは、貴方の悩みの種である場面緘黙症について相手に開示してみましょう。

「本当は友達がほしいけど、学校に行くと話せなくなってしまう」と正直に伝えてみてください。できれば、「直接は言えないけど、友達になってほしい」と伝えられたら最高です。

友達になれたら

自己開示をした場合、相手が優しい人であれば、戸惑いながらも友達になってくれるはずです。ただ、貴方自身も勇気を出さなければいけません。友達になるということは、学校ではコミュニケーションを取りますし、遊びに行ったりもします。

もし、「遊びに行こう」と言ってくれたら、安易に断ってはいけません。もし、どうしても行けない場合は「行きたい!でも、勇気が出ない」と正直に伝えましょう。

カラオケや人の多い場所といった場所は、難しいと思うので、そういったことを理解してもらうことも大切です。しかし、遊びにいくのに相手に色々と考えさせてしまうのは、相手も疲れてしまいます。できり限り貴方が努力をして、その努力も感じてもらった上で、遊べる関係性が築けるといいかと思います。

もう一つ大切なことをお伝えします。「友達になれたら」を想像して楽しんでください。不安もあると思いますが、それ以上に、貴方が望んでいた友達です。友達になれたら、どこに行きたいか、何がしたいか、そういった楽しい妄想を膨らませてください。

それが勇気となって、力となって、貴方の背中を押してくれるはずです。

相手のことも考える

相手は、貴方以外にも友達がいます。学校で過ごす上では、その友達とばかり一緒に過ごすかもしれません。そこで複雑な気持ちになり、自分から離れていってはいけません。

もし、可能であれば、友達の友達とも友達になりましょう。勿論、合わない人もいるので、無理はしなくていいです。貴方が仲良くなりたいと思うのであれば、LINEやSNSでいいので、友達に協力してもらって、「自分も◯◯ちゃんと仲良くなりたいから協力してほしい」と伝えてみてください。

話すことが難しくても、同じ輪の中でいることで、信頼関係が築けると思います。また「友達になってくれてありがとう」と感謝を伝えることを忘れないでください。誕生日プレゼントをあげたりするのもいいかもしれません。

場面緘黙の症状の重さ

場面緘黙症の症状が重い場合は、感謝を伝えること、自己開示などを行うことすら難しいです。LINEやSNSなら大丈夫という方が多いようですが、それは見知らぬ人に対しては大丈夫だけど、学校のクラスメイトとなると、不安や緊張が強く現れるかもしれません。

頷きや首振りもできない人もいます。緘動があって、ガチッと身動きができなくなる人もいます。このような場合、友達づくりは難しいですよね。段階的に考えると、まずは場面緘黙症の改善が先だと思います。

せめて、LINEやSNSで会話ができたり、想いを伝えられるくらいには、改善できると友達づくりに注力できると思います。

最後に

通常、友達は自然にできるものです。趣味や部活同じだったりして、特に友達づくりを意識しなくても、気がついたら友達という関係になっていることが多いです。

しかしながら、場面緘黙症という弊害があること、友達というハードルが上がっています。貴方自身も大変ですが、相手としても接し方が分からなくて戸惑うことでしょう。

ですから、貴方が勇気を出す必要があるのです。最初だけ勇気を出すことができれば、優しい子たちはしっかり受け止めてくれるはずです。まずは貴方が動き出さなければ始まりません。

厳しいことを言うようですが、僕は頑張ってほしいのです。無理はしなくていいです。SNSで場面緘黙症の子同士で友達になって、会話の練習をするのも大切です。場面緘黙症の改善には、段階的な練習が必要なのです。まず、できることから始めてみてください。