無気力型の不登校に関する考察

2021年2月9日

こんにちは。中津です。

今回は、「無気力型の不登校に関する考察」というテーマでお話していきます。不登校児の保護者の方読んでいただきたい記事となっています。

無気力型の不登校

2019年度の文部科学省調査によると、小中学生の不登校は約18万件であり、増加傾向であることがわかります。不登校の主たる要因として、最も多いのは「無気力・不安(41.1%)」です。

無気力

無気力については、目標がない、学習性無力感を抱いている、他の問題があることで目標に意識が向かない、という理由が考えられます。不登校は小学1年生〜中学3年生にかけて、学年が上がるごと増え、中学3年生が最も多くなっています。中学生は、高校受験や将来のことを考えるようになり、より自意識が強くなる時期です。自分への自信のなさや将来のへの希望のなさが大きく影響しているように感じます。

不安

特性的に不安を感じやすい人がいます。これにより、社会生活に支障が出る状態を、臨床心理学では不安障害と言います。特に不登校に至る子どもは、社交性不安障害という社会的な交流に対する不安が強く、社会生活に支障が出る不安障害である場合が多いように感じます。つまり、学校という社会集団での交流に対して不安や恐怖のような感情を抱いているということです。

無気力型の不登校に関する考察

無気力型の不登校に至る背景には、社会の影響と心の問題があると考えています。

僕が考える社会の影響というのは、学歴社会、忙しさ、楽しさの欠如です。学歴社会は皆さんも周知の事実だと思いますが、日本では勉強ができて、良い大学を出て、良い会社に就職することが良しとされています。これは、社会の流れを汲んでおり当然のことなのですが、子どもにとっては負担でしかありません。

良い高校に行けない場合、若くして未来への不安を抱くことになります。ましてや他の子どもと比較される場面は小学生から増え始め、小学生で100点ばかり取れる子を見たり、算数の分数で躓いたりして、自分は勉強できないんだと無気力に至る子もいます。

次に、忙しさと楽しさの欠如です。小学生で習い事や塾に通う子が増えています。地方でも5年生や6年生に手を上げてもらうと半分以上は何かしらの習い事をしています。小学校の放課後、子どもたちは足早に「今日は習い事がある」と帰っていきます。僕が小学生の時は、帰宅してから校庭に戻り、友達とサッカーをしたりして遊んでいたものですが、今の校庭は静かなものです。小学校の先生と「小学生の忙しさ」について話をしていたとき、小学生の先生は言っていました。「子どもたちの遊びや家族との会食などが年々減っている」と言うのです。

連絡帳には「習い事だった」という話ばかりが書かれているそうです。勿論、習い事を楽しんでいる子もいます。その一方で、英才教育とも言いましょうか、英会話、ピアノ、水泳、体操などを親にやらされている子も多いそうです。最初は、楽しかったものの、楽しさが徐々になくなっていき、何となく続けている子もいます。

小学生の先生は、酷く忙しい現状があります。心の余裕がなく、子どもを統制し、少しでも仕事の負担が減るように振る舞います。保護者もそうです。日本の経済事情の悪化に伴い、子どもに割く時間が減っています。子どもの将来のために習い事をさせているはずが、保護者も子どもも忙しい日々になっています。

産業としても「時短」や「デリバリー」、そういった商品やサービスは非常に人気になりました。日本社会の忙しさは、もはや問題とも言えそうです。

小学6年生の男の子が「毎日、面白くない。面倒くさい」と語ったときがあります。「良くないことがあった?」と聞くと、「何もないけど、毎日が楽しくない」言うのです。「じゃあ、何がしたい?楽しいと思うことをやろうよ」と言うと、「何もしたくない。動画を見てるのが一番楽しい」と言いました。

これを掘り下げていくと、この男の子は学校や友達、家庭での楽しい思い出がないということがわかりました。物心がついたときから、習い事をして、家庭では皆のご飯を食べる時間もバラバラで、旅行に行っても楽しい話もないし、家族成員が別々のところで活動している感覚が抜けなかったようです。

学校、習い事、寝る、これで一日が終わっていきます。上手に家族関係を築いている家庭もあるものの、こうした無気力に至る小学生がいるのは事実です。僕たちのように大人になると、仕事で一日終わって行きますが、遊びには自由があり、誰かを誘って夜でも遊ぼうと思えば遊べます。しかし、子どもにその選択肢はありません。

子どもにしては、この先、この生活がいつまで続くのか、凄く長く感じることでしょう。英才教育や習い事悪いとは言いませんが、子どもの楽しさをしっかり考えてあげることは必要だと思います。

中学生では、学習性無力感が顕著に現れます。学習性無力感は、努力しても成果が出ないことで、無力感を生じます。諦めてしまい、頑張ることすらできなくなる状態のことです。

中学生初めての定期テストで、数学が0点に近い子がいました。授業の内容が理解できなかったと言います。小学校の算数の授業で、4年生頃からついていけなくなりました。小学校の授業はハイペースで進みます。一箇所で躓き、復習をする習慣もない子にとっては、そこから追いつくことが難しいのです。

その子は、小学校では塾には通っていませんでしたが、中学生になって塾に通うようになりました。しかし、塾でも理解に時間がかかったこと、周りの子たちと差があることを知ったことで、もう手遅れだと感じてしまい、塾にも通えなくなり、学校でも授業を聞かなくなってしまいました。酷く劣等感を抱き、「僕は勉強できないから」と考えることを放棄する言動が顕著でした。

無気力には、これら以外にも様々な背景があると考えられます。しかし、僕としては、まだまだ可能性のある子たちですから、非常に勿体ないと思うわけです。無気力というとカウンセリングを受けるまでの状態ではないと思われる方が多いと思いますが、言葉のやりとりで、子どもたちの不登校の解消はできると思っています。

僕の運営するフリースクールでは、無気力の不登校など、こうした子たちに来てもらいたいです。一緒に色々なことに挑戦して、一緒に目標を見つけて、そこに向かう助走の仕方も考えたいと思います。

最後に

無気力型の不登校は、根が深く、複雑です。ぼんやりしか見えない社会の在り方の中で、どのように振る舞い生きていくのか、これにアプローチして、また未来に向けて発進できるように支援していきたいと思います。

不登校,臨床心理学

Posted by Cozy