【小中学生の不登校】心の状況で考える支援機関の選び方

2021年2月9日

こんにちは。僕は、三重県松阪市でカウンセリングルームを運営しています。大学院で学校臨床心理学を学び、高校教員を経験しています。その後、個人開業という形でカウンセリングを始めました。

今回は、小中学生の不登校児がいらっしゃる保護者の方へ向けて記事を書かせていただきます。塾で勉強させるのがいいか、教育支援センター(適応指導教室)やフリースクールで活動させるのがいいか、と悩んでおられる方のヒントになれば幸いです。

子どもの心の状況を考えてみましょう。

全国で小中学生の不登校は、約140000人いると言われています。少子化によって子どもの数は減ってるのにもかかわらず、不登校の数は増加傾向にあります。不登校の原因でイジメが注目されますが、割合でいうと数%です。イジメに満たない友人関係の問題、言い合いの喧嘩や友達ができないということが原因になる方が多いのです。

不登校といっても、小学生と中学生では、支援の仕方が異なります。まずは、子どもの心の状況を捉える上で、子どもの発達段階をよく知ることが大切です。不登校の数は、小学1年が最も少なく、中学3年生まで増加傾向にあります。

小学生の低学年の場合

小学生の低学年の場合、友達との関係が上手くいかない、先生がコワイ、学校での集団活動が苦手、などの理由が多い傾向があります。心の発達が未熟ですから、自分を鼓舞して、我慢して頑張るんだという思考には及びにくいです。どうしても人見知りで大人しい性格の子は、周囲の子たちに合わせられなくて、学校に行くことに対して、心のブレーキがかかってしまいます。

小学生の高学年の場合

小学生の高学年の場合、男女での心の発達スピードに多少の違いがあります。男子で言えば、反抗期に入っていきます。いじめっ子気質の子がいたり、大人に抵抗心を持つ子が出てきます。心が荒れてくると、疲弊したり、親子関係、友人関係でも上手くいかず、大きな負担になっていきます。また、大人しい子でも、学習で躓いたり、自信が持てなくなったりして、不登校になる子は増加しています。女子で言えば、男子よりもしっかりしている子が多いです。その一方で、自分自身に意識が向くようになり、勉強、容姿、性容認の部分で悩む子が増えます。

中学生の前半

小学生から中学生になり、今までとは異なる環境で新しい人間関係を築いたり、難しくなる勉強にも苦戦する時期です。これは、中1ギャップともいわれ、中学生での不適応に至りやすい時期でもあります。

この時期では、周囲の影響を受けて、非行や暴力などの生徒指導案件も爆発的に増加します。親や教員への反抗、喫煙、バイクの無免許運転など身体に影響を及ぼす行動が増えます。女子でも、自傷行為や後先を考えない性交渉、薬物乱用が増えてきます。これは、知識がないという問題ではありません。どちらかというと、自尊心が低く、自分を大切にできない状況まで、心にダメージを負っているからです。

中学生の前半では、学業、友人関係、親子関係の問題による不登校が多いです。特に親子関係は厄介です。学業と友人ように代わりがなく、向き合い続けるものだからです。親からの虐待、虐待までいかない毒親、過干渉など、自分に強く意識が向いている中学生の時期は、親のことで悩みたくないという子がほとんどです。

これらに当てはまらないから自分の家庭は大丈夫だとは思わないでください。おそらく、今の親世代が中学生だったときより、今の中学生は心の弾力性がありません。昔でいえば、些細なからかいでも、教員に怒られて、終わっていたことが、今はそうはいきません。怒ればいいという話ではなくて、些細なことでも、これまで以上のダメージになるということです。簡単に言えば、防御力が低くなっているのです。

中学生の後半

最も不登校が増える時期です。非行だけでなく、学業、友人関係、親子関係の不登校が多いです。高校受験を理由に、再登校する子もいますが、ほとんどは不登校のまま、通信制や定時制の高校やレベルの高くない高校へ進学していきます。ひきこもりのまま、大人になる子もいます。

ある意味、しっかり学習支援をすることが不登校の予防にもなります。とはいえ、親にはそんな時間もないし、過干渉もよくない。となると、塾に行かせておきたいですよね。友人関係や親子関係の問題は、親には伝えにくいものです。特に中学生時期で、友達ができない、親の過干渉があるというのは隠したい事実です。そこで、第三者のスクールカウンセラーなどが力発揮します。

中学生の時期で、子どもが選ぶ相談相手にスクールカウンセラーや養護教諭(保健室の先生)が増えてきます。勿論、親に相談する子もいますが、親に話しづらいことも多くて、重大な内容については、親に相談されていないと推測できます。

不登校になったあとの支援支援

今回は、学習支援ということでも学習塾も選択肢に入れて、学習塾、教育支援センター、フリースクールを挙げて考えてみます。

学習塾での支援

勉強を頑張りたいなら塾ですよね。ですが、不登校になったばかりでは、あまりオススメできません。不登校の原因にもよりますが、心が不安定な状態では、勉強に意識を向けることは難しいことでしょう。例外的に、不登校になる前から既に学習塾に通っていて、今後も継続ができそうなら、続けていいと思います。

学習塾というのは、学習支援を担う場所です。逆に言えば、それ以外の部分は支援できません。塾講師の方でも、優しい方がいて、その方が偶然にも相談相手になっていることもありますが、仕事として心の支援をすることはありません。

また、大きな塾は講義形式で、大勢の生徒が同時に講義を聞き、勉強しています。所属する学校の近くの塾だと、学校が同じ生徒がいたりして、不登校で学校に行っていないわけですから、通いづらく感じてしまいます。一方、個人指導塾は、少人数指導ですので、同じ学校の生徒を一緒になる確率は低くなります。

塾とは少し違いますが、家庭教師はもっと個人的な指導をしてくれます。また、仕事内容に含まれないとはいえ、個人的なやりとりの中で、相談相手にもなりやすいと思います。

教育支援センター(適応指導教室)での支援

教室支援センターは、適応指導教室ともいわれ、不登校の小中学生が通うことができる公的な教育機関です。支援員は、ほとんどが学校教員です。臨床心理士が非常勤で相談に乗ってくれたりして、心の支援については充実しています。様々な境遇の児童生徒がいて、学習の面では学校や塾のようにガッツリ指導というわけにはいきません。

どちらかというと、心の支援がメインで、子ども居場所として機能しています。ここで、心の支援を受け、心の状態が整ったあと、学校への再登校を目指すことが目的となっています。とはいえ、急かされるようなことはなく、あくまで子どものペースに寄り添ってくれる形になっています。

勉強したい子は、日中は教育支援センターに通い、放課後に学習塾に通う子もいます。

フリースクールでの支援

フリースクールは、NPO法人が運営する比較的大きなフリースクールと、個人で運営している小さなフリースクールがあると考えてください。

大きなフリースクールは、教育支援センターと同様に心の支援、学習支援、イベントなどがあります。規模によっては、子どもの数も多いので、共同生活が苦手な子は、ちょっと居づらいと感じることもあります。遠足や旅行を計画してくれたり、イベントが好きな子どもや色々な経験をさせてあげたいと考える保護者にオススメです。

小さなフリースクールは、心の支援と学習支援がメインです。個人指導塾の不登校児の特化版です。塾とは違い、日中に通うことができ、学校の進度や子どものペースに合わせて、学習支援をしてくれます。個人で運営しているので、自由度が高く、また子どもの数も少ないので、ゆっくり休みながら勉強も見てもらいたいというご家庭にオススメです。

◆参考記事↓

心の状態と支援施設

小学生は再登校できる可能性が高いです。心が未熟ゆえの不登校の場合、教育支援センターやフリースクールがオススメです。ここで、学校より少ない人数での集団活動を経験して、慣れてくれば、週に数回ずつ学校に通い、たまに教育支援センターやフリースクールに通うなど、相互に利用する方法もできます。学校の授業は出られるけど、行事に出られないという子もいるので、ゆったり過ごせる場所を確保しておくのいいでしょう。小学生の塾は、個人塾や公文のような小規模の塾がオススメです。こちらも少ない人数で集団活動の練習ができます。

中学生では、非行のような不登校の場合は、教育支援センターやフリースクールに来る子は、ほとんどいません。大きな事件を起こしたり、育児放棄されたりして、保護施設に入ることが多いです。また、フリースクールは公的な機関ではないので、他の子どもに悪影響が及ぶ危険を考慮して、入会を断ることもあります。この点の詳細については、各フリースクールに問い合わせてみてください。

僕は、教育支援センターでボランティアをしたこともありますが、そこでは小学生と中学生が仲良く遊んだり、勉強を教えたり、兄弟姉妹のような関わりも見え、互いに良い影響があると感じました。思春期ということもあって、男子と女子で少し距離があったりもしますが、特に悪い雰囲気ではなく、女の子は女の子同士で過ごして、平和な空間になっていました。僕は、バランスを見て、男子とはスポーツをしたり、外で遊んだり、女子とは折り紙をしたり、男性アイドルの話をしたり、子どものお兄さん的な立場にいました。

中学生では、やはり高校受験を意識するようになり、教育支援センターやフリースクールで、心の発達が進むと、中学校と連携を図り、テストだけ受けに行ったり、他の生徒がいないときに登校して、先生に進路指導受けに行ったり、学校との行き来を練習します。3年生にもなると、それにも慣れてきて、「明日は、学校に行きます!」「明後日はこっちに来ます!」と自分で判断して、登校するくらいになっていました。

勿論、全く登校できない子もいますが、担任の先生に来てもらって、進路指導を受けたりすることもあったり、わりと柔軟に対応できる場合もあるので、学校との連携ができて、登校しようと思えば登校できるという環境が作れるので、いきなり再登校を目指すのではなく、教育支援センターやフリースクールに通いながら、再登校を目指すのも大いに効果的だと思います。

最後に

子どもが不登校になって、どうすればいいのか分からなくて焦ってしまう気持ちはよく理解できます。その場合は、スクールカウンセラーや教育支援センター、フリースクール相談してみてください。子ども心の状態に応じた支援方法を提案してもらえることと思います。

また、そういった場所に通わずに家や塾で勉強して高校進学を目指すのも、ご家庭の判断に間違いはないと思っています。とはいえ、相談することで見えてくることもあると思うので、教育支援センターやフリースクール通わないとしても、相談だけでもしてみるといいかもしれません。

参考になる記事

不登校,臨床心理学

Posted by Cozy