ボウルビィの愛着理論【公認心理師試験対策】

2022年5月8日

愛着理論を詳しくわかりやすく解説します。この記事を読むだけで愛着理論の大枠を理解することができるので、最後まで読んでみてください。

愛着理論とは

愛着理論は、ジョン・ボウルビィ(Bowlby,J.;1907~1990)が『愛着と喪失(1969)』の中で扱った理論です。

ボウルビィは、愛着を「乳幼児と母親との間に生起する情緒的結びつきである。」としています。

ボウルビィは、母性剥奪(Maternal deprivation)を言及したあとに、愛着理論を提唱しました。

母性剥奪(Maternal deprivation)

当時、第二次世界大戦によってイタリアの戦争孤児が急増しました。終戦後、孤児の発達や精神状態に関する問題が示唆されます。当時は、孤児院や収容施設における施設病ではないかと思われていました。

ボウルビィは、これを問題視したWHOに依頼された形で『母性的配慮と精神衛生(1952~1967)』を発表します。これは、乳幼児の発達・人格形成に関する159本の論文をまとめたメタ研究です。

この研究においてボウルビィは「乳幼児と母親の持続的で幸福的な母子関係が子の精神衛生に必要であり、これを欠いている状態を『母性剥奪』と呼ぶことにする。」としました。

ボウルビィの愛着理論

ボウルビィは、母性剥奪を示唆したあと「なぜ母性剥奪が子の人格障害の要因となるのか」の答えを追求し続けました。

当時は、精神分析が主流で、ボウルビィもアンナ・フロイトやメラニー・クラインに直接指導を受けた精神分析家でした。

しかしながら、ボウルビィは精神分析の理論において母性剥奪の問題は解決できないと感じ、行動生物学の視点から母性剥奪を再考し始めました。

これによりボウルビィは「愛着は、環境的に安定した本能的行動である。」と考えたのです。

「環境的に安定した」というのは、生物学において人間という種が殆ど例外なく、生まれながらにして持っている特性であることを意味しています。

愛着行動

愛着行動はストレスがある状況下において乳児がとる行動を指します。ボウルビィの愛着理論における「愛着は本能的行動である。」という示唆から考慮されています。

愛着行動には、①発信行動②定位行動③能動的身体行動、があります。

①発信行動

発信行動は、乳児が泣いたり笑ったりすることを指します。発達上可能な行動の中で、母親に対して自分の欲求を伝えるために必要な行動です。

②定位行動

定位行動は、乳児が接近したり後追いしたりすることを指します。母親を求めるような自発的な行動です。

③能動的身体行動

能動的身体行動は、乳児のよじ登りや抱きつきを指します。定位行動よりも母親との密着を求めます。

アタッチメントの発達段階

①非弁別的な社会的反応性の段階

親を特定しておらず、広く人に対して定位行動や発信行動を行う時期です。(生後1カ月未満)

②弁別的な社会的反応性の段階

親と他の人を区別して認識し、定位行動や発信行動も親に対するものと他の人に対するもので、分けて行うようになる時期です。(1ヵ月〜6ヵ月)

③能動的主導性による接近と接触の段階

移動することができるようになり、これまで泣いたり、抱っこを求めたりしていた受動的なアタッチメントが自分から接近や接触をするなど能動的になります。また親を安全基地として捉え、離れて行動する場面がみられるも、分離不安があるために親から完全に離れることには抵抗を示します。(6ヵ月〜3歳頃)

④目標修正的なパートナーシップの段階

アタッチメントをしない場合でも、親からの愛情を感じるようになり、親の行動や目標に応じて行動を修正します。アタッチメントの数は年齢に応じて減少していきます。(3歳以降)

愛着理論のその後

Bowlby,J.の愛着理論は、研究者の間で注目され、Ainsworth,M.D.S.のストレンジ・シチュエーション法Harlow,H.F.の代理母実験に繋がっていきます。また、Mahler,M.の分離ー固体化理論についても知っておいてください。

↑リンクを貼ったので、読んでみてください。