ソーシャルサポート(Social Support)【公認心理師試験対策】
ソーシャルサポート
ソーシャル・サポート(Social Support)とは、社会的支援のことで、社会心理学の領域で発展してきました。
公認心理師試験レベルで言えば、ソーシャルサポートは、①道具的サポートと②情緒的サポートの2つで構成されていることを前提に回答できればよいと思います。
しかし、近年のソーシャルサポート研究では、①道具的サポート、②情緒的サポート、③情報的サポート、④評価的サポートの4つが考慮されるようになってきました。
Antonucci et al.(2000)によれば、①道具的サポートは労力や金銭といった有形の支援のこと、②情緒的サポートは共感や愛着といった精神的な支援のこと、③情報的サポートは問題解決に必要な情報や知識の提供のこと、④評価的サポートは肯定的な評価をして受け入れること、とされています。
ソーシャルサポート研究
ソーシャルサポート研究では、これまで精神的健康との関連が示されてきました。特に情緒的サポートは精神的健康との関連が強くみられるとされています。
支援者の数で検討された研究もあり、要するにソーシャルサポートの数や量が多いほうが、抑うつ状態を低減する効果があると示唆されました(Brugha et al., 1993)。
一方で、ソーシャルサポートは単に多ければ良いというわけではないということが指摘されました。
Nader,A. & Fisher,J.D.の自尊心脅威モデルでは、支援を受ける側の者は、支援を受けることで自身の課題解決能力の欠如が目立つ場合、自尊心が低下し、支援を受けることに対して回避や防衛が起こることがあること、援助者を否定的に評価し、拒否することがあるとされています。
ソーシャルサポートの効果
ソーシャルサポート研究を概観すると、精神的健康や抑うつとの関連のほか、様々な効果が示されています。
田中ら(2019)は、緑内障患者に対してソーシャルサポートとQOLの関連を検討し、後期群においては、ソーシャル・サポートが充実している患者ほど、QOL(Quality of Life)が高かったことを示しています。
野澤ら(2019)は、ソーシャルサポートによる母親の育児ストレスへの影響を検討しており、保育士や友人、父親、母親の実親、母親の義親のソーシャルサポートが育児の負担感や不安感を低減することが示されています。
このようにソーシャルサポートの研究は、支援を施す側と受ける側を変えたり、何に影響するかを変えたり、ソーシャルサポートの内容を精緻化したりして、細かく研究が拡がっています。
参考引用文献
- Antonucci, T. C., Lansford, J. E., & Ajrouch, K. J. (2000).Social Support. In G. Fink (Ed.), Encyclopedia of Stress. New York: Academic Press.
- Brugha, T. S., Wing, J. K., Brewin, C. R., MacCarthy, B., & Lesage, A. (1993). e relationship of social network decits with decits with decits in social functioning in long-term psychiatric disorders. Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology, 28(5), 218–224.
- 田中 健司 , 岩瀬 愛子 , 水野 恵 , 宇田川 さち子 , 柏倉 秀克緑(2019)内障患者のQOLとソーシャル・サポートの関連 日本視能訓練士協会誌 48(0), 35-45.
- 野澤 義隆 , 大内 善広 , 萩原 康仁(2019)サポート活用効力感の相異によるソーシャル・サポートの育児ストレスへの影響の検討 心理科学 40(1), 1-12.