ADHD(注意欠如/多動性障害)【公認心理師試験対策】

2021年3月20日

ADHDとは

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は、注意欠如/多動症障害という発達障害です。アメリカ精神医学会が規定する診断基準であるDSM−Ⅳでは、「注意欠陥/多動性障害」と呼称されていましたが、DSM−Ⅴになり「欠陥」という呼び方は相応しくないということから「注意欠如/多動性障害」となりました。

ADHDの症状

ADHDは「活動に集中できない」といった不注意、「じっとしていられない」といった多動症、「深く考えずに行動する」といった衝動性が特徴です。

学齢期でいえば、先生が説明していても友達に話しかけたり、個別で課題をする時間でも歩き回ったりします。大人になっても、部屋を片づけられなかったり、頻繁な忘れ物、火や電気を消し忘れたりするなど、仕事や家庭での不注意による弊害があり、生きづらさを感じることもあります。

ADHDの診断

ADHDの診断は、アメリカ精神医学会が規定するDSM-V(精神疾患の診断・統計マニュアル)に記載されています。

引用:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引

A.(1)不注意および/または(2)多動性および衝動性によって特徴づけられる。不注意および/または多動性ー衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの。

(1)不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヵ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。

注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。

  • 学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする。
  • 課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である。
  • 直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える。
  • しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない。
  • 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
  • 精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。
  • 課題や活動に必要なものをしばしば失くしてしまう。
  • しばしば外的な刺激によってすぐ気が散ってしまう。
  • しばしば日々の活動で忘れっぽい。

(2)多動性および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヵ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。

注:それらの症状は、単なる反抗的態度、挑戦、敵意などの表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。

  • しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、または椅子の上でもじもじする。
  • 席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる。
  • 不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする。
  • 静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない。
  • しばしば「じっとしていられない」、またはまるで「エンジンで動かされているように」行動する。
  • しばしばしゃべりすぎる。
  • しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう。
  • しばしば自分の順番を待つことが困難である。
  • しばしば他人を妨害し、邪魔する。

B.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。

C.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況において存在する。

D.これらの症状が、社会的、学業的、または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。

E.その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない。

■公認心理師試験でいえば、不適切な養育や虐待などによる愛着障害傾向にある子は、周囲の注目を仰ぐためにADHDの症状に似た行動をとることがあるので注意です。

また、診断には「Conners3」「CAARS」といった心理検査、脳波を調べるものなどが用いられることがあります。こうした検査や保護者・教師などの周りの人から聞く生育歴なども参考して診断されます。

ADHDの治療

ADHDの治療には、医師によりメチルフェニデート徐放剤やアトモキセチンなどの薬が処方されます。これによりADHDの症状を緩和することができます。しかしながら、ADHDは発達上の障害であることから完治はできません。

公認心理師に求められる心理支援としては、日頃の心理的ストレスをカウンセリングにより軽減させたり、心理教育や対人関係療法のよる支援、スクールカウンセラーや産業カウンセラーであれば、環境調整を支援するなど、多岐にわたります。

ADHDによる生きづらさが、うつ病や統合失調症といった精神疾患の原因になることもあります。この点についても考慮しながら支援にあたることが期待されます。

大人のADHD

ADHDは、軽度の場合、幼児期や児童期においては「やんちゃな子」と解釈されることもあり、発見されづらいとされます。高校生や成人になって、周囲とのギャップに気づき、診断を受けるケースもあります。

診断には「症状が12歳までに認められること」とありますが、ADHDを疑わずに生きてきて、思い返してみれば、症状に当てはまることが多数あるということで診断を受けることがあるようです。

また大人のADHDに対する社会的認識が増してきたのは、最近の話です。その意味でも、生きづらさを感じている人が多くいて、注目されています。