自閉症スペクトラム【公認心理師試験対策】

2021年6月3日

自閉症スペクトラムとは

自閉症スペクトラムは、先天的な脳の機能障害で、これまでは「高機能自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」と細かく分類されていましたが、アメリカ精神医学会が規定する診断基準であるDSM−ⅣがDSM−Ⅴに改定された際、自閉症として一連の症状として捉える意味で「自閉症スペクトラム(ASD;Autism Spectrum Disorder)」と呼称されるようになりました。

■しかしながら、細かく分けて考えた方が支援を施しやすいということもあり、あえて分けて呼称する人もいます。

自閉症スペクトラムの症状

症状としては、①社会的コミュニケーションの困難、②行動や物事へのこだわり、があります。

①社会的コミュニケーションの困難で言えば、幼少期から人と目を合わせない、他者に興味を示さない、相手の話を最後まで聞かない、相手の気持ちを感じとれない、などの特徴が語られます。これにより、対人関係が上手く構築できず、生きづらさを感じることがあります。

②行動や物事へのこだわりで言えば、自分の行動を疲れ切るまで熱中して続けたり、興味のある物事について調べ尽くしたりして凄く細かいことまで知っていたりします。この特徴については、長所にもなるため家庭や学校での理解が得られることが大切です。

■自閉症というと、知的障害(精神遅滞や知的な遅れ)があるとされていましたが、今では分けて考えられています。もともと高機能自閉症やアスペルガー症候群は、「知的な遅れがないこと」が特徴だったので、自閉症スペクトラムとまとめられたことによって、知的障害は分離されました。

これらの特徴から学校や社会に馴染めず、生きづらさを感じたり、うつ病や統合失調症などの精神疾患を併発することがあるため、早期の発見・支援が重要になります。

自閉症スペクトラムの診断

自閉症スペクトラムの診断基準は、アメリカ精神医学会が規定するDSM−Ⅴに記載されています。下記などの条件が満たされたときに診断されます。

  • ①複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
  • ②行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さなど)
  • ③発達早期から①②の症状が存在していること
  • ④発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  • ⑤これらの障害が、知的能力障害(精神遅滞)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと

■自閉症スペクトラムとADHDは、似ているようにも思えますが、自閉症スペクトラムでは「てんかん」を併有することが多かったり、治療や支援の仕方が異なることから、鑑別が必要とされています。

また、診断には「田中ビネー知能検査」や「ウェクスラー知能検査」「AQ」などの知能検査や普段の日常生活などの周辺情報から診断されます。

自閉症スペクトラムの支援

自閉症スペクトラムは、先天的な脳の機能障害であるため、治療という表現は適さないという見解です。支援は早期発見が大切で、家族や学校、公認心理師などチームで支援することが好ましいです。

学校や職場などでは「合理的配慮」という言葉が浸透し始めています。合理的配慮というのは、障害により社会適応が難しい人たちに、社会適応を求めるのではなく、社会が適応しやすい環境を提供するという考えのもと、理にかなった配慮を行うということです。

自閉症スペクトラムを詳しく

自閉症スペクトラム障害の罹患率は0.7〜2.0%であり、男性は女性より4倍近く発症頻度が高い。

自閉症スペクトラム障害の遺伝率は多く報告されているが、診断上の違いや人種的な違いもあってか結果が一致していない。しかしながら、遺伝率が報告された中で低かったものでも40%前後となっている。近年に行われた大規模調査においても50%ほどであると報告されている。

また、自閉症スペクトラム障害の60〜70%に非症候性知的障害が合併し、逆に非症候性知的障害の約30%に自閉症スペクトラム障害が合併している(神保・桃井,2015)。

自閉症スペクトラム障害の遺伝子研究では、家族や双生児の研究において遺伝の影響が強いと言われている。例えば、一卵性双生児は60〜92%、二卵性双生児は0〜28%で発症するとした報告もある(Kaufman,L. & Ayub,M. Vincent,LB.,2010)。

一方で、遺伝要因の他に環境要因も相互的に関わっているとする指摘もある。例えば、ピレスロイド系の殺虫剤とモノアミンオキシダーゼAが男児におけるリスクを高めたり、大気汚染における高濃度の二酸化窒素がリスクを高めると報告されている(杉江,2015)。

また、遺伝だけではなく神経による影響も示唆されており、情報を伝達するシナプスは興奮性シナプスと抑制性シナプスがあるが、自閉症スペクトラム障害では、このシナプスの活性バランスが通常と異なるとも考えられている。

他にも妊娠中の化学物質の摂取が自閉症スペクトラムのリスクを高めるという指摘もある。例えば、抗てんかん薬(バルブロ酸)やアルコール、有機水銀などである。特にサリドマイドやバルブロ酸は高リスクであるとラット研究で示唆され、使用が禁止されている。

コピー数多型

子の遺伝子の中に親の遺伝子がどれくらい存在するかを測定するマイクロアレイ(aCGH)という方法がある。マイクロアレイでは、染色体の欠失や重複の微少な変化を検出できる。この染色体の欠失や重複の微細な変化を『コピー数多型』とカテゴライズする。

コピー数多型には、①SHANK3、②LIN7Bと呼ばれる遺伝子がある。自閉症スペクトラム障害では、SHANK3の欠失と重複、LIN7Bの重複がみられる。