知的能力障害(知的障害、精神遅滞)【公認心理師試験対策】

2021年3月20日

知的能力障害とは

主に用いられる「知的障害」は、精神医学の領域では「精神遅滞」と呼称されます。アメリカ精神医学会が規定する診断基準であるDSM−Ⅴでは「知的能力障害(知的発達症)」と記載されており、呼び方は様々ですが、同じものを指しています。

DSM−Ⅳが用いられていたときは、「自閉症=知的な遅れがある」という認識でしたが、「高機能自閉症」や「アスペルガー症候群」のように知的な遅れを伴わない自閉症があり、DSM−Ⅴに改定された際に「自閉スペクトラム症」という名称で「自閉症」「広汎性発達障害」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」がまとめられ、「知的能力障害」は分けて考えられるようになりました。

知的能力障害の症状

思考力、判断力、問題解決力など先天的な全般性機能障害です。それにより学校生活や社会生活で困難があります。対人関係、経験的な学習、お金の管理など日常生活においても困難があるため、重症度によっては施設による継続的な支援が必要になります。

特に危険に対する理解が難しい場合があり、熱いものに触ったり、高いところに登ろうとしたりすることもあります。また衛生的な理解についても同様で、落ちているものを口に含んだり、手洗いが上手にできないなど風邪やインフルエンザなどに罹患することが多くなります。

■イライラや不安などの感情を上手に飲み込めないこともあり、情緒的混乱による自傷や他害に繋がることもあるので、支援教育上の注意の仕方などに十分な注意が必要です。

知的能力障害の診断

日常生活の適応機能は、概念的領域、社会的領域、実用的領域の3つの状態で示されます。

  • ①知的能力障害の診断概念的領域:記憶、言語、読字、書字、数学的思考、実用的な知識の習得、問題解決、および新規場面における判断においての能力についての領域
  • ②社会的領域:特に他者の思考・感情・および体験を認識すること、共感、対人的コミュニケーション技能、友情関係を築く能力、および社会的な判断についての領域
  • ③実用的領域:特にセルフケア、仕事の責任、金銭管理、娯楽、行動の自己管理、および学校と仕事の課題の調整といった実生活での学習および自己管理についての領域

診断には、これらの基準を鑑みた上で、田中ビネー知能検査やウェクスラー知能検査などの知能検査が用いられます。また保護者から生育歴や日頃の様子などを聞いて総合的に診断されます。

知能検査障害には、その重症度が判断され、養育手帳が配布されます。療育手帳があることで公共交通機関割引などの様々な支援や合理的配慮が受けられます。

知的能力障害の支援

知的能力障害は、早期発見と適切な支援が必要となります。幼少期に診断を受けて、学校教育において特別支援学級や通級による特別支援教育、特別支援学校を利用する方が多いです。

特別支援学校は、都道府県が設置する特別支援教育のセンター的な役割を担います。それゆえに、通常学校に対して、特別支援教育の情報提供や相談に応じるなどの支援を施すことができます。

学校の教員は、それぞれの校種や教科の教員免許を持っています。特別支援学校には、専門の教育免許(特別支援)を持った教員が配置されているため、通常学校よりも体制的に適切な支援を得られやすいです。

また、児童発達支援に関する研修や放課後等デイサービスとの連携なども行っているため、情報収集や相互協力関係にも有効です。

公認心理師としては、知能検査の実施や教員や保護者、支援員に対するコンサルテーションが支援となります。特に保護者は、家庭との両立や自身の情緒混乱に悩むことが多いため、情報的サポートや情緒的サポートが重要な意味を持ちます。