ハーロウの代理母実験【公認心理師試験対策】
アカゲザルの代理母実験
Harlow,H.は、ウィスコンシン大学においてアカゲザルを用いた発達心理学の実験をしました。Harlow,H.は、ボウルビィの愛着行動に関する研究の影響を受け、乳児の母親に対する接近行動に着目した実験をしました。これが代理母実験です。
Harlow,H.は、他の実験に用いるはずのアカゲザルを輸送する際に、アカゲザルの仔は鉄製のケージで運ぶと5日ほどで死亡することが多いことに気づきます。あまりに短命で、これでは実験が行えないため、この問題を解決する手段を考えました。
ケージの中に「布で作った母親」を一緒に入れてみると、それだけでアカゲザルの仔は落ち着いた様子を見せ、「布の母親」に哺乳瓶を設置すると、ミルクを飲むようになりました。
アカゲザルの行動を観察すると、アカゲザルの仔はミルクを飲むためだけでなく、「布の母親」を母親と見なして、接触しているように見えました。(これはフロイトの「空腹の理論」を否定する論証になります。)
そこで、Harlow,H.は、代理母実験を行うことにしました。①針金で作った「針金の母親」と②スポンジと肌触りの良い布で作った「布の母親」を準備し、アカゲザルの仔の反応をみました。接近行動に伴い、母親に触れる感触にヒントがあると考えたわけです。
Harlow,H.は、生まれて間もないアカゲザルの仔を母親から引き離し、「針金の母親」と「布の母親」をそれぞれ与えたり、同時に与えたり、与えてから引き離したり様々な方法で実験しました。
その結果、「針金の母親」のみ与えられたアカゲザルの仔は、「針金の母親」に設置された哺乳瓶からミルクは飲むものの、それ以上の接触をしようとはしませんでした。一方、「布の母親」を与えられたアカゲザルの仔は、ミルクを飲み、接触をする時間も有意に長かったといいます。
Harlow,H.の仮説は支持されたものの、さらなる発見がありました。それは、「針金の母親」や「布の母親」を与えられたアカゲザルは、しだいに奇怪な行動や自傷行為、攻撃性を示すようになったのです。また、こうして育てられたアカゲザルのメスは、自分の仔を生んだときに育児放棄をすることが多かったとしています。
Harlow,H.は、アカゲザルの仔が精神異常をきたした原因を「母親からの愛情的な接触行動がないため」と結論づけました。つまり、本来の実験の目的は子から母親に対する接触行動が大切だということを証明するためでしたが、母親から子に対する愛着行動が養育や情緒安定に必要だということがわかったわけです。
Harlow,H.は、アカゲザルの実験で他にも様々な方法を試しています。今でいえば、動物虐待にあたる実験でもあったため、批判が多かったようです。
Harlow,H.の代理母実験を深く知る上で、Bowlby,J.の愛着理論についても学ばれることを推奨します。↓
恐怖試験(おまけ)
試験には出題されないだろうが、Harlow,H.の代理母実験では恐怖試験も行われています。アカゲザルの仔に対して、大きな衝撃音を出すクマのぬいぐるみを見せるなど、強い刺激を与え、その反応を見るという実験です。
アカゲザルの仔は、母親が与えられていない場面では逃げ回る様子を見せたものの、作られた母親が与えられている場面では逃げようとはせず母親にしがみつき、クマへの牽制を続けたようです。作られた母親を恐怖から身を守ってくれる相手として認識していたのかもしれません。
公認心理師試験対策
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さて、公認心理師試験では、実験の流れやボウルビィ、マーラー、エイングワースなど、愛着行動の研究者との関連で出題されることが予想できます。
【例題】愛着理論に関して、誤っているものを選びなさい。
- ①エイングワースは、ストレンジ・シチュエーション法を用いて、乳児の愛着スタイルを検討した。
- ②ボウルビィは、愛着理論の基礎を築いた。
- ③マーラーは、分離ー固体化理論を提唱した。
- ④ハーロウは、母親から子に対する愛情行動が重要であるとした。