【場面緘黙症と学校】保護者と教員へのお願い

場面緘黙症とは

詳しくまとめた記事がありますので、コチラをご一読ください。【場面緘黙症とは】

場面緘黙症と学校

場面緘黙で多いのは「家では話せるけど、学校で話せない」というものです。とはいえ、場面緘黙の程度は様々です。

  • 心を開ける友達といるときは話せる。
  • でも友達の友達(自分の友達ではない)が会話に混ざってくると話せなくなる。
  • 先生に発表や音読を指名されたときは、何とか声が出る。
  • 頷きや首振りによりYES/NOの意思表示はできる。
  • 大人とは話せるけど、子ども同士で話せない。
  • 家でも学校でも話せない。(全緘黙)

以上のように、話している場面を見たことがあるとしても、一貫して話せない場面がある場合は、場面緘黙症であると言えます。

学校現場において、場面緘黙症児の大きな困りごとは以下の場合が多いです。

  • 雑談
  • 発表
  • グループワーク
  • 体育や音楽といった実技
  • 遠足や修学旅行、文化祭、体育祭など

こうした授業や特別活動がある場合、学校に登校するのが不安で登校するだけでも勇気を振り絞るような負担があります。

■保護者としては、「それでも経験させてあげてほしい」というニーズをお持ちの方もいます。難しいところですが、本人の意思を確認した上で、どこまで配慮をするのかを考える必要があります。

ただ、子どもは大人に比べて適応力やストレス耐性が低いです。僕、個人的な意見としては、スモールステップで行っていくことが必要なので、無理強いをして学校や大人との心理的距離ができてしまうくらいなら、今後のことも考えて控えたほうがいいと思います。

場面緘黙症と教員

当事者や保護者の話を聞いたり、僕自身の教員経験からして、場面緘黙症のことを知っている教員はごく僅かです。また、間違った指導をしてしまったことで、不登校のきっかけになったケースをいくつも知っています。

教員の中には、場面緘黙症の子に対して、話すことに慣れさせよう、あえて発表させよう、話すまで立たせよう、などの指導をする方がいます。

これは、学校で厳しくすることで、今後の社会生活で困らないようにしてあげようという気持ちの表れかもしれません。しかしながら、このような行為は逆効果になりかねないことを知っておいていただきたいと思います。

場面緘黙症の子は、不安感情を抱きやすいという特性があります。また不安予期のついても敏感で自尊感情が低いことも分かっています。学校に登校して授業を受けるだけでも、かなりの負担があると理解してください。

それに加え、教員が厳しく指導しようとすると、場面緘黙症児はストレス過多となり、不登校に至りやすいです。また、うつ病や統合失調症などの精神疾患に至るケースもあります。

保護者と教員へのお願い

場面緘黙症児の支援については、①カウンセリング、②日常生活上(家庭)での支援、③学校との連携、が有効とされています。

具体的にいえば、定期的なカウンセリングを受けながら、家庭や学校では不安を軽減させてあげるような関わりが有効です。

教員の「改善させてあげよう」という思いは、カウンセラーに任せてみてください。そして、本人と保護者のニーズに合わせて、カウンセラーの支持を仰ぎながらサポートするということを心掛けていただければ幸いです。

子どもにとって、保護者や教員は凄く大きな存在で、影響力が大きいです。些細な言葉でも、良い方向にも悪い方向にも導かれやすいです。

場面緘黙症の治療には、臨床心理学において有効性が示された療法があります。ですから、民間療法は避けてください。厳しくすれば良くなるというものではありませんし、神頼みすれば良くなるというものでもありません。

場面緘黙症は、主に特性によるものです。すぐに改善するものではありません。学校での支援は、保護者や教員がどれだけ配慮しても、不登校になることはあります。こればかりは、子どもが自分の心を守ろうとした結果ですので、誰のせいでもありません。

ぜひ、ご自分を責めることなく、長期的な見守りをお願いします。カウンセリングを継続的に受けていれば、大人になるまでには、改善することが多いです。雑談が苦手、仕事でのコミュニケーションが苦手という後遺症に苦しむ方もいますが、焦らず支援を続けてください。

最後に

不安が要因だと聞くと、なんだか簡単に改善しそうに聞こえますが、おそらく我々が感じている不安とは次元が違うのでしょう。「恐怖」と表現されるくらいです。

子どもは自分自身で心を守ろうとします。守りに入ったときは、それを妨げないようにしてあげてください。優しく、一緒に一歩を踏み出していくイメージで、支援をしていただけたらと思います。