小学校低学年の不登校を発達心理学の観点から考察します。
不登校は、小学1年生〜中学3年生にかけて増えていく傾向にあります。ですから、小学校の低学年でいえば、数は多くはありません。しかしながら、不登校に至る状況として、少し臨床的な特徴があります。今回は、その特徴と支援についてお話します。
高学年との違い
小学校でいえば、低学年の不登校と高学年の不登校では、かなり特徴的な違いがあると考えられます。
高学年では、自己が大きく芽生え始め、言語能力の発達もあることにより、「友達に悪口を言われた」や「変なあだ名をつけられた」など、自分の口から理由が説明されます。
一方、低学年では、自分の口から理由が説明されることが少なく、なぜか登校しぶりが始まり、学校との距離が生まれていってしまいます。
低学年の不登校の特徴
低学年の不登校では、大人が理解しづらい理由があることがあります。例えば、「友達との会話が面白くなかった」や「怒る先生がいる」、「何となく不安を感じる」、「何となく家にいたい」、「お母さんと一緒にいたい」などです。
大人からすると、不登校に至るほどの理由でないように感じます。保護者の話を聞いていると、いかにも原因が分からない不登校ということで、相談されます。しかし、子どもの話を聞いていると、子ども自身も、この理由について深く思考していないことが多いです。
要するに、低学年の子どもは、基本的に社会全体に対する適応力が低いわけです。このように、大人には理解できないレベルの「社交不安」や「親との分離不安」が背景にあることがあります。
「社交不安」や「分離不安」ともに、不安感情は脳の扁桃体という部分が司っています。つまり、先天的に敏感である人もいるのです。一方、不安を理由とした不登校には、後天的要因も考える必要があります。
例えば、親戚や祖父母の家に行ったり、保育園や幼稚園で、他の子と交流していなかったり、いつも保護者にべったりだったり、といった経験不足が要因になることがあります。
人見知り体験というのは、大人が思い出してみても、嫌な思い出ですよね。ですが、保護者の方が可哀想と思って、この機会を減らしすぎてしまうと、子どもの適応力の発達が遅れてしまうことがあります。
幼児期の子どもの遊びは、発達心理学の領域で注目されています。例えば、砂場遊びは、言語能力やコミュニケーション能力の発達に影響を及ぼすことがわかっています。砂場遊びを想像してみてください。
- ①一人で遊ぶ
- ②友達と同じ空間で別の遊びをする
- ③友達と同じ空間で遊びを共有する
- ④同じ作品を数人で協力して作る
このように遊びが発展していきます。この遊びの中で、譲り合いやモノの貸し借り、考え方の共有、他者の尊重などが芽生えます。幼児期で完結するものではありませんが、生きていく上での基礎となる部分が身についていきます。また、親と離れて、楽しく過ごしたり、時には友達と喧嘩して泣いたり、こうした経験もまた適応力として生きてきます。
このように幼児期のときに、遊びを通して色々な子との交流があると、小学校での適応もスムーズになると思います。嫌な経験はなるべく避けてあげたい保護者の気持ちもよく分かりますが、少しずつでも分離する練習をさせてあげてください。
子どもは、幼児期のときには、不安を認識し、不安を予期できる場面を避けようとします。例えば、プールが不安な子は、朝に親からプールバックを渡されると、今日はプールがあるんだと認識し、嫌がりますよね。
小学校の低学年でも、適応力や言語能力は高くないですが、漠然と不安を抱えていたりします。まずは、その不安に気づいてあげて、少しずつ再登校を目指されるといいと思います。
低学年の不登校の支援
登校しぶりがあった際、保護者としては、ちょっとした「気持ちの揺らぎ」の程度に感じて、休ませることも多いことでしょう。しかし、気づけば、休みが増え、さらに登校しぶりが強化されてしまいます。
発達心理学の観点からして、低学年では、半ば強引にでも学校に送り出すことで、不登校の予防になるという示唆もあります。子どもの心的な負担を考慮しながら、不登校を強化しすぎない工夫は必要かもしれません。
一方、保護者の方としては、休ませてあげたい気持ちが強いことと思います。これも間違いではありません。ただ、この状況が長期化してしまうと再登校は難しくなっていきます。担任の先生に相談して、車で送っていったり、保健室登校などを考慮してもらうことも1つの手です。
支援の方法としては、まずは予防です。学校への適応力を上げて、学校の楽しさを見出すことが大切です。不登校になった場合も、学校の楽しさを見出すことは大切です。不安に上回るくらいの楽しさがあることが理想です。
とはいえ、学校の方から魅力の発信をされることはあまりありません。友達から「来てよ」と言われて再登校するケースもあるようですが、これは「学校で楽しく過ごせそう」というイメージができたからだと思います。
個人的に良いと思うのは、保護者の方が小学校時代の楽しい思い出を話してあげることです。低学年の子どもが持つ漠然としている不安に対して、先人の経験は受け止めやすいはずです。また、分離不安を軽減する意味でも有効だと思います。
分離不安があるというのは、正常な発達ですので、あまり大事に考えなくても大丈夫です。低学年の子でも分離不安を抱えながら、登校している子はいます。ですから、焦らず少しずつ親子の分離を図っていきましょう。
幼児期の親子の分離は、遊びや祖父母に預けるといった小さいことから始まります。一方、母親が仕事で忙しくて、祖父母に預けきりになっていたりすると、子は愛情を求めて、分離不安が強くなります。
つまり、引っ付いたり離れたり、バランスが大切だということです。愛情が不足している場合は、甘えさせてあげてください。愛情が満たされると自然に分離ができることもよくあります。あと、分離が定着し始めたときも、頑張っていることに対して、褒めてあげてください。
既に不登校になっていて、再登校が難しいと感じた場合は、適応指導教室やフリースクールを利用してみてください。ここで、学習支援や心の支援を受けながら、適応力を高めることができます。
低学年の不登校は、高学年や中学生に比べて、再登校に至りやすいです。支援を施して、まずは再登校を目指してみましょう。適応指導教室やフリースクールは、再登校を目指したいというニーズにも応じてくれます。適応指導教室やフリースクールに通いながら、学校にも通うということできるので、支援員の方と担任の先生と相談してください。
【内部リンク】適応指導教室について
【内部リンク】フリースクールについて
カウンセリングについて
低学年の不登校に対するカウンセリングは、遊戯療法や家族療法などが用いられることが多いです。主に子どもの心の状態を見極めながら、保護者との分離を調整していくことになります。
中には、両親の喧嘩やDVを見ていたり、虐待の被害、親の過干渉が原因になることもあるので、カウンセリングが重要な意味を持ちます。不登校の理由が分からない場合は、まずスクールカウンセラーに相談してみましょう。
担任の先生を通して、スクールカウンセラーを紹介してもらいましょう。もし、学校にスクールカウンセラーがいない場合は、各市区町村でカウンセラーを抱えていることが多いので、市区町村の教育委員会に相談してみましょう。窓口を紹介してもらえると思います。