【高校生版】不登校の初期対応マニュアル
この記事は、不登校になった高校生の保護者の方に向けて書いています。小中学生の初期対応マニュアルは、別の記事で書いていますので、そちらでご一読ください。この記事は、2020年12月に書きました。
まずは相談してください。
まずは、スクールカウンセラーや児童相談所のカウンセラー、市区町村に設置されている子ども福祉課などに在中しているカウンセラーを利用して、カウンセリングを受けてみてください。
高校生は考えることが多く、心身症に至ることが多いです。まずはカウンセリングを受けてみて、投薬療法が必要か、などの助言をもらってください。
不登校は、小学1年生〜中学3年生まで増加傾向にあります。高校生では、就職や通信制や定時制などへの進学などで、不登校の数は減ります。しかし、就職も進学もできなくて、家に閉じこもったままの子もいます。
中学生段階は、自分に意識が向きやすくなり、周囲の人と自分を比べて劣等感を抱く時期です。高校生は、個性や自己同一性という部分で、自分と対峙する時期で、気になるけど向き合いたくはないという葛藤があります。
高校生になると、自分の生き方を考えるようになります。大学進学を見据える場合は、必死に勉強することになります。就職のついても、専門学校や短大に進んだほうがいいのか、通信制で資格を取ったほうがいいのかなど、悩みは尽きません。
また、統計には記載されていませんが、不安症による不登校は多いと思っています。高校での活動や人間関係に不安があり、少しずつ休みが増えて、不登校になってしまうケースです。ただ、こういった子は、通信制高校などへの編入をきっかけに、環境の不安が解消され、前向きに勉強したりすることができるようになることが多いです。
居場所を見つける
次に、選択肢がいくつかあるので紹介します。カウンセラーに相談した上、子どもの心の状態を把握して、適切な居場所を見つけてあげてください。
高校生で注意したいのは、ひきこもりです。ひきこもりを予防するためには、居場所を見つけてあげることが大切です。
ひきこもりは、社会性の成長や心の発達が遅れてしまうリスクがあります。また、長期化すると、社会生活に復帰することが難しくなってしまいます。何より子どもが非活動的に、悶々と抑うつ的、自己否定的に考え続けることは、精神衛生上、よくありません。
できる限り早期に次の居場所で、次の目標に意欲を湧かせられるように支援してあげてください。ずっと部屋に籠もっていたいという人は、おそらくいないと思っています。「勇気が出ない」「自分の将来に絶望感がある」など、理由があるはずです。
ひきこもり支援については、それほど詳しくなくて申し訳ないのですが、市区町村役場で相談が受けられたり、ひきこもり支援に力を入れているNPO団体があるので、ぜひ調べてみてください。
①通信制高校
通信制高校は、スクーリングの日が週に一回、月に数回、など決まっていて、動画で講義を受け、レポートにまとめて提出するという形が多いです。スクーリングの日は、体育や家庭、行事などがあり、他の生徒との交流をすることができます。人数が少ないので、濃い友人関係が築けることもあります。また、大人の方が学び直しに利用されていたりもして、大人ならではの経験が聞けたりもするかもしれません。
全日制に通っていて、途中で不登校になって、通信制高校に編入する場合、前の高校で取得した単位を持ち越すこともできます。ただし、工業高校→普通科通信制高校などの場合、単位が持ち越せないこともあります。この点は、編入前の高校の教務主任をしている先生に聞いてください。教育委員会を通すことになるので、確認に時間がかかります。早めに動いてください。
■通信制高校の生徒は、それぞれが何らかの困難を抱えていることが多いです。人間関係は、繊細に考えてください。親同士も交流にしても、相手の背景を知らないまま、自分の悩み事ばかりを話してしまったりしないように注意が必要です。
②定時制高校
定時制高校は、全日制高校が朝から夕方に活動するのに対し、全日制高校が終わって部活動を始める頃から登校をして、20:30頃まで活動をします。
授業は、全日制高校と変わらず、授業を受けて、定期テストもあります。体育や家庭などの副教科もあります。単位制なので、成績が悪いと卒業できません。経済的な理由で、日中は働いていたりする子がいたり、大人が学び直しで利用していることもあります。
■定時制高校は、全日制高校の学校で時間だけズラして開校されていることが多く、全日制高校の雰囲気が垣間見えます。それに対して嫌悪感を抱く子もいるので、配慮が必要かもしれません。
③フリースクール
小学生や中学生では、教育支援センター(適応指導教室)という選択肢もあったのですが、高校生は通うことはできません。
それに代わる場所として、フリースクールがあります。公的な機関ではないですが、適応指導教室と同様の活動をしています。勉強、遊び、イベントなど、活動的に他の子どもとも交流することができます。日中に勉強する習慣をつけられるのは、メリットかもしれません。
また、ほとんどのフリースクールが、小中学生を対象にしているので、お兄さんお姉さん的な立場で関わることができると思います。
■高校の場合、通信制や定時制高校があるので、フリースクールを利用する人は少ないです。学習支援も職員の力量次第です。また、通うことで単位が取得できるわけではありません。ただ、中には通信制の高校と連携して運営されている場合があり、そこでなら単位認定もされているようです。
④学習塾
高校に通わずに、学習塾だけで勉強する選択肢もあります。塾友達ができれば、良い居場所となるかもしれません。
近年では、大手の学習塾で不登校の支援が活発になってきています。学習塾は、通常、夕方や夜に運営されますが、不登校の子が通えるように日中も開いている場合もあります。
また、オンライン授業のサービスを行っている学習塾も増えてきました。時間を気にせず、録画された授業動画を見て、学習することができます。
■ただし、塾に通うだけでは、高校を卒業することはできません。しかし、短期大学、専門学校、四年生大学の受験資格を得る方法として、「高校卒業程度認定試験」があります。これは、次の章で説明します。
【番外編】高等学校卒業程度認定試験
高卒認定試験とも呼ばれます。これは、単位に関係なく、高校を卒業できるほどの学力があるかを測定するテストです。これに合格すると、高校を卒業できる程度の学力があることが証明され、短期大学、専門学校、四年生大学などの受験資格を得ることができます。
四年生大学への進学を考えている子は、受験勉強のついでに高卒認定を受験したりしています。高校2年生時に高卒認定に合格して、そのまま高校3年生と同時期に大学受験に臨む子もいます。また、高校の途中で不登校になった場合、通信制や定時制に編入しても、単位の関係で在学期間が延長する場合があります。これに待っていられない子は、高卒認定を得て、早期に進学することもできます。
高卒認定試験を受ける子は、通信制や定時制に通いながら、腕試しで受ける場合もあります。一方、通信制定時制にも通わず、家や塾だけで勉強して、高卒認定試験を受ける子もいます。これは、様々です。
■一人で勉強するというのは、なかなかモチベーションが続きません。今では、SNSなどで高卒認定試験の合格を目指す仲間でコミュニティを作って、モチベーションを保っている子もいます。高校に通わないということで、クラスメイトがいない寂しさもあるかもしれませんが、進学したあとのことを想像して、目標に向かって頑張りましょう。
スタディサプリ
スタディサプリは、5教科に対応した通信教材です。不登校や通信制、定時制、フリースクールなどに通いながらでも併用できる通信教材です。とにかく安く単元ごとに動画が分かれていて使いやすいです。
なぜスタディサプリをおすすめするかというと、不登校の子に多いのは、不安があって対面のやりとりが苦手である場合が多いからです。
受動的に動画を見るスタンダードプランなら月額1,980円で、個別指導プランでも格安です。安いからといってサービス内容が雑ということもありません。詳しく書いた記事もあるので読んでみてください。
最後に
高校生の不登校は、選択肢としては沢山あります。また、心の弾力性が身についてくる時期なので、次の目標などに上手く方向転換できることもあります。一方、思考力が高いので、悩みの深さも深くなっています。
不安症や人間関係が原因である場合、環境を変えることで、適応できることが多いようにも感じます。しかしながら、将来への絶望感が原因にある場合、長い目で支援していく必要があるでしょう。
不登校になったからといって、人生を諦めないでください。努力次第で大学にも行けます。自分の可能性をもう一度、考え直して、不登校を経験した人にしかできないことを強みにして頑張ってみてください。