兄弟の比較がタブーと言われる理由【劣等感に着目して】┃三重県松阪市のフリースクール&カウンセリング

2020年11月23日

こんにちは。中津です。

僕は、大学院で学校臨床心理学を学びました。特に青年期の心の発達が専門です。大学院修了後は、高校教員を経験し、今はフリースクールを開業しました。

さて、今回は、小中高生の保護者の方を中心に読んでいただきたい記事になっています。「兄弟の比較がタブー言われる理由」というテーマでお話いたします。

兄弟の比較はタブーです。

この記事では、兄と弟の兄弟関係についてお話します。姉と妹の姉妹関係については、別の記事を書きたいと思います。

さて、「兄弟の比較はタブーです」と言いました。これは、保護者の皆さんも感覚的に喧嘩や闘争を生み出す原因になってしまうことは、お分かりだと思います。

発達心理学の領域では、エリクソン(Erikson)の社会心理的発達理論で説明されることが多いです。エリクソンによると、高校生〜大学生の時期は青年期と言われ、アイデンティティ(個性や特性)確立することが発達上の課題であるとされています。

この発達上の課題というのは、乳児期から老年期まで順番に達成される必要があり、達成できない場合は、次の発達段階に進むことができないとされています。

高校生の手前である中学生の時期の発達課題は、勤勉性です。中学生の時期を想像してみてください。やんちゃな子や幼い子がいる中で、勤勉性のある生徒は、少し大人びて見えませんか?このように、この発達理論は、文化や時代の流れに伴って多少の違いがあることも指摘されることがありますが、現在の日本でも支持されている理論です。

一方、発達課題には、それぞれ対になる発達を妨げるものがあるとされています。中学生の時期で言えば、「勤勉性 ━ 劣等感」となっています。

ここで、『劣等感』が出てきました。劣等感とは、他者と自分の比較、理想の自分と現在の自分の比較、によって生じるネガティブな感情のことです。

弟の子どもたちは、「親がいつもお兄ちゃんと比べてくる」と悩みを打ち明けてきます。特に兄が賢い高校に通っている場合などに多いです。また、ご家庭が自営業だったり医師の家庭だったりする場合に多いです。

弟たちは、最初は親の期待に応えるために努力します。しかしながら、兄の成果に劣ることを認知すると劣等感を強く抱くようになります。中学生の多くは、周りの子と自分を比較してしまい、辛い経験をしながらも、その劣等感に打ち勝ったり受け入れたりして、心が発達していきます。

一方で、兄弟で比較されると、比較対象は兄弟になります。あまり周りの子に意識が向くことはありません。兄と比較された弟は、勉強を頑張っても、兄もその間に新しい成果を出しています。ずっと苦しむことになります。

親の期待に応えられなくなった弟は、学習性無力感(やってもやっても成果が出ないことで強く抱かれる無力感のこと)を抱き、非行、不登校、うつ状態、自傷などの問題に発展するケースも少なくありません。

この心的ダメージは、親がかけるプレッシャーの頻度や程度に比例して大きくなります。毎日のように「お兄ちゃんは○○だったのに」「お兄ちゃんは凄いね」などの言葉をかけると、敏感になっている弟は些細なことでもダメージを蓄積させます。

兄弟の比較は、劣る方の心の発達を妨げます。しかし、それだけではありません。最悪は、比較対象にある兄弟や比較しプレッシャーをかける親のことが憎く感じ始めます。「自分なんか産まなければよかったのに」。そういって自他への破壊的行動を取ってしまうケースもあります。

中学生にとって、学業や学力の問題は、非常に繊細に扱うべき部分です。不登校の原因でも学業による不登校が最も多くなっています。

中学生で劣等感を抱き、心の発達が妨げられた子どもは、青年期、その先の成人期に至ってもなお、心の発達ができず、心的な負担を抱えたままの大人になっていきます。もし、中学校を無事に卒業できても、その先の苦労は続きます。

兄弟への劣等感を解消する方法

なかなか中学生や高校生で、支援に繋がる子はいません。余程のことをして、児童相談所や医療機関に繋げられた子くらいです。ほとんどの子は、兄弟って辛いものなんだと、こういうものなんだと、そう思って、支援を求めません。

大学生や大人になって、うつ病の治療などで劣等感で苦しむことがおかしいと気づき、学生相談やカウンセリングに通うようになります。

これまで長い時間をかけて強化された劣等感は、そう簡単に緩和したり、受け入れたりすることはできません。それなりに時間をかけて、少しずつ自分を見つめていくことになります。

劣等感に効果的な心理療法は、いくつかあります。精神分析、認知行動療法、来談者中心療法などです。カウンセラーによって、得意な療法がありますので、何回か通ってみて、効果を試してみてください。もし、数ヵ月かけても効果が出ない場合は、セカンドオピニオンとして、別のカウンセラーにかかることも検討してみてください。

うつ病などの精神疾患を発症している場合は、医師の診察を受け、精神疾患に効果がある薬物療法を受けながら、カウンセリングも受けてください。精神疾患に対しては、薬物療法は有効ですが、劣等感という感情そのものを緩和することは難しいので、カウンセリングは必須だと思います。

僕は、医師ではないので、あくまで参考程度受けとっていただいて、ぜひ、医師診察を受けて、医師の指示に従って治療にあたってくださいね。

最後に

兄弟には、仲良くいてほしいものです。親子も同様です。もし、この記事を読んで、子どもを比較してしまっていると気づかれた保護者の方がいらっしゃいましたら、まずは素直に謝罪してあげてください。それから時間をかけて、関係を修復してください。謝罪があることで、子どもは親が味方だったと再認識できるようになります。これは、あくまできっかけで、子ども次第になりますが、保護者らしく寄り添う姿勢を見せてあげてくださいね。

劣等感は、誰もが経験する感情ですが、強化が過ぎると大変な事態至る場合もあります。あなどれない感情です。お気をつけて。