公認心理師になるためには【完全ガイド】
公認心理師になるためには
公認心理師は、公認心理師法により定められた国家資格です。公認心理師になるためには、日本心理研修センター(一般財団法人)が開催する公認心理師試験に合格し、登録する必要があります。
公認心理師試験の受験資格
公認心理師試験は誰でも受けられるわけではありません。受験資格を得るために日本心理研修センターは区分A〜Fの条件を設定しています。詳しくは【日本心理研修センター公式HP】でご確認ください。
区分A
国から認められた公認心理師を要請するカリキュラムを持つ4年制大学(心理学部等)で必要単位を取得・卒業した後、同様の養成指定大学院で単位を取得・修了した者
区分B
国から認められた公認心理師を要請するカリキュラムを持つ4年制大学(心理学部等)で必要単位を取得・卒業した後、一定期間以上の実務経験を有する者
ただし、心理職は実績主義のようなところがあるため、4年制大学を卒業したからといって実務経験を積むことができる職に就ける保証はない。個人的には、能力や知識を身につけるためにも大学院進学をおすすめします。
区分C
区分Aと区分Bと同等以上の知識・技能を有すると認められた者。外国の大学や大学院において必要な教育期間を満たし、専門科目の履修時間が一定の基準を超えている場合に申請することができます。
区分D1と区分D2(特例措置)
区分D1は、2017年9月15日より前に養成指定大学院において必要単位を履修・修了した者
区分D2は、2017年9月15日より前に養成指定大学院に入学し、2017年9月15日以後に必要単位を履修・修了した者
区分E(特例措置)
2017年9月15日より前に4年制大学において必要単位を履修し、2017年9月15日以後に養成指定大学院において必要単位を履修・修了した者
区分F(特例措置)
2017年9月15日より前に4年制大学において必要単位を履修し、定められた施設において一定の実務経験を有する者
区分G(特例措置:第5回まで)
5年以上の実務経験を有することを証明し、現任者講習会を受講した者
大学と大学院の選び方
必須条件として公認心理師の養成カリキュラムを持っている大学と大学院を選ぶ必要があります。大学は対応しているけど、大学院は対応していないという大学法人もあるのでホームページで調べてみてください。
理想は、大学院入試を有利に運ぶためにも大学と大学院がともに養成指定を受けている大学法人を選ぶことをおすすめします。
また、一概に心理学といっても領域は様々です。医療・福祉・教育など働く領域の違い、児童期・青年期・成人期など専門にする発達領域の違い、学校臨床・発達障害・緩和ケア・リエゾンなど研究領域の違い、こうした自分が居るべき領域を予め考えておくと大学や大学院を決めるヒントになります。
大学院進学│研究室への訪問
大学院で心理学を専攻するにあたり研究領域を決める必要があります。そのために自分の指導教員となる教授や准教授の研究室を訪問するとよいです。
大学の先生を通して、アポイントメントを取り、どのようなゼミ活動をしているのか、過去の研究はどのようなものか、自分が検討している研究が実施可能かどうかなど、詳しく質問してみてください。
因みに僕は、体育大学で教員免許を取得し、大学院で学校心理士を取得するべく公認心理師の必要単位を履修・修了したタイミングで公認心理師法が成立したため区分D1で公認心理師を取得しました。
体育大学から学校臨床心理学の研究室のある大学院に進学したため、研究室訪問をしています。専門がガラッと変わったので、右も左も分からない状況でしたが、指導教員となった先生が優しく教えてくださいました。
大学院は大変?
大学院の修士課程(2年間)において必要単位を履修・修了することが条件です。大学院では、大学で学んだ内容よりも深い内容を学びます。また、実践的な学びを経験するために実習があります。
実際に施設においてカウンセリング業務等の実習を受けます。カウンセリングは人の生命や人生に関わる重大な仕事です。そのため指導教員から厳しい言葉をもらうこともあります。心の準備を。
また、修士論文を書くにあたり指導教員より指導を受けながら研究や実践を行います。僕は理論展開や分析に苦戦しながらも量的研究と実践を約100ページ程にまとめて修士論文としました。
今でも修士論文を書く際に読んだ論文の知識や実践での経験は凄く役に立っています。大変ではありましたが、人生の糧として素晴らしい経験だったと思っています。
公認心理師試験
公認心理師試験は、マーク式の筆記試験のみです。知識問題と事例問題があります。午前(120分)と午後(120分)に分かれていて、第5回公認心理師試験は154問ありました。
総得点230点のうち135点:60%程度を基準とし、問題の難易度で多少の変更があるとしています。第4回公認心理師試験では、合格点が143点に変更になりました。
僕は、第3回公認心理師試験で合格しました。過去問が殆どない中で、心理学検定や臨床心理士試験の過去問などを参考にして勉強しました。参考までに↓
公認心理師試験の過去問
過去問は日本心理研修センターのホームページで手に入れることができます。↓
公認心理師試験対策
当ブログで公認心理師試験対策の記事を書いています。網羅的ではないものの、難しい理論やモデルを詳しく解説しています。参考までに↓
公認心理師を仕事に
公認心理師を取得したあとは就職です。求人サイトを覗いてみてください。例えば、Indeedの検索窓に「公認心理師」と記入してみると、1931件もヒットしました。
病院やクリニック、児童発達支援や放課後等デイサービス、カウンセリングルーム、就労支援施設などが多い印象です。
小中高のスクールカウンセラーや大学の学生相談など一部の求人は、求人サイトに記載されておらず、都道府県や市区町村が募集している場合があります。
その場合はGoogle検索で「公認心理師 ○○県 募集」など検索してみてください。採用試験の関係で応募期間が短期間で設定されていることが多いので、都度チェックしておいたほうがよいです。
Gルート論争
公認心理師試験における特例措置であった区分Gでの受験が終了となりました。Twitterでは「Gルート論争」と呼ばれる議論が展開されています。
大学や大学院で心理学の基礎や専門性を学ばずして公認心理師試験が受けられるという事実に、臨床心理士たちが抗議しました。
これは、Gルートの全てを抗議するものではなく、心理学的理論や合理性に欠けるスピリチュアルやカルトといった心理支援に似て異なる相談事業、他領域における安易な傾聴が実務経験として認められているとすれば、クライエントの不利益になりかねないとする考えから意義を唱えた形です。
勿論、Gルートの中には医師や臨床心理士など豊富な経験を有している者もいます。また、他領域において十分な心理支援の実務経験を持って、公認心理師に挑戦する者もいます。
公認心理師は、カウンセリングだけに特化するわけではなく、ソーシャルワーク的な働きにも期待されています。例えば、養護教諭は学校と医療の連携に強みがあり、公認心理師の知識と技能があれば、重たい状態にある児童生徒を適切にSCや医療に繋ぐことができます。
公認心理師の将来性
これまで臨床心理士が力のある資格として心理学界隈を牽引してきました。心理支援における国家資格を作るという公認心理師法の成立の流れには、ベテランの臨床心理士の先生方が尽力してくださいました。
これにより心理臨床に特化するだけでなく、より広い意味で心理支援の専門家として公認心理師が誕生したわけです。
公認心理師の需要は増えてきます。一方で、公認心理師が増えすぎる問題もあると考えます。これまで臨床心理士を養成してきた大学法人が公認心理師の養成機関として機能し始めました。
しかしながら、求人をみると非正規雇用が多い印象です。また、あらゆる事業が募集しているのは即戦力の公認心理師です。非正規雇用で力をつけて正規雇用に転職するという流れは、生活を考えると厳しい状況です。
公認心理師は、苦労の割に食えない。そう言わざるおえない状態です。今いる公認心理師が活躍し、その必要性を社会に認知してもらうほか改善の余地はありません。