Lazarus,R.S.とFolkman,S.のトランスアクショナルモデル:第5回 問10【公認心理師試験対策】

トランスアクショナルモデル

ストレス反応は、ストレッサーとコーピング対処の間に存在するトランスアクショナル(相互作用的)な不均衡から生じるとされてきました。この理論をトランスアクショナルモデル(Lazarus,R.S.&Folkman,S.,1984)といいます。

◆ストレッサーというのは、ストレスの要因となる出来事や物理的現象など様々あります。例えば、入学試験や結婚・離婚といったライフイベント、怪我や病気といった生理的かつ物理的現象を意味します。

◆コーピング対処というのは、ストレッサーに対するストレス緩和方略のことです。先行経験や情報整理、認知的評価、心理的対処(爪を噛む癖や自傷行為)などがあります。

もともとストレス反応は、ストレッサーとコーピングの相互作用的な不均衡と生物学的素因(遺伝的特性や栄養状態など)が関連し、その先に病理的結果が生じるという説が定着していました。

ところが研究が積み上がることで、ストレス反応がストレッサーに対するコーピングの結果に依存することがわかってきました。要するに、不適応的なコーピングが病理的結果を招くということです。

そして、コーピングの位置づけが『ストレス対処を目的としたコーピング』となったのです。(皆さんが講義や参考書で学ぶコーピングはこれです。以下「現行のコーピング」と呼称します。)

現行のコーピング

現行のコーピングは、問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングがあります。

問題焦点型コーピングは、ストレッサーそのものを問題と認識した上で、適応的な水準に変化させることを目的としています。

情動焦点型コーピングは、ストレッサーによって引き起こされた情動のコントロールを目的としています。

これらのコーピングは、いずれも状態を悪化しないため改善させるために検討されます。ラットが刺激から逃避する過程を調べた研究があったりしますが、コーピングの全てがその時に意図されたものとは限りません。

無意識的に自身を守るために行われるコーピングもあるのです。これが精神分析の領域で言う防衛機制でもあります。

また、ストレッサーからの回避・逃避は時に適応的なコーピングとなりえます。しかしながら、相手に攻撃したり過度な抑圧がある場合などは、病理的問題として取り上げられることになります。

つまり、その特性や状態・状況においてコーピングは適応的にも不適応的にもなりえるということです。

その人にとっては適応的なコーピングであっても別の人にとっては不適応的なコーピングである場合があります。この点には注意が必要です。

公認心理師試験対策

第5回公認心理師試験では、以下の出題がありました。

問10:R.S.LazarusとS.Folkmanによるトランスアクショナルモデル〈translational model〉の説明として、適切なものを1つ選べ。

  • ① パニック発作は、身体感覚への破局的な解釈によって生じる。
  • ② 抑うつは、自己・世界・未来に対する否定的な認知によって生じる。
  • ③ 無気力は、自らの行動と結果んk対する非随伴性の認知によって生じる。
  • ④ ストレス反応は、ストレッサーに対する認知的評価とコーピングによって決定される。
  • ⑤ 回避反応は、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけの原理によって形成される。

答えは④です。

公認心理師試験対策テキスト│https://amzn.to/3R6ysXM