Hollingworth,L.S.の心理的離乳【公認心理師試験対策】
心理的離乳とは
心理的離乳は、Hollingworth,L.S.(1928)が提唱した概念で「青年期にみられる親からの精神的分離」を意味しています。
Hollingworth,L.S.は、青年期の子が親の監督から分離し、実生活を分かつだけでなく、精神的自立を果たすために自律性を獲得すると考えました。
Hollingworth,L.S.の心理的離乳を深く理解する上で、Hollingworth,L.S.の生い立ちと理論背景をお話します。
心理的離乳の理論背景
Hollingworth,L.S.(1886-1939)は、アメリカの臨床心理学者でありフェミニストです。彼女は3歳のときに母親を亡くしています。父親はアルコール依存症であり、彼女は母方の祖父母に預けられ育てられました。
父親は再婚し、彼女に父親と継母と生活することを強いました。彼女は父親と継母の不適切な養育を受け育ちます。いわゆるアダルトチルドレンに当たります。
彼女は家庭に居場所がないぶん学校が唯一の楽しみでした。学校では文才が認められ、高校進学の際には小説家を夢みます。高校卒業後は家を出ますが、女性差別が残っていた当時、彼女の作品は出版されることなく、夢が破れてしまいます。
一方で、彼女は大学で教師の資格を取得すると、教師としての才を発揮します。高校で教頭を勤めたあと大学の助教授としてキャリアを積みました。
彼女が臨床心理学を志したきっかけは、大学時代に出会い、結婚したHarry Levi Hollingworthにあります。彼は心理学を専攻しており、Cattell,J.M.の助手をしながら指導を受けました。
Hollingworth,L.S.は心理学に関心を示し、1913年に精神障害者施設で勤務し、ビネー式知能検査を学びます。その後もThorndike,E.L.の指導を受けます。
Hollingworth,L.S.は、これまでの背景から教育臨床心理学を軸に更なるキャリアを積んでいきます。Columbia Teachers Collegeにて博士号を取得したあと、精神障害を持つ子どもに対するアプローチとして、知能検査と親子関係に関する研究を繰り返します。
ここで提唱したのが「心理的離乳」です。当初、発達心理学の領域における愛着理論のように物理的な親子の分離を想定しましたが、彼女は自身の幼い頃の経験から情緒面・心理面に与える影響を考慮し、施設養育に力を入れました。
まだ発達障害と精神障害の境界が不確かだった時代にIQと精神障害の関連が必ずしもイコールとはならないことを報告し、注目を浴びました。
日本における心理的離乳
日本の研究において心理的離乳を発達段階に分け、より詳細に分析しようとする動きがある。例えば、西平(1990)や落合・佐藤(1996)がある。公認心理師試験対策として、この発達段階を把握しておけば問題ないだろう。
西平(1990)の心理的離乳
西平(1990)は心理的離乳を3段階に分けている。
第1段階:子と親の依存関係の脱却が起こる。
第2段階:子が自律性を獲得し親を客観的に評価、絆を再考・再構築する。
第3段階:子が親から独立し生き方を確立、自己実現に向かう。
落合・佐藤(1996)の心理的離乳
落合・佐藤(1996)は、心理的離乳を5段階に分けている。
第1段階:親が子を抱え込む/親が子と手を切る関係。(この2つは表裏一体の関係にあり、子や親の状況等により変化・選択されることがある。)
第2段階:親が子を外界の危険から守る関係。
第3段階:親が子の困惑場面を支え励ます関係。
第4段階:親が子を信頼・承認する関係。
第5段階:親が子を頼り助け合う関係。
引用参考文献
- Hollingworth,L.S. 1928 The psychology of the adolescent. New York:Appleton.
- 西平直喜 1990 成人になること 東大出版
- 落合良行・佐藤有耕 1996 親子関係の変化からみた心理的離乳への過程の分析 教育心理学研究,44,11-21.