Fredricksonの拡張−形成理論【公認心理師試験対策】

2022年6月26日

拡張−形成理論

拡張−形成理論(broaden-and-build theory)は、Fredrickson,B.(1998.2001)が提唱した理論である。拡張−形成理論とは、ポジティブ感情が精神活動を拡張することで能力や資源を形成するという傾向を意味する。また、人は拡張と形成を繰り返すことで成長するとした。

例えば、人は楽しいというポジティブ感情を持つとき、その対象を積極的に求め活動する。これにより深めたい広めたいという拡張動機に繋がる。この拡張により更なるスキルの向上やコミュニティ形成が行われる。

幼少期の子どもをイメージしてほしい。楽しいというポジティブ感情から恐竜図鑑を読み、読んで!と親に言葉を学ぼうとしたり同じ興味から友達の輪が広がる。

拡張−形成理論の最も優れた点は、スパイラル効果にある。通常、学習を進めるにあたり好きでもない教科を勉強するには少なからず抵抗感を抱き、続けなくてもよい状況下では、継続しない選択肢をとる者が多いだろう。

一方で、ポジティブ感情により動機づけられた行動は、精神的な負担が少なく自ら継続しようとする。これにより拡張と形成が自然に継続し、発展力を高めていく。好きこそものの上手なれである。

これは内的動機づけにも通づるところがある。成果に応じて報酬を与える外的動機づけに対して、活動そのものに肯定的意味を持つ内的動機づけがある。

長期的にみると内的動機づけは外的動機づけより高い学習効果を持つことが知られている。また内的動機による活動に、外的動機づけを付与することで内的動機を低減させてしまうアンダーマイニング効果もある。

動機づけ理論は、学習心理学で主に発展したきた概念であるが、拡張−形成理論においても類する部分があることは記憶しておいてよいだろう。

ポジティブ心理学との関係

これまで臨床心理学はネガティブな側面を改善・緩和する方向性で発展してきた。しかし、Seligmanが提唱したポジティブ心理学は、人がより幸福に生きる方法を検討してきた。

20世紀までの研究を概観すると、ポジティブ感情は幸福感と同じような概念として扱われている。21世紀に入り、ポジティブ感情が幸福感とは別の概念として扱われ始めた。

この時期からポジティブ感情の経験量に着目した研究が増えた。例えば、ポジティブ感情の経験量が増大することで仕事の満足度・成功度(Losada&Heaphy,2004)、免疫機能(Cohen,Doyle&Turner,2003)、寿命(Moskowitz,2003)が向上したとする研究もある。

こうした流れを受け、拡張−形成理論は、ビジネス心理学界隈でも用いられている。例えば、新人教育や研修などである。本人の楽しいと思える仕事を与え、より会社のプラスになるよう育成していく。

最後に

ポジティブ感情は、人の成長を促進する。

強くなるために厳しく育てる。そうした日本独特の教育文化が変わりつつある。科学で裏づけされた人の育て方、公認心理師試験の勉強ついでに心に刻み込んでおいてほしい。