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公認心理師資格を持つ教員が気をつけるべき多重関係【公認心理師試験対策】

多重関係とは、公認心理師がクライエントとの間に、カウンセラーとクライエント以外の関係が存在することを指します。

例えば、公認心理師が友人や家族、親戚などのカウンセリングを行うことは、互いに言いたいことが言えなかったり、カウンセリングの妨げになることが多いです。

また、業務で知り合った人とプライベートな関係に至ることは、倫理的によくありません。公認心理師法で定められている信用失墜行為の禁止に当たる可能性もあります。

例えば、カウンセリングに訪れた異性と恋人関係に発展したり、業務以外で会って趣味を共有したりして、トラブルが発生した際、告訴される可能性だってあります。

そんな多重関係について、学校教員の方から質問があったので、この記事で回答させていただきます。

公認心理師資格を持つ教員から

公認心理師資格を持つ教員から質問がありました。質問は以下の通りです。(許可を得て記載しています。)

公認心理師資格を持つ教員です。授業を担当する生徒の悩みを聞くことは多重関係に当たりますか?

僕の回答は、以下の通りです。

『当たりませんが、気をつけてください。』

解釈として、公認心理師資格の有無にかかわらず学校教員は児童生徒の悩みを聞くことがあります。進路や友人関係、家族関係など、子どもは教員を信頼できる大人として頼ってくることがあります。

僕も元高校教員でしたから、子どもと話をするなかで臨床的な悩みを聴くこともありました。なかには涙しながら話す子もいました。

ただ、気をつけるべきは『教員としての立場』です。自傷がある。通告するべき非行がある。親から虐待を受けている。自殺念慮が強い。うつ病や統合失調症、境界性パーソナリティ障害が疑われる。こうした臨床的なケースにおいて、教員という立場での支援の限界があります。

この場合、然るべき高次の機関と連携して、児童生徒が適切に支援が受けられるよう繋ぐことが公認心理師の役割となります。

学校教員は、こうした児童生徒の問題を知り得たとき、学校全体で事象を取り扱い対処します。いわゆる『チーム学校』や『チーム援助』と言われる体制をつくります。

ただ、『児童生徒が他の人には絶対に言わないで』など言ってくることがあります。とはいえ、児童生徒を守るためには、情報共有は必要となります。この情報共有は教員を守る術にもなります。

この場合は『先生たち皆で君を守るから』など説得して、本人の承認を得ることが大切です。一方で、自傷他害、強い自殺念慮、自殺企画など生命や身体への危険性が高いと判断できる場合には、緊急的に本人の承認を得ないまま動くことになります。

こうした判断が求められるのも公認心理師です。チーム学校の体制がつくれるよう働きかけたり、それ以前に準備をしておくことも忘れてはいけません。学校長やスクールカウンセラーと緊急時の対応を話し合っておくとよいです。

他教員や保護者からの相談

多重関係として、他にも考えておくべきは他教員や保護者からの相談があった場合です。

これも上述の通り、教員としての業務内に関しては多重関係にはなりません。一方で、臨床的な相談に関しては、多重関係になる可能性があります。

この場合、スクールカウンセラーを紹介してあげてください。文部科学省はスクールカウンセラーの業務として、教員や保護者に対するカウンセリングの実施もあげています。

知能検査をしてほしい

保護者から『子どもが発達障害かもと疑っています。知能検査をしてもらえませんか?』と言われたとします。

一般的な教員であれば断ってスクールカウンセラーを紹介するべきだと思います。ただし、特別支援学校には教育支援コーディネーターや特別支援コーディネーターと言われる分掌があって、この教員によって学校で知能検査を実施する場合があります。

一方で、知能検査を実施したとしても公認心理師や教員は医師ではないので、診断をつけることはできません。あくまで教育支援上のアセスメントのために実施するということを憶えておいてください。

また、医師が診断する場合で、学校で知能検査を既に実施している場合は、その旨を医師に伝える必要があります。医師から知能検査の結果を提出するように求められたら、保護者の承認を得たあと、提出します。

これによって医師はテストバッテリーの意味で別の知能検査を実施したりして、診断をするわけです。

学校で、あれもこれも知能検査をしてしまうと、診断のときに同じ知能検査をしてしまい、答えを憶えていたり、学習していたりすると、検査の値に影響が出ます。

このケースは多重関係には該当しませんが、高次の機関に繋ぐことが相談者のためになると思います。

教員と公認心理師

教員と公認心理師、この境界をしっかり考えておくことが大切です。資格を保有していても、職務は学校教員ですので、職務外のことは適切に繋ぐことです。

もし、教員として心理支援に携わりたいのであれば、学校組織のなかで承認されて権限を持つことです。例えば、教育相談の分掌につき、学校長の承認を得ながら、スクールカウンセラーと連携して、日常的な相談に応じたりすることもできます。

公認心理師資格を持つ教員と似ている立場で、看護師資格を持つ養護教諭がいたりします。僕も詳しいわけではないですが、一定の制限があると思います。近くに居たら聞いてみてはどうでしょうか。

教員としての多重関係

公認心理師の有無にかかわらず、学校教員は生徒や保護者と恋愛関係に至ってはいけないという倫理的なルールがあります。

ルールといっても直接的に法律で裁かれることはありません。しかしながら、教育委員会が通達しているにもかかわらず、この事象を起こした場合は教員の信用失墜行為の禁止に触れ、処分を受けることになります。

昔は、教員が教え子と隠れて付き合って結婚に至るケースがあったようですが、近年では許されなくなっています。もし、生徒や保護者と良い雰囲気になっても、自分は教員だからと断る。これが職責なのかもしれません。

なお、公認心理師がクライエントと恋愛関係になってプライベートで会うのは倫理的違反です。恋愛性転移があったりもして、恋愛感情が本当の感情なのか判断できません。

結果的に両者が不利益を被ることが多いため、これは避けなければいけません。もし、恋愛性転移によってカウンセリングの進行に影響が出る場合は、カウンセリングを断ったり、別のカウンセラーに交代したりして、対応してください。

最後に

教員にしても公認心理師にしても、結局はプロ意識を持っていれば、多重関係を回避することができます。とはいえ、人の感情は強く行動を支配することもあります。どれだけ気をつけていても防げないこともあるのかもしれません。

強い意思を持ちましょう。