場面緘黙症(選択性緘黙)を改善する5つのポイント

2022年9月8日

場面緘黙症とは

場面緘黙症とは「他の状況で話せているにもかかわらず特定の場面において一貫して話すことができない」不安障害の1つである。

場面緘黙症(選択性緘黙)について詳しく解説した記事を以下に貼り付けておくので、こちらも読んでみてほしい。

場面緘黙症の改善

場面緘黙症が改善された事例には、心理支援を受けていなくても年齢が上がるに伴い自然に改善されていったものがある。

一方で、海外の研究報告においては心理療法としての『エクスポージャー法(段階的暴露療法)』や『イニシエーション法』、『刺激フェイディング法』の有効性が示されている。

日本の場合、まだまだ場面緘黙症に対しての理解や学術的蓄積が少ないために、遊戯療法や家族療法によって改善を図ってはいるが、確かな有効性が示されているわけではない。

場面緘黙症が改善した事例には、幼稚園や学校などの理解が得られた上で、教育的支援や合理的配慮が施されたのち、進学や転校といった環境の変化によって改善がみられたものが多く概観できる。

実際に、僕がSNSで知り合った元場面緘黙症の女性は「場面緘黙症という名前も知らなかったが、先生や友達が優しく接してくれたこともあり、頷きや首振りで意思を伝えることで活動することができた。高校卒業後の短期大学への進学をきっかけに苦手ながらも会話することができるまでに改善した。」と話している。

場面緘黙症寛解後の適応と不適応

藤間・外山(2021)は、場面緘黙症の改善された状態を「日常生活において発話が必要とされる場面で一貫して話すことができる状態」と定義した上で、場面緘黙症寛解後の適応と不適応について調査している。

なお、この研究において改善した状態を寛解と表現することと統一している。寛解は当事者にとって場面緘黙症による困り感が減退した状態を指す。

つまり、場面緘黙症による困り感が残っている状態を不適応、困り感がなくなった状態を適応としたのである。

寛解後の不適応

場面緘黙症の多くは社交不安障害を抱えているとの報告があり、場面緘黙症が寛解したあとも不安が強く、行動の制限や回避がみられる場合がある。

また、場面緘黙症によって学校や会社における影響があると回答した者が70〜80%を占めていることから、寛解したあとも不適応状態が続く場合がある。

場面緘黙症によって社会性発達が妨げられるため、大人になったあとも『コミュニケーションが苦手』や『電話や雑談ができない』などの困り感が残る。

寛解後の不適応には、①不安や緊張が強い、②人間関係が苦手、③発話が苦手、④十分に働けない(能力に応じた収入が得られない)がある。(藤間・外山,2021)

寛解後の適応

寛解後の適応には、①強い不安や緊張がない、②人間関係で困らない、③十分に話せる、④十分に働ける、⑤場面緘黙症の経験をポジティブに捉えられるがある。(藤間・外山,2021)

寛解後の不適応と寛解後の適応を比べると、適応のほうにある『場面緘黙症の経験をポジティブに捉えられる』が印象的である。

来談者中心療法というカール・ロジャーズが考案した心理療法では、そのゴールを自己受容であるとしている。

自己受容とは「自分をありのままに受け入れ、肯定的な未来イメージを持つことができる状態」である。

つまり、来談者中心療法の自己受容の考えからすると、自分の場面緘黙症の経験を受け入れられず、悲観的な未来イメージを持ったままでは社会的適応をすることができていないと言える。

逆に、場面緘黙症を克服し、適応に至った人は「場面緘黙症の経験をありのままの自分の過去として受け入れ、ポジティブな未来イメージを持つことができている」と言える。

場面緘黙症の改善方法

場面緘黙症の経験は不安と緊張に支配されているような感覚を持つ。また「からかい」や「いじめ」にあうこと、家族や友人の理解が得られないことなどのネガティブな経験が、さらに過去を受け入れ難いもののとして強化してしまう。

この意味で、周囲の理解が得られることは場面緘黙症の改善に役に立つ。とはいえ、受け身になっていると、なかなか理解を得ることは難しい。

自分から動くとすれば、①場面緘黙症のピアサポートのコミュニティに入る、②情報を収集する、③理解が得られやすい環境に移る、となる。

加えて、エクスポージャー法に従って、④不安と緊張を緩和させる、⑤発話能力を向上させる、がある。

場面緘黙症に対するエクスポージャー法(段階的暴露療法)は、不安階層表と呼ばれる表を作り、自分で挑戦可能なレベルの課題を書き込んでいく。その課題をレベルの低いものから取り組み、カウンセラーと話し合いながら発展していく。

場面緘黙症や社交不安障害に対しての有効性が示されており、継続することで場面になれていきながら、発話のスキルを身に着けることもできる。

まとめ(5つのポイント)

①場面緘黙症のピアサポートのコミュニティに入る、②情報を収集する、③理解が得られやすい環境に移る、④不安と緊張を緩和させる、⑤発話能力を向上させる。

①のピアサポートについては、SNSを運用すると良い。例えば、Twitterには場面緘黙症の経験者や支援者がいる。

僕が支援者として参加しているLINEグループもあって、興味のある人はTwitterで管理人をされている『緘黙パパ』さんにDMをしてみてください。

あるいは、このブログの問い合わせから僕にメールを送ってくだされば紹介できます。

あとがき(引用参考)

藤間・外山(2021)においては、グラウンデッド・セオリー・アプローチという方法で、面接形式で話を聞いたあと、その会話内容をデータとしてまとめ、カテゴリー別に分けている。

本記事ではカテゴリーの中から『寛解後の不適応』と『寛解後の適応』を選び、考察を加えることとした。

藤山・外山 2021 場面緘黙症経験者の適応・不適応過程についての研究 教育心理学研究,69,99-115.

場面緘黙症

Posted by Cozy