社交不安障害に対するカウンセリング

2021年8月28日

今回は、認知行動療法を軸とした『社交不安障害に対するカウンセリング』についてお話します。

社交不安障害とは

社交不安障害とは、不安や恐怖によって社交場面の行動が制限される障害です。少し前までは、社会不安障害と言われていました。

「社会」不安障害では、社会で活動すること全てに支障が出るという意味でしたが、正確には人や集団との社交場面に支障が出ているという意味で、「社交」不安障害が用いられるようになりました。

社交不安障害では、初めて行く場所や初めての行い、慣れない場所や慣れない行いなどに対して、強い不安を生じます。脳が不安を認識し、行動にブレーキをかけるのですが、こうした負担を減らすべく回避するという行動を選択することが多いです。

おそらく多くの人が、不安で「〇〇したくない」といった経験をしています。しかしながら、社交不安障害の方は、通常より不安の感じやすさが広く強いことが分かっています。

社交不安障害に対するカウンセリング

社交不安障害では、段階的暴露療法や系統的脱感作法を軸にカウンセリングを実施します。これらは、認知行動療法というカテゴリに属します。どちらもスモールステップで、不安の軽減と不安場面に対する慣れを目的にしています。

日本の文化では、勇気がある人は格好良いというイメージがあります。こうした背景により、社交不安障害の方は「もっと頑張ればできる」と強いられることも少なくありません。

しかしながら、社交不安障害は、不安感情を司る脳の扁桃体という部分が過剰に反応することが原因とされていて、根性や気合で良くなるものでもないのです。それだけでなく、無理に心的負担を与えられ、精神疾患を併発するなど、悪化するケースもあります。

カウンセリングの手順

社交不安障害といっても、人それぞれ不安感じる場面や強度に違いがあります。また、性格の他の部分においても異なるので、そういった特性を把握した上で、認知行動療法を進めていくことになります。ここからは、カウンセリングの流れについてお話します。

①インテーク面接(初回面接)

インテーク面接とは、初回面接のことです。インテーク面接では、不安を感じる場面や克服したい希望など、カウンセリングに関わる情報を聴きます。また、初めての場所やカウンセラーに慣れていただくという目的も含んでいます。

②社交不安障害への配慮

社交不安障害の方にとっては、初めての場所ということで、扉を開きにくいこともあると思うので、来談いただく時間に外で待つなど配慮をすることもあります。また、話すことが難しい場合は、手紙のようにあらかじめ主訴を書いて渡すとスムーズです。

③2回目以降のカウンセリング

実際にカウンセリングに入っていきます。早く効果を出そうと焦ってしまうと、不安の強いものに挑戦することになります。そうなるとカウンセリングに対する意欲が継続できないので、できるだけ小刻みに目標設定をして、小さな歩幅で確実に前進できるようなイメージで、計画していきます。

最初は、カウンセリング自体になれていませんから、効果が出にくいかもしれませんが、数回ほど回数を重ねていただけると、効果が実感できるようになっていきます。また、回数を重ねることで、カウンセラーも相談者の方のことを知っていくことができるので、カウンセリングの効果を高めることができます。

■段階的暴露療法というのは、あえて話せないような不安場面に晒して慣れていくという方法です。勿論、最初は不安があると思いますので、どこからスタートできそうか、ということも相談して決めていきます。カウンセラーとともに、練習を積み重ねていくというイメージです。

■系統的脱感作法というのは、カウンセラーとともに自分が克服できそうな不安場面を決めていきます。段階的かつ系統的に不安場面を決定し、その場目における不安に実際に向き合い、不安を解消、緩和する方法を学び、実感していきます。

④主治医との連携

強制ではありませんが、もし、病院やクリニックに通院している場合は、その旨をお伝えください。社交不安障害は、社交不安障害を原因として、うつ病、統合失調症、自律神経失調症などを併発することがあります。

■カウンセラーは、主治医がある場合、主治医の治療方針に基づいてカウンセリングを行っていく義務が発生します。診断書がある場合は、それを見せていただき、どのように言われているかをお聴きさせていただきます。必要がある場合は、こちらから主治医に連絡させていただき、支援方針を確認させていただきます。

⑤リファー

リファーとは、カウンセラーの専門性の違いや限界を考慮して、相談者をより良い支援に繋げることです。例えば、場面緘黙症を原因として、自傷があったり自殺念慮が強い場合は、大きな病院の精神科を受診していただくことをおすすめさせていただいています。

■もし、大きな病院で受診されて、カウンセラーとの相性や投薬の条件などを考慮した上で、再びカウンセリングにお越しいただける場合は、主治医の指示のもと、カウンセリングを継続させていただきます。

最後に

社交不安障害は、最も困るのが進学や就職といった環境の変化だと思います。誰かしら支援者いると、心強いのですが、どうしても一人で頑張らないといけない瞬間があります。

できれば、早いうちから上記の行動療法によるカウンセリングを受けたりして、耐性をつけておくことが大切です。大人になっても、社交不安障害があり、会社でストレス過多の状態に陥り、適応障害やうつ病に至るケースもあります。十分にご注意ください。

臨床心理学

Posted by Cozy