社交不安障害とは【特徴と支援】

2021年2月21日

社交不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)とは、不安障害の一つで、集団や社会と関わる上で不安や恐怖によって行動が制限される他、関わり自体を避けようとし、集団・社会生活が妨げられる障害を指しています。

社交不安障害の特徴

社交不安障害の大きな要因の一つとして、先天的に不安を抱きやすい脳の働きが関係していると言われています。また、後天的な要因としては、極度の不安や恐怖を経験したために、トラウマを抱いてしまったり、他者からの評価を気にするあまり、それが不安となり、人前で活動することが難しくなったりします。

PTSD(外傷後ストレス障害:Post Traumatic Stress Disorder)との違いは、主にPTSDは心身が危険に晒されるような災害や暴力、虐待、強姦などにおいて、強い恐怖と衝撃が記憶にあり、フラッシュバック、パニック発作、解離など非常に重い症状が現れることにあります。また、PTSDは、後天的要因に一貫しています。

これに対し、社交不安障害は、集団や社会との関わりの場面に限られています。パニック障害を併発することがあるものの、過去の酷い記憶によるものではなく、恐怖や不安の予期によるものがほとんどです。

社交不安障害は、社会不安障害とも呼ばれていましたが、現在は社会との交わりに対する不安による行動の制限と考えられているため、社交不安障害という呼び方が定着しつつあります。

社交不安障害の方は、人の多い場所、人前に出ること、初めての人や場所、注目されること、などに恐怖や不安を感じるようです。

その場から逃げ出したくなる恐怖に、パニック発作を起こしたり、過呼吸を起こすこともあります。

社交不安障害のない方には、なかなか理解し難い状況だと思います。

パニック発作を経験すると、またパニック発作が起こるのではないかという恐怖や不安が重なり、酷くなると家から出ることすらできなくなることもあります。

社交不安障害の支援

さて、社交不安障害は、不安の予期が問題であるとお話しましたが、『なかなか言葉で表現できないモヤモヤとした恐怖や不安』が身体を覆い、身動きがとれなくなると仰る方が多いようです。

とはいえ、この表現できない恐怖や不安の感じやすさは、特性上のことでなかなか変えることはできません。

家族などの支援としては、その恐怖や不安を理解して、寄り添うことが大切です。

下記に、カウンセリングにおける支援の方法を記載しますが、パニック発作が起こる可能性があるので、安易に恐怖や不安に晒すことは避けたほうがいいでしょう。

カウンセリングの療法としては、カウンセラーや主治医のもと、安全を確保して、行ってほしいと思います。

それでは支援・治療方法ですが、不安障害には、段階的暴露療法やリフレーミングといった認知行動療法が効果的であると言われています。

また、精神安定剤を服用することが多いです。投薬療法においては、医師でないと扱うことができませんので、診察を受けて、適切に服用するようにしてください。

認知行動療法

認知行動療法は、『感情は、認知や行動、考え方などあらゆる状況が関わり合う』ことを念頭に置き、認知と行動にアプローチし、身体症状の改善を図ります。

認知行動療法には、様々な方法があり、それぞれの方法論は相互に関連しながら発展してきました。

研究者によって解釈が異なりますが、おおよそ次の暴露療法やリフレーミングは、認知行動療法に含まれると考えていいでしょう。

段階的暴露療法

段階的暴露療法では、あえて段階的に恐怖や不安を感じる場面に対峙させて、『実は、それほど恐怖や不安を抱くほどのことじゃないのかも』と気づかせると同時に、恐怖や不安へ対処方略を身につけたり、その場面に慣れていくことで、改善を図ります。

例えば、人が多いところがこわくて電車に乗れないという場合、最初はカウンセラーや他の支援者と一緒に人の少ないところに行ってみて、少しずつ人の多いところに行けるようにしていきます。

この時点で、恐怖や不安で身動きが取れなくなったり、パニック発作が出るようでしたら、『人の多さ』が問題になっていることがわかります。

これが分かれば、さらに人数の増やし方を細か設定したり、支援者の数を増やしたりして、続けていきます。

次に、駅の改札まで行ってみます。徐々に、改札を抜け、階段、ホームと電車に乗る順路を辿り、近づいていきます。

ここで、拒否するように反応がみえた場合は、『電車に乗る』ということに恐怖や不安を感じていることわかります。

ただし、『電車の狭い空間がこわい』のか『電車が事故する可能性があることがこわい』のか、詳細に分析する必要があります。

このように、【練習→分析→フィードバック】を繰り返すことで、恐怖や不安の原因を明らかにしていくことも大切です。

リフレーミング

リフレーミングは、一度、認知の枠を取り外した上で、多面的に捉え直し、再構成させる方法です。

例えば、『電車に乗ることがこわい』という主訴に対して、クライエントが『親と一緒なら頑張れそう』と話したとします。

カウンセラーは、『親元を離れていくことに抵抗があるのかもしれませんね。これは、家族をとても大切にしている証拠なのかもしれません。』など主訴を多面的に捉え直せるよう語りかけることで、その受け止め方が変わります。

リフレーミングは、おおよそ家族療法で実践されています。家族の存在が背景に現れるような主訴がある場合は、特に効果的だと考えられます。

また、リフレーミングでは『〇〇があれば電車に乗れる』という例外を大切にします。この例外を一緒に解釈していくことで、自己理解が促進され、認知や行動へのアプローチもしやすくなっていきます。

最後に

社交不安障害は、当事者である本人は酷く疲弊します。

また、パニック障害など他の精神疾患を併発することがありますので、その点においても、医師の診断を受けて、支援に当たってください。

家庭は、本人にとって安心できる場所であってほしいと思います。

無理に外に行かせたりすることは、状態を悪化させることにもなります。必ず医師やカウンセラーとの連携のもと、支援方針を考えてください。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

臨床心理学

Posted by Cozy