Gルートが批判される理由【公認心理師】
Twitterでは、公認心理師をGルートで取得した人たちを批判する投稿が多くみられる。しかしながら、その主たる理由に迫るものが見当たらない。そこで今回は、個人的見解として「Gルートが批判される理由」について考察しようと思う。
科学的根拠と歴史
公認心理師法の施行により心理学における初の国家資格「公認心理師」が生まれた。これまで日本の心理資格は全て民間資格であった。そもそも心理学は歴史が浅い学問であり、心理学の研究機関すら存在しない国も多い。
一方、精神医学が発展しているアメリカにおいては、心理臨床における各療法に熟練した証として資格が認定される。
日本においては、学会や協会といった組織が「○○心理士」や「○○カウンセラー」といった認定資格を運用してきた。その中でも国が指定した養成大学院で特定のカリキュラムを修了した者しか取得できない臨床心理士は、その取得難易度からも世間的にも名の通った資格である。
しかしながら、日本の民間資格は数え切れないほどに生まれ、中には通信教材で2週間〜1ヶ月で取得できる資格もある。こうした資格は、必ずしも心理学研究を背景に置いていない場合がある。要するに科学的根拠がなかったり、一部の根拠を広げてあたかも確かな根拠があるかのように展開しているものもある。
とはいえ、民間資格をもって個人の力量を示し、ビジネスに応用することがある。また、その経営者は実務経験として認定されれば、公認心理師試験の受験資格を得ることができる。
心理臨床の世界では、心理学実験や行動主義が流行し始めた頃から科学的根拠が重要視されてきた。それ以降、量的研究においては質問紙や実験等で数値データを収集し、それを特定の統計分析によって有意差、信頼性と妥当性が担保されているかどうかを根本として、その効果や影響を検討している。
こうした科学的根拠が心理臨床における各種療法を強化し、どんな療法がどんな疾病・状態に効果があるのかを明らかにしている。
この努力を積み上げてきた臨床心理士からすると、科学的根拠のない民間資格所有者が公認心理師を取得できるというシステムは面白くない。
占いやスピリチュアルと言われるものも同様である。これらを批判するつもりはないが、心理学における科学的根拠があるわけではない。それでも公認心理師を取得できてしまう。
領域の広さと心理臨床
Gルート受験に必要な現任者講習は、相談業務をした実務経験が必須である。心理臨床の領域の者が想像する相談業務は、療法をもってカウンセリングを行い、クライエントと向き合うことである。一方で、現任者講習に必要な実務経験は、あらゆる職種における相談業務を想定している。
例えば、教員や保育士が子どもや保護者の相談を受けること。看護師が患者の相談を受けること。就労支援員が就労者の相談を受けること。などである。
これらは心理臨床におけるカウンセリングではないものの、対象者の心のケアとして非常に重要な相談業務と言える。
こうした「相談業務とは何か」の解釈が各々で異なるために、公認心理師資格が成立する前から誇りを持ってカウンセリングをしてきた臨床心理士たちにとって、「誰でもカウンセリングができるわけじゃないぞ」と憤る状況が生まれた。
僕自身、大学院で学校臨床を学んだが、カウンセリングは技法だけでなく理論や科学的根拠を深く学ばなければ行えないものだと思っている。
とはいえ、教員を経験した身としては、子どもや保護者の悩みを聞き、寄り添い解決に向かうということは、紛れもなく相談業務だったと思えるのである。学校教員は、児童生徒の不登校や非行、自傷や虐待、社交不安障害や場面緘黙症などを経験することが多い。これを実務経験と言わず何と言うのか。
臨床心理士と公認心理師
Gルート公認心理師を批判しているのは臨床心理士の方が多いです。でも個人的には、臨床心理士と公認心理師は違うもので、なぜ批判する必要があるのかとも思う。
僕は公認心理師であるが、難しいケースにおいては力量のある臨床心理士に繋ごうと思っている。僕のイメージはこうだ。臨床心理士はカウンセリング(臨床心理)のプロ。公認心理師は広い領域において包括的に心理支援を施すもの。
つまり、本来は協力するべき仲間。公認心理師を持つ教員が臨床心理士のSCと連携する。公認心理師を持つ看護師が院内の臨床心理士と連携する。理想の形のようにも思える。
先人はどっしり構えている
師匠からの教え
公認心理師が生まれて心理職が増えるということは、これまで支援に繋がれなかった人たちに手が届きやすくなるということ。一般的にイメージされる心理学は、どこか怪しいと思われる側面もあるが、真意が周知されやすくなる。良いことばかり。
でも、カウンセリングを生業としている者は、少ない需要を取り合っているため、公認心理師の存在を脅威と感じ、批判する者が必ず現れる。その時に言い返せるようにしっかり勉強しておくといい。
今後、スーパーヴァイズを受けることがあると思うが、力のある人は批判することなく、どっしり構えているから、そういう人を選ぶといい。学派同士での争いもある。でも優れた人はクライエントの状態と各療法の相性を知っており、適切に使い分けたりリファーしたりできる。私も苦手なケースはリファーする。苦手な私が頑張るより得意な人が受け持つ方がクライエントの為になる。