【不登校児の保護者の方へ】不登校になって抱く劣等感がさらに子どもを苦しめる【自己肯定感を高めよう】
子どもが不登校になって、色んな人の支援を受けながら、月日が流れていくと、不登校になった要因が自分の中で整理されていきます。友人関係の問題であったり、担任の先生が嫌で不登校になったという子もいます。あのとき自分はどうするべきだったのか、これからどんな人生を送っていこうか、そういった少し前向きになれる日が来ます。しかしながら、ここまでくるには、凄く時間がかかります。なぜなら、不登校になったときの心の傷を癒やすことに加えて、不登校になってから抱く「劣等感」がそれを長引かせるからです。長期化すると、大人になっても劣等感をいだき続けることになります。
劣等感とは
劣等感とは、自分と他者を比較したり、今の自分と理想の自分を比較したりして、劣っていると認知したときに抱くネガティブな感情のことです。不登校になったあとに抱く劣等感というのは、この2側面の劣等感を同時に抱くことになります。不登校である自分と登校している他者を比べて、勉強や進路の不安が襲ってきます。ここままでいいんだろうか、目標がない、目標ができたとしても手遅れではないのか、そうした不安を強く抱きます。僕が声をかけるのであれば、「自分のペースで目標に向かっていこうよ」と言うと思います。僕は、焦る必要はないと思います。しかし、青年期の子どもたちにとって、留年や浪人という1年2年の違いは、大人の感覚よりも長く、遠く感じてしまうものです。
また、理想の自分を見つけることができたとして、今の不登校である自分を顧みたとき、不安を超えた絶望感のような感情を抱きます。この場合、学習支援は心の支援に直結します。一方で、心に余裕がない状況では、勉強は上手くいきません。この悲しいジレンマを、乗り越えるために、まずは子ども自身が抱いている劣等感を知り、立ち向かっていく覚悟ができなければなりません。これができずに、つまり、過去と現在をしっかり見つめないまま将来に向かってがむしゃらに努力しても、どこかで心が壊れてしまう恐れがあります。
僕が、心理学を勉強した理由は、ここにあります。不登校になって、学校以外のところで、不登校の原因になった人たちを見返そうと頑張っても、その先には虚しさがあるだけです。できれば、誰かに向けてではなく、自身の幸せのために頑張ってほしいと思います。心理的な支援は、時に心の奥深くに入り込み、対決をするかのように、ぶつかることが出てきます。しかし、その対決こそが、自分との戦いを表現しているのです。
保護者の方ができること
不登校の子どもたちは、疲れています。色んなところで、気を使い、人から逃げ、社会に対して不安や恐怖を感じています。ですから、ご家庭では、あたたかく見守ってあげてください。子どもの将来のことが心配だということは承知しています。しかし、ご家庭は子どもにとって、唯一の安息の場所です。フリースクールでも、ゆったり過ごすことができる空間を提供したいと思いますが、ご家庭には敵わないのです。また、ご家庭で厳しくしようと、あれこれ口を出してしまうと、保護者の方もお子さんも、共にストレスを感じることになります。ですから、なるべく互いのストレスを感じないように、ゆったり過ごしてください。しっかり休んでもらって、フリースクールに来てもらったときに、ちょっと頑張ろうと思ってもらうことが大切だと思います。
学校との連携については、陰で動いてください。というのは、保護者の方が、あれこれ動くことは非常に大切なことで、ぜひ動いていただきたいのですが、子どもは敏感で担任や学校に何を言ったんだろうなど、考えるだけでストレスになるのです。大切なことは、話してあげて、無理をするタイミングでない場合は、あまり触れずにいてあげてください。
子どもが自傷をすることがあると思いますが、大慌てしないでください。その自傷は、自分のとの戦いで、苦しんでいる証拠かもしれません。また、親に愛されたいという想いの表れかもしれません。よく『シャワーのように褒めてあげてください』と仰るカウンセラーさんがいます。僕も、これには賛成です。変に褒めなくてもいいと思いますが、この視点を持つことで、今まで厳しく育てようと、あまり褒めてこなかった保護者さんにとっては、子どもの良いところを見つけて、会話をするきっかけになることと思います。
自傷があると確認できた場合は、優しい口調で、時には抱きしめながら、『一緒に病院にいってみよう』と声をかけてあげてください。自傷行為があるということは、心理学の領域では、非常に危険な状態と捉えるのが一般的です。切り方が悪かったり、衝動的に強く切ったりした場合に、身体の傷が残るだけでなく、心にも依存のように傷が残り続けることになりかねません。医師の指示に従って、心の治療をしてください。また、子どもとの関わりに困っていて、一緒に病院にいくことが難しい場合でも、まずは保護者さんのみでも、病院にいき、医師の指示を仰いでください。
自己肯定感を高めるコツ
自己肯定感とは、「自分には〇〇ができる」「〇〇が得意だ」というような自己有用感に似た感情で、これが高くなると、自分自身を肯定的に捉えようとする態度がとれるようになっていきます。しかしながら、自己肯定感はそもそもの性格的なところも作用し、褒め続ければ高まるというものでもありません。大切なのは、成功体験だと言われています。幼い子どもに対して、何かが上手にできたときに褒ると、また褒めてもらいたいと、同じ行動をとろうとしますよね。中学生、高校生くらいになると、あまりそういった反応は見られなくなります。そのかわりに、社会的に認められることに自己実現の可能性を感じて、その経験が将来の目標を形づくることがあります。お世話になっている保健室の先生やカウンセラーに、向いていると褒められたら、子どもは不登校の経験を活かした目標として、養護教諭や心理士を目指すことになるでしょう。
これは、社会的にみても素晴らしい目標です。しかし、先程も述べたように褒められただけでは、自己肯定感は高くなりません。なぜなら、上手く自分のような子どもを支えられるか検討がつかないからです。これがわかるのは、まだまだ先の話です。ここで、僕の提案です。もし、不登校の中学生や高校生がフリースクールに通っていたら、自身よりも小さい子どもたちと関わり合うことで、同じ境遇の子どもを励ましたり、好かれたりする経験をすることができます。ここで、少しばかりの自信が出てきます。また、僕からも心理学や教育学のことは教えることもできます。
何も、養護教諭やカウンセラーに限定することはないのですが、不登校の経験をした子どもは、そういった支援職を目指す方が多いのと感じます。統計的なデータに基づくものではないですが、SNSなどで将来の夢を語る不登校の子どもたちによく遭遇します。人のためになる仕事をしたいという想いは、とても素晴らしいことで、凄く応援したい気持ちになります。目標については、一緒に考えて、子どもの意思を大切にして、支えていこうと思います。
最後に
不登校というのは、一般的なレールから外れてしまうという焦りや不安があることと思いますが、環境はどうあれ、しっかり確実に一歩ずつでも進むことができていれば、間違いなく成長はできます。人より少しだけ時間はかかるかもしれませんが、努力すれば、目標に到達することができます。諦めない心が大切です。
さて、今日はここまでにします。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。