公認心理師法について【公認心理師試験対策】

2021年3月6日

公認心理師法とは

公認心理師法は、これまでの心理資格はすべて民間の資格であったことから、初めて心理資格の国家資格化を図るために規定された法律です。2015年9月に公布、2017年9月に施行されました。

公認心理師法の目的[公認心理師法 第1条]

この法律は、公認心理師の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする。

公認心理師法 第一条

このように記載されています。相談者、クライエントだけでなく、国民全体に対して公認心理師の知識や技術を持って心の健康を保持増進し、心理支援をしていくことが求められています。

公認心理師の定義[公認心理師法 第2条]

この法律において、「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。

1 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、どの結果を分析すること。

2 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

3 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

4 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

公認心理師法 第二条

①では、要支援者に対するアセスメントについて記載されています。②では、要支援者に対するカウンセリングなどの援助について記載されています。③では、要支援者を支援をされている方(保護者や教員、保育士、介護師、看護師など)に対するコンサルテーションについて記載されています。④では、すべての人に対する心理教育(知識の普及と情報提供)が記載されています。

他業種との連携[公認心理師法 第42条]

公認心理師法には、先程のコンサルテーションを行う役割を担うように、他業種との連携が記載とされています。特に、「チーム医療」という言葉が大切とされています。医療というと、医師と看護師が大きな部分を担う印象ですが、その周りには公認心理師や臨床心理士、薬剤師、介護師、などの多くの業種が関わり合っているわけです。

その中でも、公認心理師法第42条第2項には、「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない公認心理師法 第42条)」と記載されています。

これは、公認心理師は、要支援者が通っている精神科や心療内科の医師の指示のもと、心理療法やカウンセリングを行いましょうということです。

公認心理師は、医師ではないため、薬物療法や診断といった医療行為を行ってはいけません。また、要支援者のためにも、主治医の意見と公認心理師としての意見をすり合わせた上で、治療や支援の方向性を考えて、実施していくことが要求されているわけです。

これを怠った場合、最悪は行政処分を受けることがあります。行政処分としては、登録の取り消し、もしくは一定期間の名称の使用停止があります。それほどに、大切な連携であることを表しています。

公認心理師の資格[公認心理師法 第44条]

公認心理師法の第44条では、「公認心理師」は名称独占であることが示されています。

公認心理師でない者は、公認心理師という名称を用いてはならない。

第2項 公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。

公認心理師法 第44条

これに反した場合は、30万円以下の罰金に処されることになります。例えば、ホームページやSNSのプロフィール欄に、公認心理師でもないにもかかわらず「公認心理師」と記載してはいけません。

中には、目指しているという意味で記載している方もいるかもしれませんが、他者が公認心理師と思って、その表現について考え込んでしまったりしては、公認心理師全体の信頼度が低下するおそれもあるのです。

勿論、営業などで公認心理師でないにも関わらず、そう名乗って無理に信頼を得る行為も処罰の対象になります。

秘密保持義務[公認心理師法 第41条]

公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

公認心理師法 第41条

この秘密保持義務に関しては、違反した際の罰則が厳しいものになっています。1年以下の懲役または30万円以下の罰金に加えて、登録の取り消し、もしくは一致機関の名称の使用停止となっています。

この第41条は、個人情報保護法に関連して、定められています。ですので、個人情報の取り扱いについては、厳格に守らなくてはいけません。

一方で、「正当な理由」がある場合に限り、特定の連携業種の間で秘密の共有をすることがあります。この正当な理由とは、自傷他害や自殺計画など直接的に危険が伴い、情報があることによって、それが防ぐことができるという理由に限られます。また、刑事事件での精神鑑定など特定の人員間で情報共有がなされることがあります。

つまり、普通に病院や福祉施設などでカウンセリングを受ける場合、名前や住所、連絡先などの個人情報や相談内容、病名などが外部に漏れることはあってはならないことなのです。

また、インフォームド・コンセントといって、治療や相談の際、知り得た情報を医師や他の関係者と共有する場合は、相談者に対して、情報共有の説明が十分に行われたあと、合意をもらい、そこでやっと情報が共有されます。

勿論、自傷他害や自殺計画があるような緊急の事態では、インフォームド・コンセントが行われないまま、情報共有が行われることがあります。

※元教員として、学校現場のことを話すと、学校教員は公認心理師法に該当するわけではないですが、個人情報保護法に乗っ取り、個人情報や秘密を外部に漏らさないようになっています。

しかし、倫理的ジレンマといって、生徒に「先生には、話すけど、他の先生には話さないでほしい」と自傷行為があることを告白されることがあります。

このとき、最も重要な手続きとしては、まずは生徒本人に「スクールカウンセラーさんに相談してみない?」と合意のもと適切にカウンセラーに繋ぐことです。

それでも、なお話をしてほしくないという場合は、自傷の可能性があるので、「名前は伏せるけどカウンセラーさんに、良くなれる方法を聞いてみてもいいかな?」など、徐々に連携を取れるようにしていくことが大切です。

そして、カウンセラーの指示で情報共有に至ることはあります。焦って、教員が単独で行動してしまったり、軽率に情報を拡散してしまったりすると、生徒の信頼を失うだけでなく、自傷がエスカレートする場合もあるので、慎重に行動する必要があります。

欠格事由[公認心理師法 第3条]

公認心理師法は、2019年に法改正があり、同年12月に施行されています。この変更箇所で、最も大切なのは欠格事由の変更です。

改正前は、「成年被後見人及び被保佐人」は公認心理師になることができないとなっていましたが、改正後は、「心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定める者」に変更されました。

この「文部科学省令・厚生労働省令で定める者」とは、「精神の機能の障害により公認心理師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする」と規定されています。つまり、変更後は以下のようになります。

次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師になることができない。

一.心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定める者

二.禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者

三.この法律の規定その他保健医療、福祉または教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者

四.第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者

公認心理師法 第3条

信用失墜行為の禁止[公認心理師法 第40条]

「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。」とあります。これに反した場合、行政処分として登録の取り消し、もしくは一定期間の名称の使用停止があります。信用失墜行為については、明確な基準はありませんが、参考書にある例には、飲酒運転などが挙げられています。

最後に

第3回公認心理師試験で合格できました。その体験談と実際に使用したおすすめの参考書を紹介した記事です。参考までにご利用ください。(↓)

【第3回公認心理師試験 合格】体験談とおすすめ参考書の紹介