公認心理師がSNSを運用する際のメリットとデメリット

はじめに

SNSは、生活の一部として社会に溶け込んでいる。一方で、公認心理師や臨床心理士といった心理相談を生業とする者たちがSNSを運用することに反対する声もある。今回は、公認心理師がSNSを運用する際のメリットとデメリットを羅列し、SNSの有用性を検討したい。

なお、僕は公認心理師だが、児童福祉領域(一般企業)の心理職であることを踏まえ、SNSを封鎖した過去がある。現在もSNSは封鎖したままで、仕事を続ける限りは復帰しないと決断した。

メリット

  • 自身の考えを他者と共有できる。
  • 不特定多数の意見を聞くことができる。
  • 当事者の声を聞くことができる。
  • ある程度の自己開示を通して、宣伝できる。
  • SNS自体が集客と収益に繋がる。

自分の考えを他者と共有できる。

公認心理師といえども、心理支援の在り方について悩むことがある。こうしたときに、同業者や他の支援機関に勤務している人の意見を聞くことは重要である。僕もSNSをやっていたときは、自分の経験のない領域について、DMなどで教えてもらったりしていた。その学びは、ある意味で生の学びとなり、机上の学びよりも有意義であると感じていた。

不特定多数の意見を聞くことができる。

心理支援に関わる事件が起こったとき、その報道に関して様々な意見が飛び交う。自身が意見交換に参加しなくとも、そのやり取りを見ることができて、これも学びに繋がる。

一方で、主観的で他者を慮らない発言をしてしまったときは、多くの反感をかうことにもなるため、僕自身はこうした議論には参加しなかった。

当事者の声を聞くことができる。

この当事者というのは、相手も匿名であるために個人を特定することはできないが、不登校の子どもや療育で悩んでいる保護者の方との繋がりは、重要な学びとなった。また、支援機関を紹介したりすることもでき、相手にしても利益があったと思われる。

ある程度の自己開示を通して、宣伝できる。

私設のカウンセリングルームを想像してほしい。HPを見ると、カウンセラーの紹介ページがあって、持っている資格や写真、経歴などが記載されている。しかしながら、カウンセリングを受ける側から見ると、誰のカウンセリングを受ければ、最も改善に期待できるか、と考えることになり、判断が求められる。

そこで、SNSで専門領域のことを発信していたりすると、「この人のカウンセリングを受けたい!」と判断しやすいのである。一方で、自己開示が度を過ぎてしまうと、カウンセリングの妨げになることもあるため、開示する内容には注意が必要となる。

SNS自体が集客と収益に繋がる。

昨今ではYouTubeやブログなどによる副業が当たり前になっている。例えば、Twitterのプロフィール画面にYouTubeチャンネルやサイトのURLを記載しておけば、そこから集客と収益に繋げることができる。

また、私設のカウンセリングルームを経営している方からすれば、この集客方法は特別に費用をかけないので、ぜひとも運用したいものである。事実として、資格の有無にかかわらず、カウンセリングルームを経営している方のほとんどがSNSを運用し、ホームページに集客している。

デメリット(注意点)

  • 自他の個人情報漏洩の心配がある。
  • 所属会社(施設)との相互性を考える必要がある。
  • 敵をつくってしまうこともある。

自他の個人情報漏洩の心配がある。

公認心理師には、個人情報の保護義務があるため、クライエントのことは口外できない。これに関しては、かなり厳重に意識していることと思うが、稀に自分のことが軽んじられている場合がある。

例えば、個人開業のカウンセリングルームだと、住所が公になっていて、セキュリティも曖昧であることが多いため、犯罪の被害を受けたときは被害が大きくなる。また、依存性や反社会性が強い人もSNSにはいるわけで、カウンセラーはそうした対象になるリスクがあることも理解しておき、防衛手段を準備しておいたほうがいい。

所属会社(施設)との相互性を考える必要がある。

個人の意見として発信したつもりが受け手によっては、そのカウンセラーが所属している会社や施設の意見として捉えられてしまうこともある。この場合、会社や施設の不利益となることもある。また、いわゆる炎上をしてしまった場合は、火消しに他の職員の迷惑にもなってしまう。

裁判までいくようなことは、余程のことがない限りはありえないだろうが、裁判の勝ち負けにかかわらず、こうしたいざこざは会社や施設の不利益となり、自分の進退にもかかわってくるので、十分に注意するべきだろう。

敵をつくってしまうこともある。

どれだけ発言に注意していても、カウンセラーたる者SNSの運用は反対だ!と持論を持っている者もいて、特に理由もなく敵ができてしまうこともある。

自分が関わりを遮断して、返信をしなかったりブロックをしたりすることもできるが、追い打ちをかけてくる者もいる。誹謗中傷を受けてしまうと、様々な評価が落ちてしまうことだろう。最悪、誹謗中傷に対しては裁判を起こして、個人を特定することもできるが、この経済的負担と時間の浪費は避けたいものである。

最後に

さて、公認心理師がSNSを運用する際のメリットとデメリットを羅列してみたが、いかがだっただろうか。個人的には、このブログもそうだが、匿名で趣味程度にSNSをする意味では何ら問題ないと思っている。

ただし、顔出し、名前や住所、理論から離れる個人的主観が語られる場合は、特段の注意が必要だと思う。また、SNSの運用について、あらゆるリスクを考えた上で発言には注意したい。僕自身はSNSを辞めたが、あのときの学びの豊富さは、捨てがたいものであった。

僕は、幸いにもアンチといわれる者がいなくて、当事者や保護者の方に恵まれていたが、PV数が増えるに伴って、こわさが増してきたことも閉鎖した理由になっている。

なお、このブログは広告を貼って収益化している。収益自体は本当に僅かであるが、将来的に無形資産として、定年退職後の仕事として運用していきたいと考えている。

こうした副収益については、自由であると思っている。しかしながら、誰かを攻撃するなど、公認心理師としての資質を害することはあってはならない。公認心理師には、信用失墜行為の禁止が掲げられていて、罰則もある。

勿論、これによって書くことができないことはあるし、趣味程度でも自己開示が過ぎることは良くないだろう。この意味でも、匿名で楽しむレベルに控えておきたい。

なお、施設のカウンセリングルームであれば、おおよそ施設の管理責任者がその指揮を取っているだろうから、もし公認心理師としての名を上げるべく、SNSを運用したければ、相談してみるとよいだろう。

趣味・日常

Posted by Cozy