分離不安障害(分離不安症)

2021年10月3日

分離不安障害とは

分離不安障害(SAD:Separation anxiety disorder)とは、愛着を持っている人からの分離に関して、年齢相応の発達より不適切で、過剰な恐怖や不安があることにより社会生活に支障がある状態を指します。

愛着を持つ対象は、母親、父親、恋人になることが多く、児童期や青年期では、精神分析でいう退行(赤ちゃん返り)が起こることもあります。

また生後3歳頃までの乳幼児における分離不安は、正常発達の証でもあるため、「分離不安障害」とは見なしません。あくまで年齢相応の分離不安でないことや社会生活に支障があることが診断の基準になります。

分離不安障害は、児童期や青年期の発症が多く、全般性不安障害や社交不安障害との併発が多いとされています。

分離不安障害の特徴

分離不安障害では、以下の特徴がみられます。

この状態が、子どもや青年(18歳未満)では少なくとも4週間、成人(18歳以上)では6ヶ月以上続く場合に、分離不安障害が診断されます。

DSM−Vを参照

  • ①家や愛着がある人物からの分離が予期される場面においての反復的で過剰な苦痛や抵抗を示す。
  • ②病気や怪我など愛着がある人物を失うかもしれない状況を過剰に心配し、行動を制限させようとする。
  • ③迷子や誘拐など愛着がある人物から分離される状況を過剰に心配する。
  • ④学校や仕事などの外出行動を過剰に拒否、抵抗する。
  • ⑤1人でいる状況において過剰な恐怖があり、拒否、抵抗を示す。
  • ⑥家を離れて宿泊することや愛着がある人物が近くにいない状況で就寝することを過剰に拒否、抵抗する。
  • ⑦愛着がある人物との分離に関する悪夢を見る。
  • ⑧愛着がある人物から分離する状況において頭痛や吐気などの身体症状がみられる。

鑑別に注意

青年期に発症が多いものとして、境界性パーソナリティ障害があります。境界性パーソナリティ障害は虐待や機能不全家族での不適切な養育が関係している場合があり、愛着行動に歪みが生じます。

例えば、自分に優しくしてくれた異性との関係を繋ぎ止めるための過剰な努力(別れるなら自殺するという脅し、自分を大切にしない性交渉など)をします。また薬物乱用者や犯罪者に利用される形の交際など、自尊心の低さに関連した行為が特徴です。

分離不安障害は、漠然とした不安や恐怖による特徴がありますが、境界性パーソナリティ障害では愛着の揺れ動きやこき下ろし行動など、一貫しない愛着行動があります。

境界性パーソナリティ障害では、希死念慮が強く、自傷や安易な性交渉などの自己破壊行動がみられます。この場合は、医療による治療が必要です。自己破壊行動がある場合、精神病院への入院をおすすめします。

分離不安障害の治療

主に心理療法や投薬療法によって治療されます。心理療法においては、認知行動療法で不安を緩和させたり、不安による行動制限を減少させていきます。投薬療法においては抗不安薬が用いられますが、児童期や青年期に対しては、心理療法で改善が見込めない場合に処方されるようです。