急性ストレス障害【公認心理師試験対策】

2021年3月20日

急性ストレス障害

急性ストレス障害(ASD;Acute Stress Disorder)とは、自身が心的外傷的出来事(危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける)を直に経験したり目にすることによって生じるストレス因障害です。

心的外傷的出来事は、関連する刺激によって思い出されることもあれば、前触れもなく思い出されることもあります。心的外傷的出来事を思い出すことで、侵入症状、陰性気分、解離症状、回避症状、覚醒症状が生じます。

また、刑の執行、遺体の回収、虐待の対応などに関わる者など、職業的に心的外傷的出来事を経験する場合による発症は急性ストレス障害に認められます。ただし、テレビや動画で見る場合は、目撃したことにはなりません。

■テレビや動画を見て発症するケースがあるとする指摘もありますが、DSM−5では目撃と認められていません。

急性ストレス障害の症状

DSM−5を参考に症状を羅列します。以下の14症状のうち9つ以上が3日〜1ヶ月の間で出現する場合に診断されます。

侵入症状

①心的外傷的出来事の反復的、不随意的、侵入的で苦痛な記憶があります。子どもの場合、心的外傷的出来事の主題または側面が遊びとして表現されることがあります。これをポストトラウマティックプレイといいます。

②夢として記憶が再生され、中途覚醒が起こり寝不足になることもあります。子どもの場合は、内容がはっきりしない悪夢にうなされたり、恐怖のあまり泣き叫んだりもします。

③心的外傷的出来事が、鮮明に連続的にフラッシュバックされることがあります。その防衛反応として意識が完全に喪失される解離が生じることもあります。

④心的外傷的出来事の側面を象徴するか類似する刺激によって心理的苦痛や生理的反応が起こります。

陰性気分

⑤幸福感、満足感、楽しみ、喜びなどの陽性気分を抱かなくなります。愛情など他者から与えられる陽性感情についても抱きにくくなります。

解離症状

⑥自分の感じる現実や周囲の状況が変わる感覚があります。時間の流れが遅くなったり、ぼーっとする感覚があったりします。

⑦心的外傷的出来事の側面を思い出せなくなります。思い出すことの抵抗や防衛と捉えられます。

回避症状

⑧心的外傷的出来事や関連する記憶、感情、思考を意図的に回避しようとします。

⑨心的外傷的出来事や関連する記憶、感情、思考を思い起こすことを意図的に回避しようとします。

覚醒症状

⑩睡眠障害がある。⑪攻撃性が高まる。⑫過度の警戒心がある。⑬集中できない、⑭過剰な驚愕反応がある。

急性ストレス障害の治療

主に薬物療法と心理療法で治療されます。薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、抗精神病薬、抗てんかん薬が使用されることもあります。心理療法では、認知行動療法が用いられます。詳しくは、ここでは言及しません。

公認心理師試験対策

急性ストレス障害は、一般にも知られているものなので、深い理解という意味で、子どもや職業的目撃による例外的なケースが出題されるかもしれません。

また急性ストレス障害は、期間が長引き、連続性を持つことでPTSD(心的外傷後ストレス障害)となります。これもセットで憶えておきましょう。