不登校で親の責任が追求される理由

2020年12月30日

不登校の相談を受けて「親に責任がある」と言われた経験のある保護者さまが多いと聞きます。僕は、学校臨床を勉強してきた身として、「ああ、おそらく……」と思い当たる節があります。でも、心配しないでください。保護者さまを責めるつもりはありません。

僕は、大学院で学校臨床心理学を専攻していました。修了後は、高校教員を経験して、今は小さなフリースクールを開業したところです。

今回は、僕のこの立場から『不登校で親の責任が追求される理由』についてお話しようと思います。

不登校で親の責任が追求される理由

不登校の原因は、しばしば表向きの理由が示されることがあります。しかし、子どもが抱える本当の理由は、より根底に潜んでいることが多いのです。

個人的には、ほとんどの場合は、子どもの特性的な悩みにアプローチすることが多いです。文部科学省の掲げる不登校の原因では「無気力」と挙げられていますが、根底には不安症や過剰適応などの特性的な問題、発達障害まで診断されないけど、凹凸があるなどの問題、親の責任とは考えにくいものがあります。

では、なぜ親の責任が追求されるのでしょうか。

家族療法的カウンセリング

不登校の支援を考える場合、子どもの認知能力や理解力、表現力の未熟さがあるため、カウンセリングが本質に届きにくいことがあります。その場合に、家族療法というアプローチが用いられることがあります。

家族療法には、学派が複数ありますが、システム論という理論が多く用いられています。このシステム論では、家族を一つのシステムと捉えます。この家族システムの活動不全を修正することで、子どもの不適応を改善しようという試みです。

このように家族療法では、不登校の子どもだけでなく、家族システムの再構成が大切になります。この意味で、子どもが不登校になった場合に保護者の責任が追求されているように感じるのではないでしょうか。

機能不全家族

不登校の原因を子どもとの対話の中で探っていくと、家族の機能が問題だと思われることがあります。例えば、両親の不仲や離婚、別居、経済的困窮、育児放棄、虐待などです。

こういった家族の問題で機能しなくなった家族を機能不全家族といいます。子どもは家庭の影響を強く受けます。

もし、この記事を読んで、自分は当てはまらないと思った保護者さまも、まだ気をつけてほしいことがあります。

知られづらい問題

例えば、小さい頃から子どもの甘えに応じないなどの無干渉、進路や意思決定に口を出しすぎる過干渉、親離れを阻害する過保護なども、不登校の原因になることがあります。

子どもの口から語られることは少ないです。それは、子どもが保護者さま以外の親を知らないからです。こういうものなんだ、と思っています。しかし、話を聞いていくと、親の関わりが子どもの心の発達、自主性や主体性を妨げていることがあるのです。

時に、カウンセラーや教師に対して威圧的に関わる保護者さまもいらっしゃいます。ご自分の養育に自信があるため、家族療法を紹介した際に、それを強引に拒否したりすることです。

これは、保護者としてのアイデンティティの確立にも関わることで、自身の経験を否定したくないという心象が表れています。腕のあるカウンセラーは、これを否定したりはしません。

しかしながら、保護者としても、養育の経験は自分の子どもだけということになるので、自分の養育に自信があるといっても、それが上手く子どもにマッチしていたかどうかは、確かではないのです。

カウンセラーの想い

もし、保護者さまが、今回の記事のように家族システムへの指摘を受けた場合、まずは先入観を持たずに最後まで聞き入れてみてください。

ここで、詳しい説明があり、選択肢を持たせてくれるようなカウンセラーは、腕のあるカウンセラーだと思います。一方、先入観を持たずに話を聞いても、否定されているように感じたのであれば、カウンセラーに腕がない、もしくは保護者さまが触れられたくない部分に指摘がなされた、のどちらかだと思います。

カウンセラーは、基本的には相談者の味方です。時には、治療のために心の対決を臨むこともありますが、そのタイミングは慎重になりますし、信頼関係が重要であることもわかっています。

カウンセラーの力量

個人的には、家族療法は難しい療法だと思っています。理解力のある高校生や大人との対面のカウンセリングとは違い、子ども自身も自分の様相に詳しくなく、保護者との連携を考えなくてはいけません。

不登校専門のカウンセラーと謳う方でも、心理学の基礎をわかっていない方も多いようで、心理士の研究団体は、しばしばこれを問題視しているようです。

心理学は、クライエントの心の健康に大きく影響を与える学問ですので、いわゆる素人による介入を危険と判断する方も少なくありません。もし、カウンセラーの腕に不信感を抱いた場合、そのカウンセラーの経歴を見て、判断されると、いいかと思います。

今、心理学の力のある資格は、臨床心理士と公認心理師です。臨床心理士は、民間資格であるものの、これまでの研究実績や社会的実績と信頼は厚いです。臨床心理士会という大きい団体があり、心理学系の大学院を修了しないと資格試験すら受けられない、取得難易度の高い資格です。また、資格の更新や研修もあります。

公認心理師は、近年できた心理学の初めての国家資格です。臨床心理士の中でも、公認心理師について否定的な見解を持っている方もいます。公認心理師は、臨床心理士ほどの難しさはなく、大学院で心理学を学んでいなくても取得できますし、資格の更新研修も今のところありません。

最後に

保護者の責任が追求される理由は、家族療法の考え方によるものであることがあります。指摘されたからといって、すぐにカウンセラーを敵視することは、ご家庭にとっても支援に繋がりにくい壁となってしまうので、家族療法が合わないと思った場合は、その旨を正直に伝えてみてください。カウンセラーは、選択肢を提示してくれることと思います。

カウンセラーの力量についての僕の立場ですが、僕は大学院で心理学を学んだとはいえ、資格は取得していませんので、偉そうなことは言えません。とはいえ、僕は、元教員でもあるので、心理学を学んだ元教員として、不登校の支援に当たっています。学校や保護者と連携の大切さは、よくわかっているつもりではいます。

まだ、記事が書き慣れていなくて、わかりにくい記事だったかと思いますあ、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今後も不登校や心の支援について発信していきますので、今後も読んでいただけると幸いです。

不登校,臨床心理学

Posted by Cozy