ピアジェ(Piaget,J.)の発達理論【公認心理師試験対策】
Piaget,J.の発達理論
ピアジェの発達理論は、認知に注目したもので、認知発達理論とも言われています。ピアジェは、認知は成長の過程で段階的に身につくものであり、この出現順序は入れ替わることはないとしています。
各発達段階には、それぞれ特徴があり、それらの特徴が統合されることで、次の発達段階に進むことができます。ピアジェの認知発達理論における発達段階は、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期の4段階で構成されています。
①感覚運動期(0〜2歳)
感覚運動期は、言語発達が未熟で、感覚と運動において物事を認知しようとします。乳児が物や身体を何度も触って認識しようとします。これを循環反応といいます。循環反応には、第1次〜第3次循環反応があります。感覚運動期では、循環反応、対象の永続性、模倣遅延の3つを憶えてください。
循環反応
第1次循環反応は、行為自体への興味を示します。例えば、舐める、吸う、たたく、投げるなどです。乳児が楽しそうに悪気なく物を投げたりしますよね。それは行為自体への認識が発達する上で、自然な反応なのです。
第2次循環反応では、行為自体への興味だけでなく、行為の結果に対しても興味を示します。物を掴んだり、物と物をぶつけたりして、その組み合わせのよる結果を認識します。
第3次循環反応では、行為の違いによる結果の変化や反応の一致について興味を示します。例えば、乳児が積み木を積んだと思ったら、壊してを繰り返したりしますよね。これは、叩くと壊れるという事実や一定の壊れる音がすることを認識しているわけです。
対象の永続性
対象の永続性とは、物や人が目の前から見えなくなっても、その存在自体は無くならずに、永続的に存在するということです。1歳に満たない時は、母親が見えなくなると大泣きしますが、対象の永続性が理解されると、その反応もなくなっていきます。
模倣遅延
模倣というのは、親の行動などを瞬時に真似することです。模倣遅延は、親の行動などを見て、しばらく経ってから真似することです。記憶に留めて、思い出して、状況などに関連付けて、真似を表出できるということです。親の口癖や言葉を真似することが多いです。
②前操作期(2〜7歳)
前操作期は、直感的かつ表象的な思考が可能になります。いわゆるイメージです。外部刺激と現象の結びつきの認識、認識の対象の拡大が特徴です。前操作期では、象徴機能、アニミズム、自己中心性の3つを憶えてください。
象徴機能
目の前にないものを想像し、別のものに置き換えることができます。泥で作った団子などがそうです。象徴機能は4段階で発達します。①信号(視覚情報の反射)、②指標(視覚情報による出来事の予期)、③象徴(イメージによる代替物の表現)、④記号(想像による表現)です。
アニミズム
アニミズムは、生物でない物にも生命があると考えることです。物に対して、かわいそう、楽しそう、などの感情があるように表現したりします。特に人形やフィギュアのようなものに、起こりやすくなります。
自己中心性
自己の視点のみで物事を考えることです。この時期では、まだ他者視点で物事が考えることができません。他者の視点で物事を考えることを心の理論と言います。発達障害で知的な遅れがある場合、年齢相応の心の理論が発達していないことが多く、アセスメントに利用されることもあります。
③具体的操作期(7〜11歳)
具体的操作期では、直接的で具体的な対象において論理的思考が可能になります。具体的操作期では、思考の可逆性、保存の普遍性、脱中心化の3つを憶えてください。
思考の可逆性
思考の可逆性とは、物の形やカサが変化しても、元に戻すことができるということです。これを理解できるようになります。
保存の普遍性
保存の普遍性とは、物の形やカサが変化しても、数量は変化しないということです。これを理解できるようになります。
脱中心化
前操作期の自己中心性から脱し、他者視点で物事を考えることができるようになります。
④形式的操作期(11歳以降)
形式的操作期では、抽象的な対象においても、論理的思考が可能になります。また、仮設演繹的な思考や組み合わせの思考、比例の概念を理解できるようになります。
ピアジェの理論背景
ここからは、公認心理師試験レベルでは知られていない、ピアジェが自身の発達理論に対してどのように考えていたかを掘り下げていきます。(参考引用:中垣,2011)
ピアジェは、発達段階の基準を設けています。まず、発達段階を区分する上で、観察者側からみた便宜的な区分(幼稚園期、小学生期、中学生期など)と発達する主体側からみた自然的な区分(自然な発達に合わせた見方)があります。
ピアジェは、研究者や観察者側からみた便宜的な区分の仕方では、発達の本当の理解をすることはできないと考えています。この考えを軸として、より自然に発達を捉えられるように、5つの基準を設けています。
①順序性:「発達段階は出現順序が一定である。」
要するに発達段階が前後したり、1つとばしになったりすることはあり得ないということです。
②統合性:「発達段階を特徴づける行動様式や思考が獲得されるには、それ以前の発達段階による行動様式や思考が必要である。」
行動様式や思考が一気に特徴づくのではなく、経験や体験などを通して、積み重なって得ていき、発達していくということです。
③全体構造:「発達の構造は、それぞれが点在するのではなく、それぞれが関わり合っている。」
発達段階を説明するときに、人によって異なるというものでは、理論としては成立しません。あくまで発達の構造は全体構造として捉えられるべきで、まとまった説明ができるということです。
④構造化:「発達段階は個々に区別できなければならない。」
発達段階を理論とする上で、各段階の特徴が似ていては区分が分かりづらいです。理論としては区分が明確でなければなりません。
⑤均衡化:「発達段階を全体的にみたとき、どの段階も対等な発達で、段階的特徴が強く現れるべきではない。」
ある段階に到達したから良いとか悪いとかではなくて、誰もが達成しうる発達の一定した流れがあるということです。
ピアジェの発達理論の意義
ピアジェの発達理論が、ここまで有名になったのは、上記の考えに基づく理論背景があったからだと言えます。この理論背景は、後続の発達理論研究に大きな影響を与えました。
また、発達の連続性に注目し、人種や文化などの違いにかかわらず、ほとんどの人間に共通した人間の発達を段階的に示したことも、注目を浴びた要因となっています。
最後に
第3回公認心理師試験で合格できました。その体験談と実際に使ったおすすめの参考書を紹介した記事を書きましたので、ぜひご一読ください。
参考引用文献
- 中垣 啓(2011)ピアジェの発達段階論の意義と射程 発達心理学研究, 22 (4), 369−380.