『リング』の元ネタは千里眼事件【心理学の負の歴史】

ホラー映画の名作『リング』は知っていますか?実は『リング』の元ネタは【千里眼事件】と言われ、実際にあった出来事なのです。

リング(あらすじ)

テレビディレクターの浅川玲子(演:松嶋菜々子)が同じ日の同じ時刻に亡くなった男女4人が、とあるビデオを観ていたことを知る。

玲子は男女4人がビデオを観たとされる伊豆の貸別荘に取材をしに行き、カウンターにあったタイトルに記名のないビデオを見つける。貸別荘で再生してみると、不思議な映像が流れ、電話が鳴る。

噂では、この電話のあと一週間で死ぬとされており、玲子は元夫の高山竜司とともに、呪いのビデオの真相に迫る。

山村貞子は千里眼と念写の超能力を持つ山村志津子の娘で、志津子よりも強い超能力を持っていた。志津子の超能力を面白がったメディアが、大勢のメディアの前で念写を公開させるが、公開中に志津子の超能力を批判した男性が不思議な力で死んでしまう。

これは貞子の力によるもので、これを恐れた貞子の父親である伊熊平八郎は、貞子を井戸に落として殺してしまう。伊熊平八郎は、超能力研究者で公開実験にも参加していた。妻子ある身でありながらを志津子と不倫した末に生まれたのが貞子である。

千里眼事件

千里眼事件は、明治42年(1909年)に始まった。千里眼や念写の超能力を持っていたとされる御船千鶴子長尾郁子、心理学者の福来友吉今村新吉を中心に起こった事件である。

御船千鶴子は、義兄の清原猛雄とともに催眠術や千里眼を用いたスピリチュアルの治療を行っていた。

長尾郁子は、災害の発生を予言できたとされる。御船千鶴子が先に注目されており、同様の実験を公開している。

福来友吉は東京帝国大学の心理学者、今村新平は京都帝国大学の心理学者である。

福来と今村は、御船千鶴子の千里眼と念写に注目して、メディアを集めた公開実験を行った。この実験によって千里眼や念写という超能力の存在を示唆した。

これにより、千里眼や念写はブームとなり、各地で模倣者が現れることとなった。このとき福来と今村は、長尾郁子に目をつけた。数年前からの評判もあったことから、千鶴子と同様の公開実験を行い、さらに千里眼と念写の力を世間に広めようとした。

一方で、メディアは一時的に面白がったものの、次第に『千里眼は科学的根拠なし』などと揶揄し始めた。公開実験では、超能力による不思議な現象とされながらも、科学的な根拠が示されることはなかったためである。

その後、多くの批判に耐えきれなくなった千鶴子は自死してしまう。これにより、批判の目は公開実験をした福来と今村に向き、両者は大学を追放される結果となった。これが『千里眼事件』である。

高橋貞子

高橋貞子は『リング』に登場する山村貞子のモデルになった人物である。長尾郁子の公開実験が実施された頃、福来は貞子にも目をつけていた。

貞子は透視の能力があるとして、実験が行われた。字を書いた紙や物を箱に入れて透視するという実験を20回以上も実施し、ほとんど成功させた。

高橋貞子に関しては文献が少なく、のちの消息については明らかになっていない。

心理学の負の遺産

日本の心理学の歴史を学ぶ上で、一度は耳にする千里眼事件である。同時期、海外ではあらゆる理論が提唱され、心理学の礎が築かれていた。一方で、日本では占いや心霊能力といった信仰が強いこともあり、何歩も遅れていた。

『千里眼事件』は、その矢先の出来事であったため、福来と今村は日本の心理学の歴史に名を残すが、結果的に汚名として残ることとなってしまった。福来と今村の動きは、他の心理学者からも止められていたが、二人の暴走的な動きにより、最終的には人が亡くなってしまった。心理学の実験としては、倫理的にあってはならないことである。

最後に

話が逸れるが『リング』には続編がある。『らせん』と『リング2』である。『リング』の話から直接的に繋がっているのが、この2作品である。その後、『リング0 バースデイ』『貞子3D』『貞子3D2』『貞子』も放映されている。

映画『らせん』は『リング』の続編で、劇場では2作が同時上映された。『らせん』では主人公で監察医の安藤満男のもとに、安藤の大学時代の同級生であった高山竜司の遺体が運ばれてくるところから始まる。『らせん』では貞子の呪いがウイルスとして扱われており、貞子の存在が増殖していくというミステリアスな展開がある。

『リング2』は『リング』の浅川玲子が呪いにかかってしまった息子を救い出すための物語である。『らせん』とはパラレルワールドのように物語が進行している。

僕はホラーが好きで、数々の映画を観てきたが、リングシリーズにおいては『リング』→『リング2』→『リング0 バースデイ』と観ることを薦める。

『らせん』や『貞子3D』はホラーというよりは、貞子という怪物が人を襲うというような内容であるため、日本のしっとり怖いホラーとして観たい人は違和感を抱くだろう。

◆小説版『リングシリーズ(↓)』