事故物件アパート【ホラー/怪談】
僕は、社会人3年目のとき、2年間の地方出張を命じられました。2年だけだからと安い賃貸アパートを探すため小さな不動産店を訪れました。
担当してくれたAさんは年の近い男性でした。同じ和歌山県の出身で意気投合、楽しい部屋探しとなりました。
内覧をするため訪れた一軒目の物件は、駅に近いものの建物が古すぎました。和式トイレは流石に嫌と思い次の物件へ。2軒目は築年数20年のアパートでしたが、外観は古く見えず駅やスーパーも近い物件でした。
「実はまだ改装中なんです。」というAに続いて中に入ってみると、壁紙が剥がされており照明も付け替えている様子でした。前の住人が置いていったのかコンロがありました。
どうやら掃除ができない人だったらしい。キッチン周りは油だらけで、部屋も埃っぽいかんじがした。ただAは「要らないものは廃棄して、クリーニング業者を入れるので綺麗になりますよ。」と話しました。
風呂場やトイレは、既に改装が終わっていたのか綺麗な状態でした。Aは「タイミングが良くて、エアコンやインターホン、照明のリモコンなどは新品に変えますので、安心してください。」と話しました。
僕は、Aの言葉に改装すれば我慢ポイントは無くなるし、入居も1ヶ月で待つことができる、2LDKで何より賃料の安さ、「ここにします。」と他の人に取られる前に入居を決めました。
それから1ヶ月が経ち入居の日となりました。立ち会いは管理会社の人でした。ゴミ捨て場のルールなどを聞いたあと、鍵を貰いました。中に入ってみると、綺麗に改装してあって、予想よりおしゃれ感があって楽しい生活が送れそうとワクワクしました。
入居1日目は、移動の疲れもあり、テーブルやベッドを組み立て、休憩を繰り返す形で充実できました。気づけば15時、近くのスーパーに行き惣菜などを買い昼食をとりました。
テレビを設置して、夜は床に置いたテレビでバラエティ番組を見ながらくつろいでいました。シャワーを浴びようとお風呂場に向かうと、一瞬リビングの方でカチャという音がしました。
ドアを中途半端に締めていて、それが空気圧で空いたのだろうと気にも止めませんでした。ところがこの現象が何日経っても続きました。
僕自身の癖で、無意識にちゃんとドアを閉められていないのか、築20年なので部屋の建て付けが悪くなったのか、色々なことを考えました。
それから数ヶ月が経ちました。
ある日、YouTubeで事故物件という言葉を目にしました。『大島てる』というサイトで物件が事故物件かどうか調べることができるというものです。
「まさかな」と思い、サイトで住所を検索してみました。すると、アパートがある位置に炎のマークがついていました。詳細を見ると「一室で女性が首つり自殺」と書いてありました。背筋が凍りました。
ただ、書いてある時期は2年前で、前住人ではないと推測できます。ホッとした矢先、人の気配を感じました。風呂場で明らかに何かが動く影が見えました。逃げるように、その夜は近くのビジネスホテルに泊まりました。
翌日、管理会社に電話しました。経緯を話しましたが、取り合ってもらえず、管理会社に直接話をしに行きました。そこで「稲垣」と書いてあるネームプレートを見て思い出しました。
前に一度、稲垣という人宛に郵便局から不在票が入っていたことがありました。僕は配達員が部屋を間違えたのかと思い、近くの郵便局に持っていったのです。
ところが、この稲垣という人は前住人の名前だと気が付きました。事故物件は、事故物件であることを次の入居者に告知する義務があるそうです。ただ、間に一人の入居者がいれば、その後の入居者には告知しなくてもよくなる。
つまり、管理会社の人物が借りていることにして、契約していたのでしょう。稲垣という人に名刺をもらい、見覚えがあると話すと、観念したのか「実は…」と話を始めました。
このアパートは、すべての部屋がもともと安くて2LDK、若い世帯向けの物件だそうです。この女性も婚約者と同棲していたものの、男性の浮気が発覚し、口論の末に男性は出ていったそうです。
それから数ヶ月、女性は心を病み、病院に通っていましたが安定せず、たまに食事をとる以外は寝たきりの生活だったそうです。
そして、風呂場で自殺したそうです。彼女の遺体は死後1ヶ月後に母親が連絡がつかないと、警察に電話、発見されたそうです。稲垣が直ぐに契約し、噂になる前に建物の壁の色を塗り替え、風呂場を改装したそうです。
今でも彼女はあの部屋で生活しているのかもしれません。
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